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ディープの挑戦 その3

2006年10月4日
2006年時点における日本競走馬の世界との差は1馬身。7月のハーツクライに続きディープイン
パクトもこの1馬身の壁を越えることは出来なかった。
レース後の談話によると、ディープの先行策は想定していた作戦のひとつとか。しかし、PINEに
は持って行かれているように見えた。掛かるというほどのものでは無いものの、鞍上の手が普段より
微妙に高く、ファイトを出しているディープを抑えるのに苦労しているように見えたのだが。3日付
けの朝日新聞に有吉記者が「アクセルとブレーキを同時に踏むような重苦しいレース」と表現してい
る。さすがは新聞記者。的を射た上手な表現だと感心し、PINEもこの記事に賛同する。
この前半のロスが直線の伸びに影響したものと思われる。他にも敗因として、斤量の59.5kgや現
地での前哨戦を走らなかったことなどが報じられている。しかし、これは戦前から厩舎スタッフの中
では折り込み済みだったはずで、今更外野がとやかく言うことではあるまい。もし関係者の中で計算
違いがあったとすれば、出走頭数が8頭になったことくらいだろう。
慣れない2〜3番手を追走した先行策についての批判もある。しかし、あの位置より後ろに下げるこ
とは不可能だったのではないか。あれ以上鞍上が引っ張れば、それこそ頭を大きく上げて折り合いを
欠いただろう。仮に後方に控えることが出来たとしても、1、2着のレイルリンク、プライドはおろ
か直線で大きな不利があったにもかかわらず、差を詰めてきたハリケーンランを捉えるだけの末脚を
繰り出すことができたかどうか。その意味では先行策は最善だったように思う。どのような乗り方を
しても今回のレースでディープは勝てなかったのでは。いや、有るとすればひとつだけ。無理に抑え
ずに馬の行く気に任せて、大きく引き離して逃げていたらどうだったであろうか。残念ながら、今に
なってそれを検証する術は無い。
ディープが前半行きたがる素振りを見せた要因を2つ挙げる。
一つ目は欧州競馬特有の緩いペース加えて、今回は少頭数になりスローな流れに拍車がかかった。も
う一つは仕上げすぎ。レース直前には、「悔いを残さないため140%の仕上げ」と関係者がコメン
トを出している。前回も書いたが、ある程度早い時期から仕上がっていたこと。にもかかわらずレー
スで思い切り走らせてもらえない馬自身のストレス。この辺が道中スムーズさを欠いた要因のひとつ
ではないだろうか。調教師の沽券にかかわるので、これが事実だとしても公になることはないであろ
うが。ただ、次なる挑戦の時には同じ轍を踏まぬように、今回の経験、情報は幅広く共有し活かして
もらいたいものだ。
敗れたとは言え3着は立派な成績である。戦前の期待の大きかった分、敗戦のショックも大きいもの
の、PINEが競馬を始めた頃の海外挑戦に比べたら著しい進歩である。80年代までの海外挑戦馬
は、おしなべて10馬身以上千切られていたわけだから。キングジョージではハーツも1馬身差の3
着に来ているのだから、決してフロックではない。あとはこの世界最高峰との差1馬身をいかに埋め
ていくか・・・。
日本の競馬場にも欧州並みの力を要する馬場を作ってみてはどうだろうか。10場で開催しているの
だから、1場くらい試験的に路盤を緩くし、洋芝を長めに生育させて競走を実施させる。速い時計の
レースばかりさせていても欧州のレースでは勝てないことが明確になったのだから。逆に日本のG1
には縁が無くても、そのような競馬場で好成績を挙げた馬を積極的に海外挑戦させる。意外にも欧州
に適応する馬が出現しなだろうか。逆の視点から観ると、ジャパンカップやその他国際競走で来日す
る名うての欧州G1ホースが次々敗退する中、日本馬場に適応する来日馬が勝利する日本馬場の特殊
性。欧州G1に通用する馬造りの一環として、将来の馬場改修の際には一考して欲しいものだ。
日本馬が世界の頂点に立つにはもうしばらく時間がかかりそうである。しかし、何とかPINEが生
にきている間に1度でいいからオールジャパンの凱旋門賞馬を見てみたい。

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