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~ 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 ~
~ 文紡ぎ 応鐘 時雨の常か我が背子が宿の黄葉 ~
登場人物
松姫[武田信玄の五女]、織田信忠(幼名:奇妙丸)[織田信長の嫡男](文だけの登場)、
菊姫[武田信玄の四女]
「十月 時雨の常か 我が背子が 宿の黄葉 散りぬべく見ゆ」
「万葉集 第十九巻 四二五九番」より
作者:大伴家持(おおとものやかもち)
松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、八十四の月になっている。
暦は十月になっている。
季節は初冬になっている。
昨年の四月、菊姫と松姫の父の武田信玄が亡くなった。
武田信玄の遺言により、武田信玄の死は三年隠すと決まった。
様々な思惑が複雑に絡まる中の初冬になる。
ここは、甲斐の国。
日中は、肌寒さを感じる時はあるが、過ごしやすい日が続いている。
早朝や陽の沈んだ後は、寒さを感じる時がある。
少しずつ紅色や黄色などに色付く葉が増えている。
冬の気配が少しずつ増えていく。
ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。
松姫の部屋。
松姫は普通に居る。
菊姫は部屋の中に微笑んで入ってきた。
菊姫は松姫の耳元で微笑んで囁いた。
「お松。準備は出来た?」
松姫は菊姫の耳元で微笑んで囁いた。
「はい。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫も菊姫を微笑んで見た。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。行きたい所が在るの。一緒に行く?」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。早く行きたいの。直ぐに準備を始めて欲しいの。良いかしら?」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫も菊姫を微笑んで見た。
暫く後の事。
ここは、松姫の乳母の家。
一室。
商品が広げてある。
菊姫は微笑んで居る。
松姫も微笑んで居る。
商人は普通に居る。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。素敵な商品がたくさんあるわね。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
菊姫は商人に微笑んで頷いた。
商人は菊姫と松姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は商人を微笑んで見た。
菊姫は松姫と商人を微笑んで見た。
商人は懐から小さい紙を取り出すと、松姫に小さい紙を普通に渡した。
松姫は商人から小さい紙を微笑んで受け取った。
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫は小さい紙を持ち、小さい紙を丁寧に広げた。
菊姫は松姫を微笑んで見た。
小さい紙には、織田信忠の筆跡で歌が書いてある。
十月 時雨の常か 我が背子が 宿の黄葉 散りぬべく見ゆ
松姫は小さい紙を持ち、商人を微笑んで見た。
菊姫は商人を微笑んで見た。
商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「警戒は今も強いです。奇妙殿が頼んだ状況を信じて頂くために、奇妙殿が自筆で歌を書きました。奇妙殿から伝言を預かっています。」
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「伝言を教えてください。お願いします。」
商人は松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「お松。様々な出来事が起きている。お松にとって悪い内容の出来事があると思う。お松にとって穏やかな初冬を願う日が続く。私は元気に過ごしている。安心してくれ。色付く葉の増える季節になっている。昨日、時雨が降った。お松の歌の贈り物に、十月、時雨、色付く葉、全てに因む歌を贈りたいと思った。お松を想いながら、贈り物に相応しい歌を考えた。十月も時雨も色付く葉も詠んだ歌を思い出した。お松への歌の贈り物に決めた。贈り物の歌を受け取ってくれ。寒さを感じる時間が増えると思う。時雨に当たらないように気を付けて過ごしてくれ。綺麗に色付く葉を見られるように祈っている。お松が無事に過ごせるように祈っている。無理をせずに過ごしてくれ。命を大切に過ごしてくれ。奇妙より。」
菊姫は松姫と商人に微笑んで話し出す。
「長い伝言が続くわね。お松を想う気持ちが伝わるわ。」
商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を持ち、菊姫を微笑んで見た。
菊姫は商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「気遣い感謝しています。」
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「今回の伝言も長いです。覚える行為が、更に大変だと思います。私への気遣いも含めて、何時も感謝しています。ありがとうございます。」
商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「奇妙様からはたくさんの恩を受けています。姫様は奇妙様の想い人です。私に出来る言動で感謝の気持ちを伝えています。」
菊姫は商人を微笑んで見た。
松姫も商人を微笑んで見た。
商人は松姫と菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「私からの返事を奇妙様に伝えてください。願いします。」
商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「元気に過ごされているのですね。安心しました。私も元気に過ごしています。安心してお過ごしください。十月、時雨、色付く葉、全てを詠んだ歌の贈り物。ありがとうございます。姉上と共に、綺麗に色付く葉を探して、綺麗に色付く葉を見ます。奇妙様を想いながら、綺麗に色付く葉を見ます。時雨に当たらないように気を付けます。奇妙様も無理をせずに気を付けてお過ごしください。奇妙様も命を大切にお過ごしください。松より。」
商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人に恥ずかしく小さい声で話し出す。
「今回も長い返事になりました。」
商人は松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「想いの伝わるお返事です。長いお返事に感じません。奇妙様に一言も間違えずにお伝えします。ご安心ください。」
菊姫は松姫に微笑んで小さい声で話し出す。
「お松。良かったわね。」
松姫は小さい紙を持ち、菊姫に微笑んで小さい声で話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人を微笑んで見た。
商人は菊姫と松姫を普通の表情で見た。
部屋の外から、雨の降る音が聞こえた。
菊姫は障子を半分ほど微笑んで静かに開けた。
菊姫は部屋の外を微笑んで見た。
松姫は小さい紙を懐に仕舞うと、部屋の外を微笑んで見た。
時雨が降っている。
商人は菊姫と松姫を普通の表情で見た。
菊姫は松姫を見ると、松姫に微笑んで静かに話し出す。
「時雨が降っているわね。」
松姫は菊姫を見ると、菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫と時雨を微笑んで見た。
松姫も菊姫と時雨を微笑んで見た。
菊姫は松姫と時雨を見ながら、松姫に微笑んで静かに話し出す。
「お松。時雨が止むまで、館に戻るのは止めましょう。」
松姫は菊姫と時雨を見ながら、菊姫に微笑んで静かに話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
菊姫は障子を微笑んで静かに閉めた。
松姫は商人に微笑んで静かに話し出す。
「奇妙様への伝言。追加しても良いですか?」
商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は商人に微笑んで静かに話し出す。
「今、姉上と共に、時雨を見ました。時雨を見ながら、心の中で、奇妙様から頂いた贈り物の歌を詠みました。時雨が止んでから家に帰ります。」
商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。
菊姫は松姫と商人を微笑んで見た。
商人は菊姫と松姫を普通の表情で見た。
菊姫は商品を持つと、商人に微笑んで話し出す。
「素敵な商品ね。購入するわ。」
商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を懐に微笑んで仕舞った。
菊姫は商品を持ち、松姫を微笑んで見た。
松姫は商品を持つと、商人に微笑んで話し出す。
「素敵な商品です。購入します。お願いします。」
商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。
菊姫は商品を持ち、松姫と商人を微笑んで見た。
松姫も商品を持ち、菊姫と商人を微笑んで見た。
商人は菊姫と松姫に普通の表情で軽く礼をした。
数日後の事。
ここは、躑躅ヶ崎館。
一室。
一室の中から、一人の男性の声と菊姫の声が聞こえる。
「報告は終わりか?」
「はい。」
「今後も報告を頼む。」
「はい。」
「お菊。お松が縁談の話を承諾する気持ちにならないのか? お松の心変わりを早める方法は無いのか?」
「お松は、父上も母上も、慕い尊敬しています。父上が縁談を決めて、父上からお松に伝えた縁談です。父上も母上も、想い続ける気持ちが、武田家のためになると話しました。父上はお松に縁談の破棄を話していません。お松にとって、新たな縁談の話を承諾できない気持ちが続いています。無理矢理に心変わりを起こす方法は、お松が落ち込むか、お松が頑なになります。」
「織田家が、昨月、伊勢長島一向一揆の討伐を行った。お松の言動に変化の現れる可能性がある。お松の言動に更に気を付けて欲しい。」
「お松が疑念を抱くと、織田家に味方する可能性が有ります。別な意味で危険です。お松の言動に引き続き注意しますが、お松に明らかに分かる状況は避けたいです。」
「分かった。お松が疑わない程度に、お松の言動への注意を少し強めてくれ。」
「分かりました。」
翌日の事。
ここは、甲斐の国。
時雨が降っている。
ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。
菊姫の部屋。
障子が半分ほど空いている。
菊姫は黄葉を持ち、時雨を微笑んで見ている。
松姫も黄葉を持ち、時雨を微笑んで見ている。
菊姫は黄葉を持ち、時雨を見ながら、微笑んで呟いた。
「“十月 時雨の常か 我が背子が 宿の黄葉 散りぬべく見ゆ”。」
松姫は黄葉を持ち、菊姫を微笑んで見た。
菊姫は黄葉を持ち、松姫を見ると、松姫に微笑んで話し出す。
「十月。時雨。黄葉。全てを詠んだ歌を思い出したの。お松。良い機会だから、歌の勉強をしましょう。今の歌を詠んで。」
松姫は黄葉を持ち、菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は黄葉を持ち、松姫を微笑んで見た。
松姫は黄葉を持ち、菊姫と時雨を見て、菊姫に微笑んで話し出す。
「“十月 時雨の常か 我が背子が 宿の黄葉 散りぬべく見ゆ”。」
菊姫は黄葉を持ち、松姫と時雨を見て、微笑んで話し出す。
「お松。合っているわ。」
松姫は黄葉を持ち、菊姫と時雨を微笑んで見た。
菊姫も黄葉を持ち、松姫と時雨を微笑んで見た。
「十月 時雨の常か 我が背子が 宿の黄葉 散りぬべく見ゆ」
初冬になり、肌寒さを感じる時間が増えている。
初冬も様々な思惑の中で時が過ぎていく。
松姫と織田信忠は、時雨や黄葉を見ながら、想いを紡いでいる。
初冬は、強い想いの中で、様々な思惑の中で、ゆっくりと過ぎていく。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「万葉集 第十九巻 四二五九番」
「十月 時雨の常か 我が背子が 宿の黄葉 散りぬべく見ゆ」
作者は「大伴家持(おおとものやかもち)」
ひらがなの読み方は「かむなづき しぐれのつねか わがせこが やどのもみちば ちりぬべくみゆ」
歌の意味は「十月(かむなづき)の時雨(しぐれ)の常なのでしょうか。あなたのお宅の黄葉(もみちば)が散りそうですね。」となるそうです。
原文は「十月 之具礼能常可 吾世古河 屋戸乃黄葉 可落所見」
天平勝宝三年十月二十二日(751年11月14日)に詠まれた歌で、この歌の左注には、梨(なし)が色づいたのを見て詠んだ歌とあります。
武田家についての補足です。
油川夫人は、元亀二年(1571年)(※月日は不明)に亡くなったそうです。
武田信玄は、元亀四年四月十二日(1573年5月13日)に信濃の駒場で亡くなります。
享年は、五十三歳と伝わっています。
武田信玄の死因は、肺結核、胃癌、食道癌、などの説が有力です。
武田信玄の他の死因には、武田信玄は敵が籠城中の野田城から聞こえる笛の音に惹かれて本陣から出て行き、本陣の外に居る時に鉄砲で撃たれて、その傷がもとで亡くなる、があります。(掲載日現在は、この説は俗説として考えられています。)
更に武田信玄の他の死因には、織田家の毒殺、もあります。(掲載日現在は、この説も俗説として考えられています。)
武田信玄は、武田勝頼と重臣に遺言を残したと伝わっています。
三つの遺言の内容が広く知られています。
800枚の白紙に武田信玄の花押を書いたから返礼などの時に使うように。
武田信玄の死を三年隠すように。
三年後に、武田信玄の死体に甲冑を着せて諏訪湖に沈めるように。
遺言の内容が事実だとすると、武田信玄は以前から亡くなる事を分かっていて、甲斐の国を守るために前から考えていた事が分かります。
武田信玄の葬儀は、天正四年(1576年)四月に行われたそうです。
武田信玄の死が三年隠せたかについてですが、三年より前に人数等は不明ですが、気付かれた形跡があるようです。
当時は忍者などを使った情報戦が激しかった事があり、武田信玄の死が知られてしまった可能性はあります。
後の出来事になりますが、松姫は織田信忠と婚約している経過などから、辛い立場になっていったようです。
天正元年(1573年)の秋に、武田盛信が松姫を引き取って暮らすようになります。
「雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編」では、物語の展開から、秋より後の季節では、武田盛信が松姫を引き取って暮らす設定にします。
ご了承ください。
松姫と織田信忠の縁談が、破談なのか、続いているのか、分からなくなってしまった理由の一つに、「西上作戦(さいじょうさくせん)」があります。
西上作戦は、甲斐武田家が、元亀三年(1572年)九月から元亀四年(1573年)四月に掛けて行った遠征をいいます。
西上作戦は、武田信玄の体調と武田信玄の死によって終わった状況になります。
武田勝頼について、天正二年(1574年)六月の高天神城の攻略に関する話があります。
高天神城は、武田信玄が大軍を率いても落城できませんでした。
武田勝頼は高天神城を攻略した頃から、過信などの意見を聞かないようになったそうです。
理由は二つの説が考えられています。
一つの説、自信過剰になった。
一つの説、父親の武田信玄に勝る武略を持っている実績を示せた事から、家臣の統制を強めた。
以上の二つの説が有ります。
武田軍の関連についてです。
天正二年(1574年)十月についてです。
大きな動きはありません。
織田家関連について簡単に説明します。
織田信忠(幼名“奇妙丸”)の元服は、元亀三年(1572年)と伝わっています。
織田信忠は、実弟の「茶筅丸(ちゃせんまる)(織田信雄[おだのぶかつ])」、実弟の「三七丸(神戸三七郎信孝[かんべさんしちろうのぶたか]、織田信孝[おだのぶたか])」、と共に元服したと伝わっています。
元亀三年(1572年)一月に元服した説があります。
織田信忠が元服時に改名した名前は「織田勘九郎信重(おだかんくろうのぶしげ)」です。
「織田信忠」と改名するのは後の出来事になりますが、名前が幾度も変わると分かり難くなるため、元服後の名前は「織田信忠」で統一します。
ご了承ください。
織田信忠の初陣は、元亀三年(1572年)と伝わっています。
織田信忠の「具足初め(ぐそくはじめ)の儀」が、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)に執り行われたと伝わっています。
織田信忠の初陣は、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)、または、直ぐ後の日付になるようです。
織田信忠の初陣の相手は「北近江」の「浅井家」の「浅井長政」です。
浅井長政の継室は、織田信長の妹の「お市の方」です。
織田信忠の初陣の相手は、父親(織田信長)の妹(お市の方)の嫁ぎ先になります。
織田信忠にとって、初陣の次の大きな戦は、元亀三年(1572年)十二月頃の遠江の二俣城の戦いや三方ヶ原の戦いになります。
天正二年(1574年)ら九月から十月の織田家の動きを簡単に説明します。
天正二年九月二十九日(1574年10月13日)、伊勢長島一向一揆の討伐に勝利します。
伊勢長島一向一揆の宗徒は、長島を退散したそうです。
激戦と伝わっています。
十月には、大きな動きはありません。
「初冬」についてです。
「しょとう」と読むと、「冬の初め。」(←冬の季語)、「陰暦十月の異称。孟冬(もうとう)」、の意味です。
「はつふゆ」と読むと、「冬の初め。陰暦十月の異称。」(←冬の季語)の意味です。
「応鐘(おうしょう)」についてです。
「中国音楽の十二律の一。基音の黄鐘(こうしょう)より二律高い音。日本の十二律の上無(かみむ)にあたる。」
「陰暦十月の異称」
以上の二つの意味が有ります。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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