このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

泣くな、幻想の陣ヶ下渓谷

渓谷への入り口。
フェンスの右側に小川が流れていました。
小径はふかふかのジュータンのような
温かい感触でした。
この狭い隙間から
小川に沿った渓谷への道に入りました。
左手は小高い丘になっていて
斜面には美しい木々の緑が競演しています。
足元は踏み板が3枚だけ。バランスが必要。
板と板との隙間から水の音が聞こえてきます。
一歩進むたびにゆらゆらと揺れて
まるでつり橋を渡っているようなステップになります。
右手の小川は、養生されていました。
でも上流のほうからは
すがすがしい水音が聞こえてきました。
自然の息吹がすぐそこに感じられました
もう少し上がって行くと、小川は石がきで
整備されていました。水の流れはサラサラと
少しだけ急になりながら、すずしい風を運んできました。
左手の斜面には高い樹が林立しはじめました。
小川はいつのまにか手の届くところにありました。
凛として冷たい水が、
深い木々に覆われた陰の世界から流れ落ちて、
僕たちの心にそそいできました。
手の届かない流れはますます美しく感じられました。
ただそこに行けたとしても、
手が届いたとしても、
きっと何一つする事が見つからずに
途方に暮れると想像できました。
しばらく小川を下の方に眺めつつ
歩きやすい土の道が続いています。
突然、古めかしい橋が現れました。
手すりは錆色に時代を塗りこんでいます。
ここを渡ると戻り道なら、渡らずに先に行こう。
遠回りなら、わたってもいいかな。
そういうもどかしい気持ちになる橋でした。
少し息が切れる階段が長く続いていました。
右手の渓谷には、小川があちらこちらに
寄り道をしながら蛇行し、しかし向う先は
おなじであるはずでした。
階段を上りつめると頂上にはモニュメントがありました。
ここで僕たちは
どうしてもやらなければならない事がありました。
それは、後ろを振り返るという事でした。

















振り返ると現実があって、
幻想の世界を一息で飲み込みました
心に雪が降ってきました。
僕たちが歩いてきた道は、
橋げたの下で泣くのを我慢して
震えているようでした。
ぼくたちの左手にはいつも現実がありました。
僕たちは、はじめから
目をそむけてはいけなかったのでしょうか。
そこにある現実は後戻りができないけれど
次に泣くのを我慢させるような事をしないように。
陣ヶ下渓谷の妖精たちに誓ったのでした。


陣ヶ下渓谷は、横浜では唯一の渓谷と言われます。
そこに通る環状2号線の橋梁は、自然との共存をテーマとして、
とても注意深く建設されたようです。
ですから、橋脚の間から光が差し、
ほとんどの木々が枯れることなく生きています。
地形の変形は最小限にとどめられています。

心に強く印象を与える
幻想的な異次元空間は
上星川駅から西谷方面に行き
環状2号線の橋げたの下を市沢町方面に沿ってゆきます。
駅から徒歩15分程度です。


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