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富士山麓サイクリング 2007年4月29日
昨年までの「みどりの日」が「昭和の日」に改まった2007年4月29日、朝から素晴らしい青空の下、富士山麓を走るべく、愛車と一緒に電車で出かけました。
輪行で富士山麓へ
5時半に出発して、分解・袋詰めした愛車とともに京王線に乗車。車窓に真っ白な富士山が見える。今日は快晴で、絶好の行楽日和との予報である。
というわけで、僕の気分は爽やかなのだけれど、車内は予想以上に混んでいて、徹夜疲れの顔、顔、顔…。なんとなく酒臭い。つり革につかまったまま眠っている人もいて、自転車という大荷物を持ち込んでいる者としては気を遣う。しかし、調布を過ぎるあたりからだんだん空いてきて、車内の人も空気も徐々に入れ替わった。
高尾で中央本線に乗り換えると、今度は山へ行く人たちで、行楽気分がいっぱい。車窓の山々はピカピカの新緑で、その中に藤や桐の薄紫色の花が咲き、駅に着くごとに小鳥のさえずりが耳に届く。
大月からは富士急行線。乗り継ぎ時間がわずか3分しかなく、自転車をかついでいる僕も大変だったが、ほとんどの乗客が切符を買わずに乗ったため、車掌さんは満員の車内で検札と精算をしながら、無人駅に着くたびにホームに走り出て発車合図をするなど、すっかり汗だくで息がハアハアいっていた。
途中、三ツ峠駅と寿駅の間でサルの群れを見て、8時半過ぎに富士吉田駅で下車。ホームに降りると、正面にドーンと富士山。みんな一斉に写真を撮る。僕も1枚、パチリ(右写真)。
忍野村へ
さて、駅前で自転車を組み立て、8時40分頃、走り出す。
富士山を御神体とする浅間神社の鳥居をくぐって坂道を上り、突き当りを左折。まずは国道138号線を忍野八海へと向かう。
歩道を山中湖方面から河口湖方面へとゼッケンをつけたランナーがたくさん走っている。「チャレンジ富士五湖」というマラソン大会が開かれているらしい。
富士浅間神社前を過ぎ、富士山頂で気象観測に使用されたレーダードームを廃止後に保存展示している道の駅を過ぎ、だらだらと上り続けて、「忍野八海入口」の標識がある地点を左折。
今度は雑木林の中の下り坂。里ではもうすっかり葉桜になった桜がまだ咲き残っている。ここは標高が900メートル以上もあるのだ。
ウグイスの声がする。やわらかく澄んだ声ではずむように歌っているのはキビタキだろうか。
忍野八海
富士吉田駅前から7キロほど、9時20分に忍野八海に到着。
忍野は豊富な地下水が湧き出す名水の里である。あちこちに湧水の池が点在することから、忍野八海と呼ばれる景勝地となって、土産物屋が立ち並び、早くも大勢の観光客で賑わっている。午後になると富士山が逆光で霞んでしまうので、ここを訪れるなら午前中がいい。
僕も自転車を止めて、いくつかの池を巡ってみた。熔岩の深い穴の底から水が湧き出す池は水深10メートルというものもあり、覗き込むと青く澄んだ水の中に吸い込まれそうだ。それぞれに鯉や鱒などの魚が泳ぎ回っている。水面をかすめるようにツバメが飛び交っていたりもする。
そして、この美しい池を前景に富士山を写せば絵葉書のような写真の出来上がり、というわけで、訪れる観光客はみんな熱心に写真を撮っている。立派なカメラをもった写真愛好家も目につく。もちろん、僕もあちこちでパチパチと写真を撮る。
今日は本当に雲ひとつない快晴で、最高の撮影条件のはずなのだが、なにやら富士山麓から薄茶色の煙が濛々と立ち昇り、富士山を覆い隠さんばかりだ。どうやら富士山麓に広がる自衛隊の演習場で山焼きが行なわれているらしい。なにも大勢の観光客が訪れる連休中にやらなくても、と思う。
(水深10m!)
(煙が・・・)
さて、観光地にしては200円と安くて、しかも、とても美味しい蕎麦を食べて、10時20分に忍野をあとに南へ向かって走り出す。
のどかな風景の中に鯉のぼりが盛大に泳いでいる。ここ数年、この季節に山梨県を訪れることが多いのだが、この地方の鯉のぼりは2本立てが基本のようだ。1本は普通の鯉のぼりで、もう1本には武者絵が描かれた幟がはためいている。都会のちっぽけなベランダ鯉のぼりと違って、とても立派である。
南風に乗って雄大に泳ぐ鯉のぼりを眺め、新緑のカラマツ林の中を行く。シジュウカラやヒガラの声が聞こえる。
林の中にテニスコートや保養所、そしてファナックという会社の黄色い建物が続く道を行くと、やがてまた国道138号線にぶつかった。ここを左へ行くと富士五湖の中で最大の山中湖なのだが、今日は省略して右折。富士吉田方面へ戻る。
下り基調なので、渋滞気味のクルマをどんどん追い抜いて快調に走っていると、まるで雪みたいに山焼きの灰が降ってきた。
河口湖
次の目的地は河口湖。富士吉田を通過して、国道139号線に入り、富士山5合目に通じる「富士スバルライン」の入口を過ぎ、「河口湖」の方面標識に従って右折すると、11時20分に富士急の河口湖駅前に出た。
まもなく今度は国道137号線にぶつかり、左折して坂を下っていくと河口湖が見えてきた。あとは道なりに湖岸を行く。
しばらくは富士山が視界から消えるが、その代わり、山々の彼方にチラリと真っ白な峰がのぞいている。たぶん南アルプスだろう。
(真っ白な南アルプスが見える)
(河口湖畔の道)
再び富士山が見えてきた。湖のむこうに富士山。もうず〜っと絶景の連続。ただ、東の麓には山焼きの煙が立ち込めているのが、ここからでも分かる。
河口湖の東岸に突き出た産屋ヶ崎を過ぎ、御坂峠・甲府方面に通じる国道137号線から分かれて、のんびりと北岸の道を西へと走り続ける。
周囲の山々は新緑というにはまだ早く、ようやく芽吹き始めたばかり、という感じ。道端には春の草花が色とりどりに咲いている。茂みの中からはシシシシシシ…という虫を思わせるヤブサメ(ウグイスの仲間)の声が聞こえ、ツバメやカワラヒワ、キセキレイ、ハクセキレイなどの姿も目にとまった。
そのうち前方にゼッケンをつけたマラソン選手の後ろ姿が見えてきた。最後尾のランナーだろうか。その前にもポツン、ポツンとランナーがいる。実際にはみんなもはやランナーではなくなって、ウォーカーになっているのだが。足を引きずっている人もいる。かなりきつそうだ。「チャレンジ富士五湖」ということは本栖湖まで走るのだろうか。
河口湖の湖面が尽きると、西湖へ向かって急坂にかかる。今日のコースでは一番の難所だが、距離的には大したことはない。ギアを軽くして、あまり頑張らないようにゆっくり上る。
富士河口湖町の足和田出張所(旧足和田村役場)の前を過ぎる頃、今度は坂を下ってくる選手とすれ違った。先頭ランナーだろうか。さすがにこちらはちゃんと走っている。しかし、戻ってくるということは本栖湖まで行って折り返してきたというわけか。一体どこまで走るのだろう。
あとで「チャレンジ富士五湖マラソン」について調べてみたら、スタート/ゴール地点は富士吉田の富士北麓公園で、距離は112キロ、100キロ、72キロの3段階。112キロは朝4時半スタートで山中湖・河口湖・西湖・精進湖・本栖湖をすべて回ってくるコース、5時スタートの100キロは本栖湖を除く4つの湖を回るコース、72キロコースは山中湖以外の4湖を回るコースで8時スタートとのこと。かなり過酷なウルトラマラソンなのだった!
西湖
2つのヘアピンカーブを曲がって、さらに上ると、ようやく勾配が緩やかになり、トンネルをくぐると西湖の湖面が広がった。
分岐点があり、北岸ルートと南岸ルートに分かれるが、ここは北岸ルートを選ぶ。富士山は対岸にそびえる足和田山の向こうに頭だけのぞかせている。
ところで、河口湖の湖面標高が831メートルなのに対して、西湖は901メートルもある(ちなみに山中湖はさらに高くて981メートル)。そして、このあと巡る精進湖と本栖湖も西湖と同じ901メートルなので、かつては1つの湖だったのが富士山の噴火による溶岩流によって分断されたとも言われているそうだ。また、この3つの湖水は地下で繋がっているという説もあるらしい。対岸を見ると、ゴツゴツした熔岩に被われているのがよく分かる。
ノロノロと走ったり歩いたりしているランナーを次々と追い抜いて、西湖の西端の根場集落で少し休憩。ここからはまた富士山がバッチリ見える。
(西湖と野鳥の森)
民宿が並ぶ中を上っていくと、まもなく「野鳥の森」。熔岩台地の上に広がる青木ヶ原樹海の中の公園である。時刻は12時45分。ここまでの走行距離は46キロ。
餌場に集まるカワラヒワやヤマガラ、シジュウカラの愛らしい姿を眺め、13時半に出発。樹海の中を走っているとミソサザイの澄んだ歌声が聞こえてきた。
精進湖
しばらく行くと、再び国道139号線に合流。本栖湖方面から戻ってくるランナーが増えてきた。坂を下っていくと、13時45分に精進湖に着いた。富士五湖の中では一番小さな湖で、熔岩に取り巻かれた湖岸を反時計回りに一周する。
(精進湖から見た富士山)
本栖湖
途中の食堂で昼食をとり、再び国道に復帰して、マラソンランナーたちと次々にすれ違いながら樹海の中を行くと、やがて本栖湖入口。下部・身延方面へ通じる国道300号線に右折して坂を下ると、いかにも観光地風になってキラキラ輝く本栖湖の湖面が見えてきた。
(精進湖〜本栖湖間の道。マラソンランナーが次々とやってくる)
(本栖湖)
本栖湖は光線の加減のせいかもしれないけれど、富士五湖の中でもとりわけ神秘感の漂う湖である。センダイムシクイがさえずる新緑の林の中、国道300号線をしばらく走り、富士山をバックに本栖湖の写真を撮ってきた。
(本栖湖と富士山)
朝霧高原
さて、14時55分に本栖湖をあとにして、あとは駿河湾に面した富士市へ向かってひたすら走るだけである。
国道139号線に戻って、しばらく上ると、「只今の気温14℃」の電光表示があった。陽射しは強いが、空気はさわやかである(ちなみにこの日の東京の最高気温は21.1度、甲府が24.1度)。
スタートから70キロ走ったところが山梨・静岡県境。地図上では標高978メートルの表示がある。時刻は15時11分。
ここからは30キロ以上にわたって延々と下り坂が続く。「長い下り坂」「全線下り坂」「ブレーキ過熱注意」といった標識が次々と現われる。
富士山の西麓に広がる雄大な朝霧高原をぐんぐん下っていくと、最初は冬枯れだった草原がだんだん緑になってきた。
行楽のクルマは渋滞気味でノロノロ運転だが、こちらは重力に任せてペダルを踏む必要もないまま、クルマをどんどん追い抜いて、快適なサイクリング。速度計はコンスタントに時速40キロ前後を表示する。
白糸の滝に立ち寄ろうかとも思ったが、やめて、さらにどんどん下る。だんだん人家が増えてきたけれど、まだまだ下り坂である。いつまで続くのだろうか、と思うほど下って下って下りまくる。なにしろ最高地点との標高差は900メートル以上あるのだ。
JR身延線の富士宮駅前を通過して、富士市に入り、さらに下って、結局、東海道本線の富士駅前には16時53分に到着。モクモクと白い煙を吐き出す製紙工場の上に富士山が白い頭をのぞかせていた。
愛車を分解して袋に入れて電車に乗る。車窓から眺める富士山は西陽を浴びて、少し霞んでみえた。本日の走行距離は110キロ。
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