このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
ソンラ水力プロジェクトはベトナムで建設中の最大のプロジェクトである。このプロジェクトはハノイから250km北西にあり、中国雲南省を源とする紅河の最大支流であるダ川に建設されたホアビン水力発電所の上流190kmに位置する。
紅河の支流にはタオとダ、ロ河がある。この三支流の流量は熱帯モンスーン地域の特徴を備え、特に盛夏においてはこれら支流の流量が同時に増加し、人口270万人をようするベトナムの首都であるハノイが位置する下流のバクポ氾濫平野に甚大な洪水をもたらすことがある。雨季における紅河の洪水防御もこのプロジェクトの重要な目的の一つとなっている。本ソンラダムとホアビンダムの合計貯水容量は70億立方メートルとなっている。
ソンラプロジェクトが運開したあかつきには、ダ河の流量を制御して安定化させることができる。この流量調整によって乾季における下流平原への給水が改善される。この流量調整もこのプロジェクトの一つの重要な目的である。ソンラダムの満水位のEL. 215mでの有効貯水量の59.7億トンの水は乾季における紅河デルタへの給水に貢献することになる。
本プロジェクトの諸元は以下のとおりである。
No. | 大項目 | 項 目 | 寸 法 |
1 | 水理 | 集水域 | 43,760 km2 |
平均流量 | 1,532 m3/s | ||
最大洪水量 (P=0.1%) | 28,600 m3/s | ||
2 | 貯水池 | 設計洪水位 | EL. 228.07 m (PMF) |
サーチャージ水位 | EL. 217.83 m (modified P=0.01%) | ||
常時満水位 | EL. 215.0 m | ||
洪水待機水位 | EL. 194.08 m | ||
最低水位 | EL. 175.0 m | ||
満水時貯水量 | 9260x106m3 | ||
有効貯水量 | 6504x106m3 | ||
治水用貯水量 | 4000x106m3 | ||
3 | ダム | 形式 | 重力コンクリート (RCC + CVC) |
越流頂標高 | EL. 228.1 m | ||
最大高さ | 138.1 m | ||
ダム頂長さ | 962 m (含む右岸盛立部分) | ||
4 | 放流工 | 許容最大放流量 | 38,240 m3/s |
底部放流設備 | 12 nos. x (6.0mW x 9.6 mH) orifice, Sill level EL. 145.0m 油圧駆動式4方水密ラジアルゲート | ||
上部放流設備 | 6 nos. x (15.0mW x 11.46mH) orifice, Ogee crest level EL. 197.8m 油圧駆動式3方水密ラジアルゲート | ||
放流部ダム高さ | 93.1 m | ||
ジョイント間隔 | 38.5 m | ||
放流路 | フリップバケットつき対称拡大型開水路 | ||
5 | 取水口 | 形式 | 移動型スクリーン付きベルマウス型 |
中心EL. | EL. 156.0m | ||
数量 | 6 基(各水車に一基) | ||
呑み口間隔 | 31.5 m | ||
ジョイント間隔 | 31.5 m | ||
1基当りスクリーン数 | 2 sets x (11.5mW x 31.5mH) | ||
水圧鉄管 | 6条 内径10.5 m | ||
6 | 発電所 | 発電容量 | 6 x 400 MW = 2,400 MW |
設計使用水量 | 6 x 573 m3/s = 3,438 m3/s | ||
実水頭 | 78.0 m | ||
主機間隔 | 31.5 m | ||
ジョイント間隔 | 31.5 m | ||
ドラフトチューブ最低位置 | EL. 81.0 m | ||
水車ケーシング中心 | EL. 105.0 m | ||
発電所地盤 | EL. 138.0 m | ||
水車形式 | 縦軸フランシス | ||
回転数 | 90.0 rpm | ||
放水庭最高水位 | EL. 136.95 m (PMF) | ||
放水庭形式 | 開水路式、底部は(1:3)のスロープ | ||
7 | 転流工 | 仕様 | 幅90 m 開水路式、底部EL. 110m |
このプロジェクトの位置は北緯21度30分、東経104度00分である。Google Earthには何も写っていないので探す必要はないが、そのうち画像が更新されたら見られるようになるかもれない。
ダムと発電所の流水方向の断面図は こちら から、平面図は ここ からダウンロードしてください。
左岸側からみた2008年4月29日の全体の写真は次のとおり。向かって右側が上流で、手前に取水口と発電所、対岸に洪水吐きがある。右下の平らに見える部分はダムの取水口部分であり、RCC(Roller Compacted Concrete)で建設が行われている。コンクリート輸送用のベルトコンベアRCC施工中の部分に見られる。このページのオーナーは鋼構造物が専門でコンクリート技術者ではないためRCCに関しては尋ねないでいただきたい。
左岸側からの全景(April 29, 2008)
下流側からの全景 (May 11, 2008)
このプロジェクトの計画と設計はロシアのハイドロプロジェクト社とベトナム電力庁のエンジニアリング部門であるPCC1が行ったもので、我々が今まで実施してきたプロジェクトとは設計の概念が異なるため、とまどうことが多い。
ホアビンダムはロシア(当時ソビエト)の援助で建設されたもので、発電と治水、利水を兼ねた多目的ダムである。しかしながら、雨季における洪水を制御するためにはホアビンダムだけでは能力が不十分であり、本来の目的を充分果たしているとはいえない。したがって、ホアビンダムの負担を軽減するためにその上流にソンラダムを建設することになった。
この巨大ダム建設によって移転する住民は10万人に達するといわれている。
開発途上国のエネルギー確保のためにはどうしても水力開発が必要であり、わが国も同様なステップをたどって発展してきたものであり、一概にダムによる環境破壊だけをあげつらうのはどうかと思うのである。
巨大ダムを作らなければならなくなったのはそもそも人口増加が原因である。ダムを作るのを止めるためには人口を減らし電力需要を減らさなくてはならない。このどちらも実行不可能であるからこそ、ダムが必要になってくるのである。とある掲示板に投稿した強硬なダム反対論者に対する皮肉な反論に「だったらお前が率先して人口減少に貢献しろ」というものがあった。
このページのオーナーである。 素顔は明かさないのである。
エンジニアリングのトップへ戻る | 進む |
2008-05-04 作成
2008-05-09 平面図追加
2008-05-11 下流側からの写真追加
スカム防止のために画像ファイルになっています。お手数ですがメールの宛先は手でご記入ください。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |