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うたげのあと
(京都)
朱雀門を抜けた大内裏には大きな松原が広がっていた。 内裏の西で、朝堂院の北だ。 朝は風にその枝をふるわせ、清清しい緑葉が青い空にちらちらと泳ぎ、闇夜は静かな深い森になった。 夏は暑さをさえぎり、冬は凍てつく大地の中で春を真っ先に告げていた。 そこはかつて美しき公達が集い、蹴鞠を楽しんだといわれる。「宴(えん)」の名をいただいたのはその名残りだ。 しかしその松原はその広さゆえに不気味な場所となり、その深さゆえにいつしか鬼が姿をみせるようになった。ある晩貴人が帝の命で豊楽院へ尋ね歩いた時に、彼はこのあたりで得体の知れない声を聞き、命を果たせず逃げ帰ったのだとか。 それは千年も前のことなのだけども。 時代が過ぎ、松原がその姿を失って、今は真新しき碑(いしぶみ)が在りし地の名をつなぎとめている。 |
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