| さて、軍隊漫画絵葉書を紹介してまいりました。これらシリーズに見られる特徴として、登場する装備は、その形状が特徴をとらえて描かれている点が挙げられます。
いずれもデフォルメなどはされていますが、実在したものが描かれています。
今回、紹介しておりますものも、それぞれ私の方で把握できました範囲を言及しておりますので、ご参照ください。
また、今回紹介しておりますもの以外にもいろいろな兵器類は登場しており、やはり実在したものがかかれています。今回、当HPで紹介いたしますもの以外にも、以下が挙げられます。いずれも残念ながら未入手で、画像での紹介が出来ませんが、判明している兵器の種類のみ紹介いたします。また、兵器を描いたものは人気が高く大変高価で、また年々価格が上がっている印象があります。各位に於かれましては、安価なものを見つけた際は早く購入されますことをお勧めいたします。
6輪牽引車両(「九〇式広軌牽引車」)、列車砲(日本軍は輸入したシュナイダー列車砲を満州に配備しており、それと思われます)、機関銃(96式軽機関銃、九二式重機関銃)、対空砲(88式75mm高射砲)が登場します。
戦車では、輸入したものも登場します。さらに戦車運用の構想も読み取れる絵となっている例もあります。具体的には薬井一寿画の陸軍物にフランス製の戦車、ルノーNCが登場します。この戦車は日本陸軍が購入して評価試験などを行った事があり、史実に基づくものと言えます。さらにこの絵葉書の特徴はそうした史実に加え、まず戦車の形が正確に描かれている点が特徴として挙げられます。写真を支える大きな支柱とスプリング、車輪の数に至るまで、そっくりに描いてあります。
さらに描かれた内容ですが、戦車が併走する兵士の先頭に立ち、鉄条網を踏み倒して進路を開いているものでした。歩兵の進行を妨げる鉄条網に対し、戦車が障害を取り除いて進路を開き、共に進撃をしている様子を描いている様が読み取れます。つまりこの絵から戦車と歩兵の共同運用構想が読み取れます。
いずれも絵師のこだわりのディティールとも言えます。
これらにつきましては、入手出来次第、順次紹介してまいります。 |
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| ではここで、絵葉書紹介の補足としまして、実際にあるものからの取材例と考えられるものを紹介いたします。
全線での負傷兵漢語を描いた絵葉書を別途掲載しておりますが、そこには遠くに白い飛行機が描かれていました。
これも実在するものを参考にしたと考えています。
よくよく見ますと複葉機です。
当時、軍務についた飛行機は必ずしも国産や軍の調達ばかりではなく、民間基金で購入したものもあります。この飛行機は、そうした中の一つと考えています。画像はご好意により入手できたものです(この場をお借りしまして、御礼申し上げます)。 |
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| さてうした軍隊絵葉書は主に漫画家が描いている様ですが、事前に詳細なリサーチを行ったものと考えられます。
そのため、リサーチした元になる情報があったのでは、とも考えます。これは想像ですが、軍も絵師に協力をしていたかもしれません。うまく描ければ、軍務への啓発になりますので、軍としてもメリットがあります。
一方で、海外の兵器は日本のものを描くのと違い、ずばりこれを描いたと言うものが無い場合があります。直接取材する事が出来ないからかもしれませんが、しかし雰囲気は似ているので、ひょっとしたら当時の報道写真などを参考にしたものと思われます。
南方戦線を描いた絵葉書の鹵獲兵器にユニークな形の装甲車がありますが、全くそっくりのものは見つかりませんでした。が、なんとなくではありますが、並べてみますとシトロエンP28に似ています。
こうした類似のもので得た印象を基に絵を書いたのではないか、と想像しています。 |
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| 以上、いずれの絵師も絵葉書にこだわりのディティールが見られます点を紹介いたしました。
さらにその例の紹介としまして、兵舎を上げてみます。
例えば、兵舎はどの絵師が描いても同じです。これは、まず兵舎が何処でも同じつくりになっていた事が上げられます。加えて実際に見学を行ったとも考えられます。
兵士らの部屋は、いずれも中央に長テーブルがあり、両側に頭を部屋の中央に向けて一列にベッドが並び、壁の上には棚が作ってあります。棚の配置、廊下に面して銃架が設けてあるなどの配置が確認できます。これは標準的な兵舎の建て方だったようです。
ちなみに、棚の上も、どの絵師も同じように描いています。この棚はすべて衣服のはずです。衣服をたたんで、きっちりとした外観に積み上げるのも、兵士の苦労でした。また箱もあり、“手箱”と呼ばれていたようです。
この配置は、絵葉書でもそのまま描かれています。
ちなみに寝台はずいぶんと狭そうで、寝返りしようものならたちまち落ちそうです。 |
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| 兵舎内部を別の角度から捉えたもので、食事中のものを紹介します。
各種の配置(背景の銃架、寝台など)絵葉書のとおりです。
ただ、絵葉書に比べると、テーブルはあまり広くないですね。
さて写真は、やや兵士が緊張して見えます。当時、カメラも写真も高価で珍しいものでしたので、それなりに緊張をしたのかもしれません。あと、白黒なのでなんともわかりませんが、食器はアルマイトに見えるのですが、如何でしょうか。 |
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| さて、戦前の陸軍もの漫画、のらくろから。
寝台と架台にかけられた歩兵銃の配置が、実際の兵舎を反映しています。 |
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| もうひとつ、作画が実物を取材したと考えられますものです。
大勢の兵士が寝ていますが、こちらは兵舎ではありません。
絵にもありますとおり、廠舎で、工場とそれに付随した倉庫のようなものを意味するようです。なので、実は内部はガランとしています。 郊外の広い演習場で泊まりがけの大がかりな演習を行うときなどに、数夜を過ごすために使われた仮の宿です。天幕を張っての露営よりはゆっくり休める場所でしょう。勿論、演習がないときは器財などの置き場としても使っていたものとおもわれます。 このように内部が非常に簡素な作りになっています。
下に廠舎を写した写真を並べて見ます。 靴や銃が見えますので廠舎が臨時の寝泊りに使われたタイミングで撮影されていることがわかります。構造は上の絵とよく似た印象を持ちます。ということは、廠舎もおおむね似たつくりになっていたのかも、などと想像しています。写真は、改めて見ますと、ずいぶんと奥行きがあります。天井には裸電球がみえます。
写真では軍靴が並べておいてありますが、漫画絵にはさらに下駄や草履が見えます。 |
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