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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜
〜 時のはじまり 桜の下から 〜
〜 第三版 〜
今は春。
ここは、鎌倉。
武士の集う町。
春の花が鎌倉を彩っている。
源頼朝と正室の北条政子の長女で六歳になる“大姫”に、源義仲の嫡男の“源義高”が許婚として木曾から来ると決まった。
少し前の出来事になる。
源頼朝と源義仲の間でいざこざがあった。
平家を倒すためには、いざこざで争っていられない。
源頼朝と源義仲は、和睦を結ぶ必要がでてきた。
和睦を結ぶためには、和睦の印が必要になる。
源頼朝側は源義仲側に和睦の印として大姫と源義高の縁談を提案した。
大姫と源義高の縁談には、源氏の嫡流に当たる大姫の居る鎌倉に、源氏の傍流に当たる源義高が来る内容が含まれていた。
源義仲側には不服な和睦の印になる。
源義仲側が話し合った結論は、現状では源頼朝側の提案に従うという内容だった。
源義高は、源義仲から和睦を結ぶまでの経緯を聞いて、許婚の立場より人質の立場が強く現れていると感じた。
源頼朝と北条政子は、源義高が許婚と決まった、源義高が許婚となった経過、源義高が鎌倉に来る、などを含めて、大姫に説明していない。
源義高が鎌倉に来る日までに、大姫に状況の一部だけでも説明しなければならない。
北条政子が大姫に説明する状況になった。
ここは、小御所。
大姫の部屋。
大姫は侍女を相手に人形で楽しそうに遊んでいる。
侍女は大姫の人形で遊ぶ相手を微笑んで務めている。
北条政子が微笑んで訪れた。
大姫は人形で遊ぶのを止めると、北条政子を微笑んで見た。
侍女は人形を傍に置くと、北条政子に微笑んで軽く礼をした。
北条政子は大姫の傍に微笑んで来た。
北条政子は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫。話しがあるの。」
大姫は北条政子に微笑んで話し出す。
「はい。」
北条政子は大姫に微笑んで話し出す。
「もう少し経ったら、大姫の元にお婿様が来ます。」
大姫は北条政子に嬉しそうに話し出す。
「姫にお婿様が来るのですか?! お婿様のお名前を教えてください! お婿様は何歳の方ですか?! お婿様は鎌倉にはいつ着くのですか?! 姫とお婿様は、いつ祝言を挙げるのですか?!」
北条政子は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫。祝言を挙げるのは暫く先になるの。暫くは大姫の許婚の状況が続くわね。」
大姫は北条政子に嬉しそうに話し出す。
「お婿様についてもっと教えてください!」
北条政子は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫の許婚の名前は、源義高殿というの。源義高殿の年齢は、姫より年上の十一歳よ。」
大姫は北条政子に嬉しそうに話し出す。
「お婿様が鎌倉に着く日が待ち遠しいです!」
北条政子は大姫を微笑んで見た。
大姫は障子を笑顔で開けた。
庭には、もう少しで咲きそうな桜の木が在る。
大姫は桜の木を指すと、北条政子に嬉しそうに話し出す。
「義高様は庭の桜が咲く頃に鎌倉に着きますか?!」
北条政子は庭の桜を一瞥すると、大姫を見て、微笑んで頷いた。
大姫は桜の木に向かって嬉しそうに話し出す。
「もう少し経ったら、姫にお婿様が来ます! 楽しみです! 待ち遠しいです!」
北条政子は大姫を微笑んで見た。
それから何日か後の事。
ここは、鎌倉。
表面上は穏やかな日が続いている。
大姫は源義高の到着を嬉しそうに待つ日が続いている。
そんなある夜の事。
夜空では月も星も明るく輝いて辺りを照らしている。
ここは、小御所。
大姫の部屋。
大姫は床に横になっている。
大姫は床の上に体を起こすと、不思議そうに呟いた。
「今夜は眠くありません。不思議です。」
大姫は部屋を静かに出て行った。
それから僅かに後の事。
ここは、大姫の部屋の前に在る庭。
桜の木は月や星の光を受けながら、綺麗な花を咲かせている。
大姫は桜の木の下に静かに来た。
桜は月や星の明かりを受けながら、不思議な美しさを見せている。
大姫は桜を見ながら、微笑んで呟いた。
「綺麗です。」
澄み渡った笛の音が大姫の元に聞こえてきた。
大姫は笛の音が聞こえる方向へと静かに歩き出した。
それから僅かに後の事。
ここは、小御所。
一室の前に在る庭。
大姫は不思議そうに来た。
澄み渡った笛の音が響いている。
大姫は庭を不思議そうに見た。
一人の少年が桜の木の下で笛を吹く姿が見えた。
少年も桜も月と星の光を受けて不思議な美しさを見せている。
大姫は少年と桜を微笑んで見た。
少年は笛を吹くのを止めると、大姫を不思議そうに見た。
大姫は少年を不思議そうに見た。
少年は笛を持ちながら、大姫に静かに声を掛けた。
「誰?」
大姫は少年の傍に不思議そうに来た。
少年は笛を持ちながら、大姫を不思議そうに見た。
大姫は少年に静かに話し出す。
「桜の神様ですか?」
少年は笛を持ちながら、大姫に微笑んで静かに話し出す。
「違うよ。」
大姫は少年に微笑んで話し出す。
「姫は先程の笛の音が好きです。先程と同じ笛の音をたくさん聴きたいです。」
少年は大姫を見ながら、微笑んで笛を吹き始めた。
大姫は少年を見ながら、笛の音を微笑んで聴いた。
すると、遠くから切ない声が聞こえてきた。
「ねぇ、義高様・・・」
「あの時の義高様はとても優しかったですね・・・」
「あの時の義高様は本当に桜の神様だと想いました・・・」
「義高様とたくさん話をしながら過ごしたかった・・・」
「あの時の私はとても幼かったですね・・・」
「あの時の私が僅かでも大人だったならば・・・」
「私の未来と義高様の未来は、どのように変わっていたのでしょうか・・・?」
「桜の花を見ていると、何度も何度も考えてしまいます・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
それから暫く後の事。
ここは、鎌倉。
綺麗な青空が広がっている。
ここは、小御所。
大姫の部屋。
大姫は侍女を相手に人形で楽しそうに遊んでいる。
侍女は大姫の人形で遊ぶ相手を微笑んで務めている。
北条政子が微笑んで訪れた。
大姫は人形で遊ぶのを止めると、北条政子を微笑んで見た。
侍女は人形を傍に置くと、北条政子に微笑んで軽く礼をした。
北条政子は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫。大切な人を連れてきたの。」
大姫は北条政子を不思議そうに見た。
北条政子は部屋の外に向かって微笑んで声を掛けた。
「部屋の中にお入りください。」
一人の少年が部屋の中に普通に入ってきた。
大姫が昨夜に出逢った少年だった。
大姫は少年を不思議そうに見た。
北条政子は大姫と少年を微笑んで見た。
少年は大姫に普通の表情で話し出す。
「大姫様。初めまして。源義高と申します。宜しくお願いいたします。」
少年は大姫の許婚の源義高だった。
大姫は源義高を驚いた表情で見た。
源義高は大姫に普通に礼をした。
大姫は北条政子の後ろに隠れた。
源義高は大姫を不思議そうに見た。
北条政子も大姫を不思議そうに見た。
大姫は北条政子の背中越しに、源義高を驚いた表情で見た。
北条政子は大姫を微笑んで見た。
源義高は大姫を不思議そうに見ている。
北条政子は源義高に微笑んで話し出す。
「義高殿。恥ずかしがり屋の姫で申し訳ありません。」
源義高は北条政子に普通に話し出す。
「大姫様は突然の出来事で驚かれたと思います。私は大丈夫です。ご安心ください。」
北条政子は源義高に微笑んで話し出す。
「大姫は年齢の関係だと思いますが、幼い言動が多いです。迷惑を掛けると思いますが、仲良くしてあげてください。」
源義高は北条政子に普通の表情で礼をした。
大姫は北条政子の背中越しに、源義高を驚いた表情で見ている。
北条政子は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫。義高殿に早くご挨拶をしなさい。」
大姫は北条政子の背中越しから、源義高を驚いた表情で見ている。
北条政子は大姫に微笑んで話し出す。
「大姫。義高殿は大姫の許婚なのよ。ご挨拶をしないと失礼よ。」
大姫は北条政子の背中越しから、源義高に小さい声で話し出す。
「義高様。初めまして。大姫です。」
源義高は大姫に普通の表情で礼をした。
大姫は北条政子の背中越しから、源義高を不思議そうに見た。
北条政子は大姫と源義高を微笑んで見た。
綺麗な青空は、大姫と源義高を見守るように鎌倉に広がっているように感じる。
小御所の庭の桜の木は、大姫と源義高を見守るように綺麗な花を咲かせているように感じる。
すると、遠くから切ない声が聞こえてきた。
「ねぇ、義高様・・・」
「あの時は、義高様の姿を見て直ぐに、とても恥ずかしくなってしまいました・・・」
「恥ずかしさのために、義高様と話しが出来ませんでした・・・」
「あの時に恥ずかしくなったのは、義高様が桜の神様だったから・・・」
「あの時の義高様は怒っていたのですか・・・?」
「それとも、呆れていたのですか・・・?」
「ねぇ、義高様・・・」
大姫と源義高の初めての出逢いは、月明かりの下で綺麗な花を咲かせる桜の木の下。
お互いを知らずに出逢った。
少しだけ早い出逢い。
大姫と源義高の永くて短い時が動き始めた・・・
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は以前に掲載していた物語の再改訂版です。
改訂前の物語を掲載するのを止めました。
以上の点、ご了承願います。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正しながら書いていきます。
源頼朝と北条政子の嫡女で長女の“大姫”。
源義仲の嫡男の“源義高”。
大姫も源義高も余り知られていません。
大姫と源義高に関する資料も少なく、主人公になる事も少ないです。
そのような状況ではありますが、大姫と源義高が主人公の物語があります。
大姫と源義高の出来事は、過去から語られてきた事になります。
源頼朝と源義仲(木曾義仲)の両者の利害関係などから、源義高(木曾義高)が木曾から許婚と人質の両面を持って鎌倉に来ます。
年を越えて間もない頃に、源義仲が鎌倉側に討たれて亡くなります。
源義高の危うい立場が更に危うくなっていきます。
大姫と源義高が逢ってから約一年後の初夏の頃に、源義高は源頼朝の命令により討たれて亡くなります。
大姫と源義高の関係も終わりを迎えました。
そのような状況から、大姫と源義高の関係は悲恋として物語などで伝えられています。
大姫と源義高の物語の第一作目は、出逢いの物語を書く事にしました。
源義高が鎌倉に来た時は、大姫は六歳、源義高は十一歳という説があります。
大姫と源義高の年齢は、この説を使用しました。
大姫と源義高が逢ったのは、春の頃と言われています。
満開の桜が咲いていない可能性があります。
満開の桜の下で出逢う大姫と源義高の物語を書きたくて、このような設定にしました。
この物語以降は順番に展開していません。
その点もご了承願います。
ちなみに、大姫と源義高は、源義経の親戚になります。
源義経が生きている間と一部だけ重なって、大姫も源義高も生きていました。
源義経は、物語の設定時期より後になりますが、大姫と源義高の生活に関係してきます。
その事によって大姫と源義高の生活は急展開をしていきます。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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