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東京自転車散歩〜皇居周辺を走る 2006年9月23日
秋分の日に都心部を自転車で走ってきた。今回の目的は東京の真ん中にあるいくつかの池をめぐること。
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芝公園の弁天池
まずは東京タワーそばの港区芝公園内にある弁天池にやってきた。さほど大きくはなく、まぁ普通の池である。池畔に宝珠院という浄土宗のお寺があり、そこに弁財天がまつられている。三井寺を開いた智証大師が858年に琵琶湖・竹生島で彫ったものが源家に伝わり、頼朝が深く信仰し、のちに徳川家康も厚く崇敬してこれを開運出世弁財天と改称したとの説明板が立っている。本当ならすごいけど…。
芝公園から北へ向かい、西新橋から愛宕山のトンネルをくぐって虎ノ門へ。このあたりも意外にお寺が多い。
どんどん北へ走ると千代田区に入って霞ヶ関の官庁街。次の目標は国会議事堂の前にある池。
国会前庭の池
東京の池めぐりをする場合、「いい池ないかなぁ」と思いながら地図で探し、実際に出かけてみるわけだが、この国会議事堂前の池は前から妙に気になっていた。僕の経験でいえば、地図上で複雑な形に描かれた池は実際に訪れてみると「いい池」である可能性が高い。そして、国会前の広い道路に囲まれた三角地帯にある池も地図でみるとかなり複雑な形をしている。心惹かれる。そのわりには、この池に関する記述は見たことがないし、一体どんな場所にあるのか、誰でも自由に立ち入れるのかも分からなかった。
で、実際に行ってみると、国会前庭という公園で、誰でも自由に散策できるようになっていた。ただし、公園周辺には警察車両が目につき、警官があちこちに立っているから、なんとなく監視されているような気分にはなる。
国会前庭はごく普通の緑地公園といった感じだったが、池はなかなかよかった。林の中に滝がつくられ、そこから澄んだ水が緩急の流れとなって曲がりくねりながらサラサラと下り、池に注いでいる。その渓流の風情がいい。池畔には百日紅が咲き、池の向こうの樹林の上から国会議事堂の屋根がのぞいていた。
さて、外国人観光客が次々と訪れては記念写真を撮っていく国会議事堂を眺め、次に皇居のお濠の中でも僕が一番好きな桜田濠へ向かう。すぐに内堀通りにぶつかり、道路の反対側が桜田濠だが、すぐに道路を渡ってはいけない。最高裁判所や国立劇場の側を行き、半蔵門の交差点で道を渡って、初めて濠端に出る。そうでないと感動が中途半端になる。
桜田濠から日比谷濠へ
半蔵門のあたりから眺める桜田濠というのは東京随一の絶景ではないかと僕は思う。お濠端の歩道から水面までかなり標高差があり、ちょっと大げさかもしれないけれど、北海道の摩周湖展望台に立った時と似た気分になる。今は土手の急斜面に朱を散らしたように彼岸花が咲き乱れ、初秋の風情を醸している。ヤブガラシの花のまわりをアオスジアゲハが舞っている。美しい風景に見とれていると、真っ白なダイサギが1羽、どこからか飛んできて、眼下の水辺に舞い降りた。
この半蔵門から左にお濠を見ながら桜田門方面へ三宅坂をグングン下っていくのも最高に気持ちがいい。この爽快感がたまらず、皇居を2周でも3周でもしたくなる。散歩やジョギングをしている人も多く、外国人の姿も目につく。もちろん、サイクリングをしている人もたくさんいる。東京のど真ん中にこんな風景があるというのがなんとも嬉しいし、盛んに写真を撮っている外国人観光客に対しては誇らしい気持ちにさえなる。
右に警視庁を見て、桜田門を過ぎると、土地はすっかり平坦になって凱旋濠。左には法務省のレンガ造りの建物。
祝田橋の交差点を過ぎると、左は日比谷公園、そして右は日比谷濠。お濠の向こうに帝国劇場が見えてくるあたりの水面の広々とした感じもまたいい。白鳥がいかにものんびりした様子で浮かんでいる。巨大化したミドリガメも1匹。
このまま気持ちよくサイクリングを続けたい気分だが、ちょっと中断して日比谷公園に立ち寄る。
日比谷公園の池
日比谷公園は言うまでもなく日本初の洋風庭園で、明治36(1903)年に開園した。江戸時代には大名屋敷があった場所で、江戸城日比谷見附の石垣が今も残っている。その石垣に沿ってあるのが心字池で、元は堀であったという。洋風庭園といっても、このあたりは典型的な日本庭園風である。コサギがじっと魚を狙っている。池のほとりには南極の石などというものが置いてあったりする。
園内にもうひとつある池が雲形池。こちらは天を仰いではばたく鶴の噴水が有名。夏には涼しげな水の景色として、また冬には水が凍ってツララができたというようなニュースでしばしばテレビに登場する。野外音楽堂で何やらコンサートが開かれているらしく、大音響が聞こえてくる中、池を眺め、園内をぐるりと一巡して、外に出てきた。
(日比谷公園の心字池と雲形池の噴水)
皇居外苑
再び日比谷濠に沿って北へ自転車を走らせ、馬場先門の交差点を左折して二重橋のある皇居外苑へ。小学4年生の時に都内めぐり(羽田空港、新聞社、築地市場、晴海埠頭、勝鬨橋などをバスで巡った)でお弁当を食べたのが確かここだった。黒松が植えられた芝生が美しい。皇居周辺を自転車で走っていて、何ともいえず気持ちがいいのは、東京とは思えないほど空が広いからだ、と改めて思う。
皇居東御苑
外国人観光客が多い外苑を抜けて桔梗濠に沿って内堀通りを北へ行くと東御苑の入口。ここにも池があるので、橋の袂に自転車をとめて立ち寄る。ここも外国人が非常に多い。英語、フランス語、韓国語、中国語…いろいろな国の言葉が聞こえてくる。
立派な大手門をくぐると係員のいる窓口があったので入園料を払うのかと思ったら、「入園票」という札を渡されただけで、無料だった。
同心番所、百人番所など江戸時代から残る建物を見ながら歩いていくと、白鳥濠に出る。至るところに彼岸花が咲いている。このあたりが江戸城の旧二の丸で庭園があり、そこに池があるのだが、まずは汐見坂を登って、もう一段高い本丸跡へ。広大な芝生の庭園で、かつての江戸城の中心部である。大奥や「忠臣蔵」で有名な「松の廊下」もここにあった。
その北側にさらに一段高い石垣に囲まれた天守台がある。江戸城の天守閣の跡地である。3代将軍・徳川家光の時代に完成した5層の天守閣は明暦3(1657)年の大火で焼失し、その後、再建されることはなかったそうだ。
本丸跡東端の展望台から大手町方面のビル街を眺める。汐見坂という名前からも想像できるように、昔はここから海が見えたのだろう。
さて、二の丸庭園である。雑木林の中の小径を歩いていると、どこかの高原を散策しているような錯覚を覚える。そして、林を抜けると、池が現われる。さほど大きな規模ではないが、林の中の井筒から湧き出た水がハナショウブの植えられた菖蒲田を潤し、池に流れ込み、対岸には滝も落ちている。洲浜に雪見燈籠もあり、典型的な回遊式池泉庭園の風情。江戸初期に茶人・建築家・作庭家として活躍した小堀遠州の作という庭園を当時の絵図をもとに復元したものだという。池畔のきれいに刈り込まれたサツキやツツジの曲線美が印象的で、花の季節にはさぞかし見事なことだろう。また訪れよう、という気持ちにはなった。なにしろ東京の真ん中。その気になれば、いつでも来られる場所なのだ。
皇居一周
愛車のもとに戻り、とりあえず皇居を一周してみよう。まずは内堀通りを大手濠に沿って北へ。ずっと水辺の道で、しかも完全に平坦なので、楽しい気分でスイスイ走れる。このあたりは遠い昔は海や低湿地で、江戸が小さな漁村から大都市へと発展していく過程でだんだん埋め立てられていったのだ。江戸城はそのような低地にのぞむ台地の東端に立地していたわけだ。
気象庁前から左へカーブして、平川橋を過ぎるとまもなく内堀通りと別れ、代官町通りに入る。すぐに渡るのが大手濠と清水濠の間に架かる竹橋。ここから上りが始まり、山の手に向かう。右に国立近代美術館。左手の濠は平川濠だ。しかし、北桔橋門(ここからも東御苑に入れる)を過ぎると、お濠は見えなくなり、左はいわゆる皇居の森が広がる吹上御苑となり、乾門がある。もちろん、一般人が通ることは許されない。一方、右側は北の丸公園で、やがてレンガ造りの洋風建築が現われる。それが国立近代美術館工芸館、昔の近衛師団司令部である。工芸館に続く土手の向こう側は桜の名所、千鳥ヶ淵だが、ここからは見えない。
坂を下ると千鳥ヶ淵と半蔵濠を隔てる土手を渡る。江戸城の内堀ではこのあたりの水面標高が最も高い。一番低い日比谷濠との標高差は15メートル近いそうだ。
そこで再び内堀通りに突き当たり、これを半蔵濠沿いに南へ下ると半蔵門で、再び桜田濠の絶景が現われる。何度眺めてもいい景色だ!
東京駅周辺は牛だらけ!
ここから2周目に入り、また桜田門、日比谷濠、馬場先門を過ぎ、今度は皇居外苑には入らず、馬場先濠沿いに日比谷通りをいくと、和田倉門の交差点。右にお馴染み、東京駅の赤レンガが見える。寄ってみよう。
東京駅前には赤レンガの駅舎をカメラに収める人、スケッチする人がたくさんいた。僕も写真を撮る。しかし、この風格ある駅舎に負けないぐらい人々の注目を集めているのが牛である。
実は先ほど日比谷公園前の交番の脇に警察官の制服を着ているようにペインティングされた実物大の牛の置物があって、不思議に思っていたのだが、同じように奇妙な色彩の牛が東京駅周辺にもあちこちに設置されているのだ。
実はこれ、COW PARADE TOKYO in MARUNOUCHI 2006というパブリックアートのイベントであるらしい。グラスファイバー製の実物大の牛のオブジェにアーティストや一般市民、子どもたちが自由な感性でさまざまな意匠を凝らしたペインティングを施し、それが大手町・丸の内・有楽町地区の街頭に65頭も展示されているのだ。もともとは1998年の夏にスイスのチューリッヒで始まり、それが各国に広がって、今年はアメリカ、イギリス、フランス、アルゼンチンなど6カ国、8都市で開催されているそうだ。時には数百頭もの牛が街に出現することもあり、それらはイベント終了後にオークションにかけられ、その売上金は福祉団体などに寄付されるという。
牛の所在地を示したパンフレット片手に親子連れやカップル、女性のグループ、それに牛マニア(?)が牛めぐりをしていて、僕もいくつか見て回ったが、あまりにたくさんいるので、適当に切り上げて、北の丸公園へ向かう。
(カウ・パレードの開催期間は2006年9月6日〜10月1日)
北の丸公園の池
江戸城の北端に位置する北の丸には徳川御三卿の田安家と清水家の屋敷があった。現在は公園として一般公開され、武道館や科学技術館などがある。そして、この園内にも池があるのだ。
池そのものは芝生の園地に沿ったごく普通の池だったが、ここでも雑木林の中の水源に滝がつくられ、滝見台まで設置されている。そこから水が流れ下って池に注ぐまでの渓谷の雰囲気はなかなかよかった。
(北の丸公園の渓谷と池)
武道館のそばの田安門から北の丸公園を出ると、右が牛ヶ淵、左が千鳥ヶ淵。そして、正面が靖国神社である。
靖国通り〜市ヶ谷〜外堀通り〜四谷〜新宿通り〜新宿〜甲州街道経由で帰る。
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