このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください




針尾送信所 無線塔


最新技術を投入し、完成した鉄筋の無線塔です。今日もその姿を保っています。
当時、無線に用いる電波が長波と呼ばれるものであり、これだけの大規模施設と
なったそうです。
後の大戦中には、だんだんと中・短波になったとのことで、開戦後はだんだんと出
番が減ってしまいました。

また開戦の暗号文『ニイタカヤマノボレ』を送信した塔でもあります。
この暗号は、連合艦隊の旗艦長門から発信され、有線ケーブルを通って佐世保に
到達、針尾無線塔より中国大陸や南太平洋に展開する部隊に伝えられたとするの
が、現在は定説となっています。

施設は3本の塔の中心点に送信所の建物があり、ここに送信機や発電機などが設
置されていました。戦後は海上保安庁に移管され海の安全と治安に活躍、97年に
新たな送信施設への移転まで使用されていました(現在も残っているそうです)。
工事費は、現在の金額に換算して約250億円にもなるものでした。

・塔基の直径:基部で十二・一二メートル、
・高さ     :百三十七メートル(一本)
          百三十五メートル(二本)
          三百メートルの等距離に配置。
・完成     :大正十一年(一九二二年)

(歴史群像2月号付録学研社を元に編集)


針尾電波塔遠景
まずその巨大さに驚きます。
東側、直線で9キロ離れております川棚町の丘の上から望遠レンズで撮影。手前の海は大村湾です。
春の霞みのなか、くっきりと3本が空に向かってそびえています。
大正時代からずっと建ち続けているとは思えない程の大きさです。

針尾電波塔近景
巨大な3本の塔を東から見ます。
周囲は段々畑に養魚場とのどかな風景が広がりますが、ここだけは空へ真っ直ぐに突き出した巨大な塔が存在する不思議な空間となっています。
塔の合間に、現在海上保安庁が使用している鉄塔が見えます。
周囲に比べるものが無いのですが、とにかく異様な巨大さです。東京タワーの中ほどにあります大展望台が145mですので、ほぼその高さまで細く真っ直ぐ貫いていると考えてください。

針尾電波塔近景その2
こんどは西側から見ます。
手前が針尾瀬戸針尾瀬戸(伊の浦瀬戸)です。

針尾電波塔近景
クローズアップです。
足下に二階建ての家が見えますので比較してみてください。

針尾電波塔
クローズアップです。
縦にスクロールしてご覧ください。
途中にはいくつか四角い窓上のものが、そして途中に一箇所だけ出っ張りがあります。
それぞれ目的は不明ですが、内側になんらかの足場があり、その明かり取りか、と想像します。

針尾電波塔 中ほどのクローズアップ
中程のクローズアップ。
それにしましても、まるでつい最近作られた様な印象です。戦後に作られた志免炭鉱縦坑櫓の鉄筋コンクリートが一面の剥離であるのに対し、潮風に晒されつづけているこの針尾送信所無線塔にはそうした剥離などの欠損が見当たりません。

塔頂部クローズアップ
手すりでしょうか。
周囲に大きさを比べられるものがなく、どういったものなのか、見当がつきません。

針尾電波塔周辺その1
玄関と思われる門柱がありました。
この門柱が作られた時代はわかりませんでしたが、古そうです。

針尾電波塔周辺その2
門柱脇、燃料庫と思われます。
石造りのがっしりしたもので、丁度、川棚魚雷試験場の建物とも似た印象があります。

針尾電波塔基礎部表面
接近し、表面を見てみます。
時間のたったセメントでありながら、ひび割れ、剥離が全く無いことがわかります。また、周囲に剥離片は一切落ちておりませんでした。
戦前のセメントには、丸い小石や砂利が多量に混ぜられているのが普通です(戦後もしばらくですが)。が、そうしたものは一切見あたらず、触ってみても実に緻密で細かな砂利で構成されている様です。

針尾電波塔基礎部
ドアがあります。

針尾電波塔内部
内部です。
残念ながら、ドア越しにこれだけしか見えませんでした。
塔は、丁度竹輪の様に中空となっている様です。
予想としまして、アンテナを張るワイヤのテンションを確保するための機材、作業員が上下するための簡易なエレベーターがあるのではと考えておりました。どれがそうした機材の名残かは判りません。
また内部にもセメントの剥離片の落下は見つかりませんでした。
正面奥にはしごがあります。実は、上まで登る梯子段状の足場は残っているとの情報もあります。そうなりますと、塔の内部を観察しつつ、塔の頂上も見ることは可能ではあります。しかしながら仮に内部に入る許可を得たとしても、登るのは諦めるしかなさそうです。
まず梯子を百三十メートル登るのは気が遠くなりそうです。また、鉄製とおもわれます梯子は朽ちていないとも限らず、万一崩れた際には、暗い塔の中をまっ逆さまに落ちるハメになりそうです。
ちなみに内部には激しく落書きがありましたが、掲載にあたり修正しております。

夕暮れに沈む、針尾電波塔
わずかな明るさを残す空に、黒々と影を伸ばす電波塔です。
今回は、いずれも日暮れ時の撮影でした為、綺麗な写真で紹介することが出来ませんでした。
いずれ明るい時に再度訪問し、シャープな画像でお届けして参ります。

場所はこちらをご参照ください。
針尾島という、ちょうど大村湾の入り口に栓をする形の島にあり、その西側です。
東側(早岐瀬戸側)には有名なハウステンボスがあります。

佐世保大塔IC方面から車でおいでになる場合、ハウステンボス前で西(右)に曲がり、202号線をたどることで容易に見えてまいります。
また西海パールライン有料道路からも容易にご覧いただけます。
針尾送信所無線塔へバスでおいでの際は、JR佐世保駅前から西肥バス・西海橋行きに乗り約50分。高畑で下車し、徒歩約15〜20分です。
http://www.mapion.co.jp/c/f?grp=all&uc=1&scl=70000&el=129%2F45%2F08.012& pnf=1&size=500%2C500&nl=33%2F03%2F46.459

尚、塔は佐世保海上保安部の敷地とも重なります。
見学されます方は、海上の交通をつかさどります重要な施設でありますことも踏まえ、敷地内への侵入など業務の妨げになりますことは厳禁でお願いいたします(テロリストと間違われないとも限りません)。
また管理は佐世保海上保安部ですが、内部などの見学許可は原則として下りないものとご認識くださいます様、お願いいたします。
なにしろ、時代がたっており、万が一の危険が無いとも限りません。その際、海上保安部に対しましても、ご迷惑となります。


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