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 大瀬崎・絶景サイクリング 2005年3月21日

 いつかは行ってみたいと思っていた西伊豆の北端・大瀬崎へ行ってきました。駿河湾の彼方に富士山が浮かぶという絶景の地です。


     いきなり輪行で大失敗

 6時過ぎに出発。今日の行き先は静岡県沼津市の大瀬崎。
 まずは分解・パッキングした自転車を担いで小田急線に乗って、小田原に7時51分に着き、7時57分発の東海道線・沼津行きに乗り換える。最近の東海道線はほとんどが熱海止まりで、沼津方面に直通する電車は非常に少ない。そこで、あらかじめ沼津行きの小田原発車時刻を調べ、そこから逆算して家を出る時間を決めたので、ここまではまさに計画通りである。
 ところが、僕はここでとんでもない失敗をしでかしていたのだった。それに気がついたのは、自転車を担いで、無事に沼津行きに乗り込み、ドアが閉まり、電車が動き出した時だった。自転車をドアの脇に立てかけ、ホッとしたのも束の間、僕は愕然となった。なんと背中にあるべき荷物がないではないか。自転車以外、手ぶら。デイパックをまるごと小田急線の網棚に忘れてきてしまった。電車を降りる時、自転車に気をとられ、網棚の荷物のことをすっかり失念していたのだ。乗ってきた電車はすぐに新宿行きの急行として折り返したはずである。どこまで行ってしまっただろうか、僕のデイパック。なかには携帯電話やカメラなどが入っている。
 次の早川で降り、すぐに上り電車で小田原に引き返し、JRの改札口で事情を話して外に出させてもらい、小田急の駅の案内所で忘れ物をした旨を申し出る。忘れ物取扱所の場所を教えてくれたので、急いで行ってみると、ちゃんと届いていた。助かった。

 貴重な沼津行き(次は夕方までない)を逃がしてしまい、小田原8時18分発の熱海行きに乗る。しかも熱海からの乗り継ぎ電車は3分後に別ホームから発車だったので、わずかな乗り継ぎ時間で自転車を担いで階段を下りたり上ったりするはめになったが、とにかく、なんとか沼津に9時11分に着いた。やれやれ。

     沼津駅をスタート

 沼津駅前で自転車を組み立て、9時20分に走り出す。この瞬間の気分はいつでも最高だ。なんともいえない解放感がある。都会の満員電車は無理としても、自転車をいちいち分解せずにそのまま列車に積めるようなシステムが整備されれば、もっともっと多くの人がこの気持ちを味わえるのに、と思う。

 とにかく、沼津駅から南へ向かって走り、狩野川にかかる橋を渡る。そこから雪をかぶった富士山がくっきり見えた。思わず自転車を停めて、写真を撮ったが、感激するのはまだまだ早いのだった。

 国道414号線に入り、さらに南下するが、この道は幅が狭く、しかも交通量が多くて走りにくい。一応、歩道もあるが、これも側溝の蓋の上を走るような状態。安全第一で、あまり楽しくはない。

     絶景サイクリング

 トンネルをいくつか抜け、狩野川の放水路を渡った口野という場所でようやく国道と別れ、県道17号線に入る。このあたりが駿河湾の最奥部で、あとはずっと海沿いである。
 しばらくはなおも南へ向かうが、陸地とロープウェイで結ばれた淡島を過ぎると、右へカーブして、西へ向かうようになる。
 海の向こうに富士山が浮かんでいるのに気がついた。「海の彼方に富士山」という構図は初めてだ。いきなり絶景。さらに富士山の西側にも雪の山々がうっすらと連なっているのは南アルプスだろうか。何度も自転車を停めて、写真を撮る。ほかにも写真を撮っている人があちこちにいる。

 三津シーパラダイスを過ぎ、海岸風景ものどかさを増してきた。富士山はつねに海の向こうに見えていて、「ほら、そこで写真を撮らなくていいのか」と語りかけてくる。まさにずっと絶景の連続。自転車にはいつでもどこでも停まれる自由がある、というのが素晴らしい。

 出入の多い海岸線で、激しいアップダウンを覚悟していたが、それほどきつくはなく、のんびりサイクリングを楽しむには最高の道。火の見櫓のある漁村の風景などはまるで谷内六郎さんの絵の世界。トンビやウグイスの声に耳を傾けながら、みかん畑のある山すその道を真っ青な海に沿って、しあわせ気分いっぱいで走り続ける。
 ようやく上り坂が続くようになって、いよいよ大瀬崎が見えてきた。

     大瀬崎

 大瀬崎は伊豆半島の西海岸の最北部にひょろりと突き出た天の橋立みたいな岬である。
 沼津駅前から約29キロ。そのまま西伊豆海岸を南下していく県道から分かれて急坂を下り、11時20分に到着。
 岬に抱かれた静かな海は絶好のダイビングスポットになっているらしく、一般の観光客よりもダイバーの数が圧倒的に多い。スクールも開設されているようだ。
 岬の先端へと進んでいくと、神社があり、その先は神域となっている。
 自転車を置いて、拝観料100円を払い、御神木とされるビャクシン(柏槙)が茂る樹林の中を歩いていく。ビャクシンは巨大な盆栽みたいな樹形の針葉樹で、樹齢は千年以上にもなり、天然記念物に指定されているとのこと。
 そして、岬の先端部には神池という淡水池があり、鯉などが棲んでいる。こんな場所に真水が湧出するというので、伊豆七不思議のひとつに数えられているそうだ(残りの六不思議が何かは不明)。
 駿河湾に面して立つ白い灯台まで歩いて、対岸に富士山を眺めて戻り、食堂で昼食後、12時55分に大瀬崎を出発。すぐにジョウビタキのメスを見かける。
 

 まだ帰るには早いので、もう少し先へ進もう。ここからは海岸道路というより山岳道路の趣で、ヘアピンカーブの連続でどんどん上っていく。しかし、いつでも引き返せる気楽さのせいか、さほど辛いとは思わず、やがて沼津市と戸田村の境界を過ぎると、長さ406メートルの井田トンネル。まだ新しいトンネルで、かたわらに閉鎖された旧道があったが、がけ崩れですでに通行不能状態になっていた。トンネルの先は井田集落への下りとなるが、そこで引き返す。断崖の下にきらめく海と昼下がりの陽光を浴びた富士山の景観が素晴らしかった。

 (注*戸田村は2005年4月1日をもって沼津市と合併しました。)

 ほぼ同じルートをまた沼津へ戻り、沼津漁港の展望水門「びゅうお」に登ってみたり、市場で寿司を食べたりして、沼津駅には17時前に着き、電車で帰る。
 今日の走行距離は68.2キロ。

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