このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

夢幻のかなたに
王国に住まう王侯貴族の皆さんはこんな方々です。


藤原吉子
生年不詳〜807.11.12)

藤原(南家)是公の娘で、桓武天皇の後宮に入り、長岡京遷都の前年である783年に従三位に叙せられ夫人となる。第三皇子(諸説あり)の伊予親王の生母。伊予親王は桓武天皇鍾愛の皇子であったが、異母兄である平城天皇の御世に謀叛の罪により捕らえられ、母・吉子共々川原寺に幽閉。伊予親王は親王位を廃された。その後飲食を断たれ、毒を仰いで自害。後に復位し従二位を贈られている。


吉子は藤原南家の出身で、藤原四兄弟の武智麻呂の後胤となる。孝謙天皇朝・淳仁天皇朝では藤原仲麻呂(恵美押勝)がその手腕を発揮し、南家は絶頂を迎える。しかし上皇となった孝謙天皇との不和から、南家の栄華には影がさし仲麻呂が反旗を翻してそれに敗れると一躍没落の憂き目を見る事になる。その中で吉子の後宮入りは、南家の命運を賭けたものであったといえよう。だがそこには同じく自身の娘を後宮に入れ権力の掌握を望む藤原式家の姿があった。式家は、聖武天皇朝に藤原広嗣が乱を起こし衰退、その後の仲麻呂全盛時代にはその影に甘んじなければならなかった。しかし仲麻呂が決起すると孝謙上皇軍に加わりこれを平らげる事になる。後に上皇が称徳天皇となり、後嗣を指名する事なく崩御した際に、酒呑みに甘んじ政治の表舞台からは身を隠すように過ごしていた白壁王を光仁天皇として担ぎ出したのは、この式家だったのである。

吉子は桓武天皇の皇太子時代に後宮に入った。所生の伊予親王については生年が伝わっていないもの、延暦11年(794)2月に加冠を受けており、異母弟である大伴親王(後の淳和天皇)が12歳くらいで加冠の儀を受けている事を考えると、宝亀11年(780)年頃の生まれとなるか。延暦2年(783)に無位から従三位に叙せられ、夫人となるものの父・是公は延暦8年(789)に極官を右大臣で逝去している。桓武天皇は伊予親王を鍾愛し、皇太子・安殿親王(母は式家良継の娘・皇后乙牟漏)に代わり、その天皇位を譲る事を考えていたともいわれている。しかしその桓武天皇も延暦25年(807)3月に崩御し5月には安殿親王が平城天皇として即位、同母弟であった賀美能親王が皇太弟となった。

大同2年(807)10月。伊予親王は罪ありとして捕らえられた。事のあらましは藤原宗成による伊予親王への謀反の誘いであったが、親王自身はそれを聞くやいなや平城天皇に奏上している。しかし左近衛府に検束された宗成はこの事件の首謀者が伊予親王であると申し立てた為に、親王は捕らわれの身になったのである。11月、
吉子も親王と共に大和国城上郡川原寺に幽閉さ飲食を断たれた。11日に親王はその位廃され、翌日吉子と親王は毒を仰いだ。式家の藤原仲成薬子兄妹の謀略だともいわれているこの事件の後、一時勢いを盛り返していた藤原南家は衰退していく事になる。

しかし吉子の復位は弘仁10年(819)と早く、承和6年(839)9月には従三位を、翌月には従二位を贈られている。また貞観5年(863)の神泉苑での御霊会ではその御霊の中に名を見る事が出来る。御霊とし
ての異名は藤原夫人、藤原大夫人でもある



*藤原吉子に思うこと*

吉子さんというとどうしても友人からのイメージが大きくて物憂げで優しいという感じがするのです。余り影響力がないからこそ、愛された女性。伊予親王の事件に関しても、意見がいえないような女性であったからこそ反発もなく息子と共に幽閉されてしまったのではないかと。

桓武天皇の皇子達・・・安殿・賀美能・伊予・大伴などの親王が上げられますが、その中でも伊予親王といえば特に父親に鍾愛されたと伝えられています。早くに母を亡くした事から母親の面影を求め、病弱な安殿親王は、天皇としては優れた能力の持ち主だったかもしれませんが桓武天皇にとっては物足りない存在だったのかもしれません。その上、安殿親王の傍らには追い払っても追い払ってもその心を捉えつづける魔性の女性・薬子がいた事も原因だったのでしょう。伊予親王に対する桓武天皇の接し方は、安殿親王とは明らかに違っていたように感じられます。それは若き日の自分を見るかのように闊達で、かつ健康に恵まれていたからかもしれません。
しかし、対する安殿親王の父親に対する屈折した反動があったのではないかと思うのです。伊予親王の事件は無実であったといわれていますがそれを無実として裁けなかったのが、この長年に蓄積した愛憎だったりするかもしれません。


















































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