このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

パンフレット拝見
〜ベルばらのみどころ〜

原作『ベルばら』でこんな事、見つけました(^^;)
ももか的見どころです。
随時更新予定♪

MCコミックス全10巻を読んでみる。


進化するパリのパン屋
パリの裏通りでロザリーがパンを抱えているシーンは2回登場します。1回目は布で包んだ状態、2回目はバケット式で紙で包む事もなくそのまま持った状態。このパンはお隣りのピエール坊やへおすそわけされました。実はこのパン屋、裏通りに店舗を抱えていたにも関わらず最新設備を兼ね揃えていた店と推察出来るのです。それも1世紀ものの革新。革命以前、庶民のパンの形は丸型が一般的(パリでは田舎パンと呼ばれるパンがありました)で、パン職人も「丸パン(=boule)作り」を表すブーランジェ(=boulanger、転じてパン屋はboulangerie)と呼ばれていました。この理由は竈の形(大きさ)。それが竈の改良により一度に多く焼き上げる形、つまり棒型(=bagvette)が登場したのだそうです。勿論以前にも棒型はありましたが、長さが違うんですね。この点からフランスパンとパン屋の移り変わりを見る事が出来るのですが、ロザリー行きつけのパン屋はまさにその過渡期であったと思われるのです。ちなみに。フランスでパンに塩が使われるようになったのは18世紀から。またこの時代のパンは固かった為にスープに入れて食する事が多く、当時のスープは飲むものではなく、食べるものという認識の方が強かったのです。

ロザリーの貴婦人教育の成果 〜言葉遣いにみる〜
ジャルジェ家に引き取られたロザリーは、宮廷に出入り出来る貴婦人となるべき教養を、オスカルから学びました。その内容を察するに歴史、文学、作法、ダンス、剣指南。ポリニャック家を出た時には書き置きを残しているので読み書きもマスターしていたと思われます。ダンスはともかくドレスの着こなし方はジャルジェ夫人のアドバイスがあったのかもしれません。国王の前から退出する時の作法の1つに、入ってきたそのままの状態で後ろに下がるという高度な技があるのですが、ジャルジェ夫人ならアントワネット付主席侍女としての経験がありますから、先生としては一流でしょう。ちなみにドレスの裾を踏んづけてしまったオスカルは、まだこの習得に至っていませんでした。社交界デヴューはエリザベス夫人の舞踏会。ベルサイユデヴューは王妃さまのお声がかりで決まったというロザリーの教育の成果は、オスカルからきつく教えられた言葉遣いから窺い知る事が出来ます。ベルサイユデヴュー前後は「あたし」と「わたし」を混同して使っていた彼女ですが、シャルロットとの和解以降「わたし」と自称出来るまでになりました。そしてポリニャック伯爵家に引き取られる直前には貴婦人教育は実を結び、ド・ギーシュ公爵と結婚しても見劣りしない程になっていたとみて良いでしょう。

燭台で決闘
ド・ゲメネ公爵がオスカルに対して行った決闘の申し込みは燭台を叩きつけるというもの。これは宮殿内オペラ館における国王王妃臨席晩餐会での出来事でした。この時のド・ゲメネ公爵は手袋を着用しておらず、一番身近にあった燭台を怒りにまかせて叩きつけたのだと思われます。貴族の決闘とは、正式には着用している片方の手袋を投げつけ、それを相手が拾った時点で成立するのです。という事は、オスカルはド・ゲメネ公爵により叩きつけられたと思われる燭台を更に手にした(手袋を拾う行為の代わり)とも考えられます。なお、この決闘はアントワネットの仲裁により中止となりました。またこのシーンは、燭台を投げつける・叩きつけるという説の他に、怒りにまかせて立ち上がった時に燭台が大きな音をたてた説を取る事が出来ます。

アンドレ、出世の物語 〜『ベルばら』での成功の秘訣〜
『ベルばら』はある意味でアンドレ出世の作品と位置付ける事が出来るのは周知の通り。オスカルの乳母の孫であり、遊び相手としてジャルジェ家に引き取られたアンドレは、オスカルの近しい友人として成長します。しかしアンドレの下積み時代を見ていくと、悲しい事実が判明します。MCコミックス3巻の「主な登場人物」には既に彼の姿を見る事が出来ないのです。ちなみに2巻では小さいながらもそれなりに名を連ねています。そんな悲しい過去を持つアンドレも、いつしかフェルゼンを呼び捨てに出来るまでに成長。以降、彼の扱いはオスカルの相手役として飛躍していきます。

フェルゼン父の外国趣味
フェルゼン父はスウェーデン陸軍元帥兼王室顧問官です。それにもかかわらず息子のハンス・アクセルことフェルゼン伯の花嫁候補には外国人ばかりを紹介しており、ジェルメール嬢(後のスタール夫人)、イギリスのリージェル嬢などの名を見る事が出来るのです。そもそもフェルゼン伯の登場も外国への遊学から始まり、4年ぶりにフランスに戻ってきた理由さえもが「フランスで結婚相手を探す為」なのです。フェルゼンの妹ソフィアの登場の時にフェルゼン父のフランス贔屓を口にしているので、相当な外国かぶれだった事が窺い知る事が出来ます。因みに当時、フランスへの憧れは他国の貴族にとっては相当なものでした。ヨーロッパにはヴェルサイユ宮殿をモデルに作ったという宮殿が幾つか見受けられます。

衛隊の入隊資格 〜エリートへの道〜
王室を守る近衛隊は家柄・容姿・人柄が重視されたエリート軍隊です。しかしある程度の「実力」があれば裏口入隊も可。オスカルは士官学校も終えないうちから入隊していますが、これは女性という事での特別な配慮があった為。勿論、父・ジャルジェ将軍の力もあった事でしょう。また、ニコラスはローアン大司教の力によって入隊。容姿端麗の項目にいささか疑問を感じるものの、お金と権力があればこの通り。

隠された「革命」の布石 〜コミックス解説に記された「予兆」〜
MCコミックス4巻の解説に、「アントワネットが2児の母となったころ、フランスに革命の嵐が」とあります。逆算すると3巻の時点で既にフランス革命の口火が切られていたという事に。この頃というとジャンヌが首飾りを手に入れたところ。深読みをしてみると『ベルばら』では首飾り事件こそが革命の発端として描かれている事になります。ポリニャック夫人による「権力とは脆いもの」の呟きもあながち見落とせない部分です。

外国語の習得 〜宝石商ベメールの手紙〜
ベルサイユ宮殿に働く人々にはそれぞれの仕事の分担が決まっていました。アントワネットの朗読係はカンパン夫人という眼鏡をかけた老婦人。宝石商ベメールは、アントワネットに支払い未納の首飾りの件で手紙を出しましたが、彼女はその解読不明な手紙に頭を悩ませてしまいました。そこで登場したのがこのカンパン夫人です。ベメールは王妃宛の手紙を動揺の為か、達筆なる外国語で書いてしまっていたのです。ドイツ語圏で生まれフランスに嫁いだアントワネットがこれを解読出来ないのも無理がありませんでした。せめてフランス語かドイツ語だったなら!幸いにしてカンパン夫人はその手紙を読み解きますが、アントワネットはこの自分を混乱させた手紙を燃やしてしまい、首飾り事件というフランス史上稀なる奇怪な事件に発展します。

オダリスク(トルコ後宮)風ドレス
コンティ大公妃の舞踏会でオスカルが初めて着用したドレス。ア・ラ・フランセーズ風、オダリスク風などのドレスのうち、ばあやさんが選んだ1点なのでした。『ベルばら』史上最も異色な風格をもったドレスで、手にしている孔雀の羽根の扇子はアングルの「グランド・オダリスク」でも御馴染み。

革命前夜のベストセラー 〜『ヌーベル・エロイーズ』を読んだ人々〜
ジャン・ジャック・ルソー作の小説『ヌーベル・エロイーズ』は出版以来約30年近くの間、市民の間の不滅のベストセラーでした。物語中でもオスカルを始めジェローデル、アンドレ、アランなどの読者を見る事が出来ます。その感想はというと。ジェローデル曰く「たわいもない恋愛小説」なのだとか。しかし涙を流す人、暴走し心中を図ろうと考える人、憤りを感じる人など、その感銘を受けた人々は多数。ベストセラーの所以です。

物語に登場する店 あ・ら・か・る・と
王妃様御用商 ローズ・ベルタンの店
パリのサン・トノレ街にあるローズ・ベルタン嬢の店。アントワネットを夢中にさせたローブ・ア・ラ・フランセーズ(ドレス)を始め、貴婦人達に人気が高いダチョウの羽根の取り扱いもしています。特にノミ色・ノミの腹色・ノミの足色などの茶色の絹地で仕立てられた「ノミ色シリーズ」は爆発的なヒットを生みました。しかし王室の財政が圧迫してくると、宮廷を去る事になります。
下宿モンセニュール
パリの裏通りにある下宿。ロザリーが12歳の頃に働いていました。女将さんがお店を賄っていたようです。
旅館・お食事の店アラス
こちらはジャルジェ将軍ご贔屓のお店です。ジャルジェ家の領地はアルトワ州アラスにあり、ここは領地見回りの際のジャルジェ将軍の常宿。予約なしでも宿泊可能の気前の良さが決め手なのでしょう。お喋り好きで人の良い主人が経営しています。
カフェ・フラスカティ
上流階級では有名なカフェ。ルイ15世紀様式の猫脚の調度品が素敵です。オスカルがフェルゼンの妹ソフィアとお茶したお店です。


ジャルジェ家の人々の遺伝的要素
オスカルとその父・ジャルジェ将軍の似た部分は気が短いところなのではないでしょうか。カッとすると直ぐに手が出る、まさに感情的タイプなのです。そして遺伝的に似ているというと、視力の良さ。ジャルジェ将軍は馬車の車窓から店先で売られているフランス衛兵隊の剣を発見していますが、オスカルは薄暗い館の中に見た黒い騎士の装束を着実に再現。暗がりの中でありながらドアに挟まっていた布の切れ端を発見し、ロザリーの服の一部と断定出来る視力と洞察力は、まさに父親譲りであった事を物語るエピソードの1つなのです。


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