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新撰組異聞外伝 〜 大暑の頃 〜


〜 改訂版 〜


はじめに。

今回の物語は、後書きまで含めると、原稿用紙で約40枚になります。

当サイトでは本来だと中編として掲載します。

今回の物語は、藤田五郎さんと敬一君が登場する他の短編の物語と関係があるため、短編のまま掲載する事にしました。

以上の点、ご了承ください。


では、物語の世界へどうぞ。




*      *      *      *      *      *




今は夏。


ここは、東京の町。


暑い日が続いている。


ここは、藤田五郎、妻の時尾、幼い息子の勉の住む家。


藤田五郎の部屋。


藤田五郎と沖田総司の息子の敬一が居る。


藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一は海や遠くに出掛けた経験はあるか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕とお母さんは、ずっと京都に住んでいました。お母さんは仕事をしています。不慣れな場所でもしもの出来事が起きると困ります。いろいろな理由で遠出の経験はありませんでした。海を見て遠出をした初めての経験は、東京に向かう時になります。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「一緒に海に行くか?」

敬一は藤田五郎に嬉しそうに話し出す。

「一緒に海に出掛けられるのですか?!」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「せっかくの良い機会だから、泊りで海へ行く。」

敬一は藤田五郎に不思議そうに話し出す。

「時尾さんや勉君も一緒に泊まりで海に出掛けるのですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「勉と時尾は出掛けない。俺と敬一の二人で出掛ける。」

敬一は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「時尾さんと勉君に悪いです。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「時尾は、自分や勉を気にせずに、敬一に楽しい経験をして欲しいと話していた。細かい心配はするな。」

敬一は藤田五郎に心配そうに話し出す。

「仕事を休んでも大丈夫なのですか?」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「美鈴さんと敬一の頼みでも、都合が付かない時や嫌なら断る。細かい心配はするな。」

敬一は藤田五郎に寂しそうに話し出す。

「僕が旅行に行ったら、お母さんが一人になります。お母さんは寂しいと思います。お母さんが仕事をしているのに、僕だけ旅行に行けません。今回の話しは遠慮させてください。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「今回の海へ行く話しは、美鈴さんから相談を受けて、俺が泊まりで海に行く提案をした。美鈴さんは既に了承済だ。」

敬一は考え込む仕草を見せた。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕からお母さんに確認を取ります。返事は別な日で良いですか?」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を微笑んで見た。


それから何日か後の事。


ここは、東京の町。


時間が少し早いため、日中より静けさに包まれている。


ここは、敬一と母親の美鈴の住む家。


敬一の部屋。


敬一と美鈴は、一緒に居る。


敬一は美鈴に嬉しそうに話し出す。

「お母さん! お土産は何が良い?!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お母さんに気を遣わなくて良いのよ。敬一は、楽しんで無事に帰るのと、斉藤さんに迷惑を掛けないように、気を付けて旅行をしなさい。」

敬一は美鈴に苦笑しながら話し出す。

「お母さんはいつも同じ頼みや願いばかりしているね。」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一が元気で無事に過ごす姿を見るのが楽しみなの。」

敬一は美鈴を僅かに寂しそうに見た。

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「お土産に欲しい物を思い出したわ。貝殻が欲しいわ。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「分かった! 貝殻だね! 楽しみに待っていてね!」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。


玄関から藤田五郎が訪ねてきた音が聞こえてきた。


敬一は荷物を持つと、美鈴に笑顔で話し出す。

「斉藤さんが来た!」

美鈴は敬一に微笑んで頷いた。


敬一は荷物を持ちながら、玄関へと元気良く歩き出した。

美鈴は玄関へと微笑んで歩き出した。


それから僅かに後の事。


ここは、玄関。


敬一は荷物を持ちながら、元気良く来た。

美鈴は微笑んで来た。


藤田五郎は荷物を足元に置くと、敬一と美鈴を普通の表情で見た。


敬一は荷物を足元に置くと、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! おはようございます!」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「おはようございます。」

藤田五郎は敬一と美鈴に普通の表情で頷いた。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一をよろしくお願いします。」

藤田五郎は美鈴に普通の表情で頷いた。

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「行ってきます!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。

藤田五郎は普通の表情で荷物を持った。

敬一は笑顔で荷物を持った。


藤田五郎は荷物を持ちながら、普通に家を出て行った。

敬一は荷物を持ちながら、笑顔で家を出て行った。


それから少し後の事。


ここは、東京の町。


藤田五郎と敬一は、荷物を持ちながら歩いている。


藤田五郎は荷物を持ちながら、敬一に普通に話し出す。

「今回の旅行の間は、面倒を避けるために、俺と敬一は親子という設定にする。」

敬一は荷物を持ちながら、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はい! お父さん!」

藤田五郎は荷物を持ちながら、敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は荷物を持ちながら、藤田五郎を笑顔で見た。


それから少し後の事。


ここは、陸蒸気の中。


陸蒸気の外の景色は、勢い良く流れていく。


藤田五郎と敬一は、隣り合って座っている。


敬一は陸蒸気の外の景色を笑顔で見ている。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。


敬一は藤田五郎を見ると、笑顔で話し出す。

「お父さん! 景色が早く動いているよ! とても面白いね!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は陸蒸気の外の景色を笑顔で見た。

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。食事にしよう。」

敬一は藤田五郎を見ると、笑顔で話し出す。

「はい!」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は荷物から包みを笑顔で取り出した。

藤田五郎は荷物から包みを普通の表情で取り出した。

敬一は包みを広げると、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

藤田五郎は包みを広げながら、敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は包みからおにぎりを手に取ると、美味しそうに食べ始めた。

藤田五郎は包みからおにぎりを手に取ると、普通の表情で食べ始めた。


それから暫く後の事。


ここは、鎌倉。


一軒の宿。


宿の中。


藤田五郎と敬一は、一緒に歩いている。


仲居が藤田五郎と敬一の前に微笑んで来た。


藤田五郎は仲居を普通の表情で見た。

敬一は仲居を笑顔で見た。

仲居は敬一に微笑んで話し出す。

「お父さんと二人での旅行なの?」

敬一は仲居に笑顔で話し出す。

「はい!」

仲居は敬一を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一と仲居を普通の表情で見た。


仲居は藤田五郎と敬一に軽く礼をすると、微笑んで居なくなった。


それから少し後の事。


ここは、宿。


宿に在る一室。


藤田五郎と敬一は、くつろいで過ごしている。


藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一。今夜は明日に備えて早く寝よう。」

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「せっかく鎌倉に来たから、早く寝るのがもったいない気がするんだ! もう少し起きていても良いかな?!」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「明日に影響の出ないように気を付けろよ。」

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お父さん! ありがとう! 明日に影響のないように気を付けるね!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を笑顔で見た。


その日の夜の事。


ここは、宿に在る一室。


部屋の中は暗さに包まれている。


敬一は床の中でぐっすりと眠っている。

藤田五郎は床に横になりながら、敬一を普通の表情で見ている。


部屋の中がほのかな明かりに包まれた。


敬一は床の中でぐっすりと眠り続けている。

藤田五郎は床の上に体を起こすと、部屋の中を普通の表情で見回した。


沖田総司が寂しそうな表情で、敬一の傍に静かに現れた。


藤田五郎は床の上に体を起こしながら、沖田総司を普通の表情で見た。

敬一は床の中でぐっすりと眠っている。

沖田総司は藤田五郎に寂しそうに話し出す。

「敬一にお父さんと呼んでもらえる斉藤さんが羨ましいです。」

藤田五郎は床の上に体を起こしながら、沖田総司に普通に話し出す。

「二人の関係を正しく話すと面倒だから、親子という関係にしただけだ。俺と敬一が似ていなくても、敬一は性格も良くて明るいから誰も怪しまない。話しを戻すが、敬一は総司をお父さんと何度も呼んでいるだろ。寂しさや羨ましさを抱く必要はないだろ。」

沖田総司は藤田五郎を寂しそうな微笑みで見た。

藤田五郎は床から起き上がると、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は敬一を寂しそうな微笑みで見た。


部屋の中が不思議な空気に包まれた。


藤田五郎は部屋の中を普通の表情で見回した。


見慣れない一人の女の子が、微笑みながら、敬一の傍に静かに現れた。

見慣れない二人の男の子も、微笑みながら、敬一に傍に静かに現れた。


藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は床の中でぐっすりと寝ている。

藤田五郎は沖田総司を見ると、普通に話し出す。

「人数が増えているな。」

沖田総司は藤田五郎を見ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さんに紹介します。大姫ちゃんと源義高君と海野小太郎幸氏君です。」

大姫は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「はじめまして! 大姫と言います! 源頼朝と北条政子の娘です! よろしくお願いします!」

源義高は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はじめまして。源義高です。木曾義仲の息子です。よろしくお願いします。」

海野小太郎幸氏は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「はじめまして。海野小太郎幸氏と申します。義高様に仕えています。沖田様から斉藤様の話しをたくさん伺いました。お会い出来て嬉しいです。」

藤田五郎は、沖田総司、大姫、源義高、海野小太郎幸氏を、普通の表情で見た。

沖田総司は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「三人は鎌倉や木曾に良く居るそうです。三人と話している内に親しくなりました。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「源義高は、敬一と同じくらいの年齢で亡くなったと聞いた。」

源義高は藤田五郎に寂しそうに話し出す。

「はい。身に危険が迫ったので、大姫と小太郎を鎌倉に残して逃げました。逃げている途中に捕まって亡くなりました。」

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「二人は似ているな。」

海野小太郎幸氏は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「義高様は、大姫様には許婚としてしっかりと接していました。大姫様を泣かせたり困らせたりしていません。」

沖田総司は海野小太郎幸氏を苦笑しながら見た。

大姫は源義高を見ると、笑顔で話し出す。

「今は義高様と小太郎殿とたくさん一緒に過ごしています!」

源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様。義高様。そろそろ戻る時間のようです。」

大姫は沖田総司と藤田五郎に微笑んで話し出す。

「今夜は話しが出来て楽しかったです。みんなで話しが出来る時を楽しみにしています。」

源義高は沖田総司と藤田五郎に普通の表情で軽く礼をした。

海野小太郎幸氏は沖田総司と藤田五郎に微笑んで軽く礼をした。

藤田五郎は、大姫、源義高、海野小太郎幸氏に、普通の表情で頷いた。

沖田総司は、大姫、源義高、海野小太郎幸氏を微笑んで見た。


大姫は笑顔のまま、静かに居なくなった。

源義高は普通の表情のまま、静かに居なくなった。

海野小太郎幸氏は微笑んだ表情のまま、静かに居なくなった。


藤田五郎は沖田総司を見ると、普通に話し出す。

「総司。更に知り合いが増えたな。」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「確かに知り合いが増えています。三人共に可愛いけれどしっかりとしています。一緒に居ると楽しいです。」

藤田五郎は敬一を見ると、沖田総司に普通に話し出す。

「敬一は少し前まで起きていた出来事を何も知らないんだな。」

沖田総司は敬一を見ると、藤田五郎に寂しそうに話し出す。

「敬一は我がままを言わない子です。鈴を気遣って出掛けようとは言いますが、自分の好きな場所に出掛けたいとほとんど言いません。敬一には、いろいろな場所に出掛けて、いろいろな体験をして欲しいです。私が生きていたら・・・」

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は話しを途中で止めると、藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「斉藤さんに頼むのは筋違いを承知でお願いします。敬一の思い出や笑顔を作るのに協力してください。よろしくお願いします。」

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は藤田五郎を微笑んで見た。

藤田五郎は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは一人で家に居る。美鈴さんにも総司の姿は見えないが、今夜は傍に居てやれ。」

沖田総司は藤田五郎に微笑んで頷いた。

藤田五郎は沖田総司に普通の表情で頷いた。


沖田総司は微笑んだ表情のまま、静かに居なくなった。


部屋の中の明るさも雰囲気も少し前の状態に戻った。


敬一が眠そうにしながら、床の上に体を起こした。

藤田五郎は敬一に普通の表情で話し出す。

「何かあったのか?」

敬一は床の上に体を起こしながら、藤田五郎に眠そうに話し出す。

「夢を見ていたような、夢を見ていないような、不思議な感じがします。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「明日も早い。しっかりと寝ておけ。」

敬一は床の上に体を起こしながら、眠そうに頷いた。

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は床に横になると、直ぐに眠りに着いた。

藤田五郎は床に横になると、直ぐに目を閉じた。


その翌日の事。


ここは、由比ガ浜。


見渡す限りの青空が広がっている。


寄せては引く波が砂浜を濡らしている。


藤田五郎と敬一は、たくさんの人達に混じって砂浜に居る。


敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「潮の香りがはっきりとするね! 寄せては引く波の様子を見るのは楽しいね!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「青空が綺麗だね! 海が眩しいくらいに輝いていて綺麗だね!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「由比ガ浜には、たくさん人が訪れるんだね! みんな綺麗だと思っているよね!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎の手を取ると、笑顔で話し出す。

「もう少し波に近づこうよ!」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「更に近づいたら濡れるぞ。」

敬一は藤田五郎の手を握りながら、笑顔で話し出す。

「気を付ければ大丈夫だよ!」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎の手を引きながら、笑顔で歩き出そうとした。


敬一の足元に綺麗な色の貝殻が見えた。


敬一は藤田五郎の手を握りながら、足元の綺麗な色の貝殻を笑顔で見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎の手を放すと、笑顔でしゃがみ込んだ。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一はしゃがみ込みながら、綺麗な色の貝殻を笑顔で取った。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は綺麗な色の貝殻を持ちながら、笑顔で立ち上がった。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。

敬一は綺麗な色の貝殻を丁寧に仕舞うと、藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お父さん! 段葛を歩いて鶴岡八幡宮に行こうよ!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お父さん! 手を繋いで段葛を歩きたいな!」

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎に恥ずかしそうに話し出す。

「幼い子供ではないから、男同士で手を繋ぐのは恥ずかしいよね。」

藤田五郎は敬一に普通の表情で手を差し出した。

敬一は藤田五郎の手を笑顔で取った。


敬一は藤田五郎の手を握りながら、段葛へと向かって笑顔で歩き出した。

藤田五郎は敬一の手を握りながら、段葛へと向かって普通の表情で歩き出した。


それから少し後の事。


鶴岡八幡宮。


境内。


敬一は笑顔で到着した。

藤田五郎は普通の表情で到着した。


敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「舞殿が見えるね! 舞殿は、静御前がしずやしずと詠いながら踊った場所だよね!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「舞殿の近くに在るのが大銀杏だよね! 大銀杏は本当に大きいね!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を笑顔で見た。


敬一は本宮へと続く階段を笑顔で上り始めた。

藤田五郎は本宮へと続く階段を普通の表情で上り始めた。


それから僅かに後の事。


ここは、本宮。


敬一は真剣な表情でお参りを始めた。

藤田五郎は敬一を一瞥しながら、普通の表情でお参りを始めた。


その日の夜の事。


ここは、鎌倉。


月とたくさんの星が輝いている。


ここは、由比ガ浜。


月とたくさんの星の光が砂浜を照らしている。


寄せては引く波の音が響いている。


藤田五郎と敬一は、一緒に砂浜を歩いている。


敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「お父さん! 暗いけれど波の音がはっきりと聞こえるから不思議な感じがするね!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に寂しそうに話し出す。

「明日は東京に帰る日だね。とても早く時間が過ぎた感じがするね。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「寂しいのか?」

敬一は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「僕はお父さんが傍に居るから寂しくないよ。でも、お母さんは一人で家に居るから寂しいと思うんだ。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「美鈴さんは敬一に楽しんでもらいたくて、俺に敬一との旅行を頼んだ。敬一が楽しめなければ、美鈴さんが寂しい思いをする。敬一が笑顔をたくさん見せれば、美鈴さんは喜ぶ。」

敬一は藤田五郎に微笑んで頷いた。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎の手を握ると、小さい声で話し出す。

「お父さん。」


寄せては引く波の音が、敬一の話しを聞き取り難くした。


藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎の手を握りながら、微笑んで話し出す。

「今の話しは気にしないで。」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。
「今は悩まずに楽しんで過ごせ。」

敬一は藤田五郎の手を握りながら、明るく話し出す。

「はい!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。


敬一は藤田五郎の手を握りながら、宿へと向かって笑顔で歩き出した。

藤田五郎は敬一の手を握りながら、宿へと向かって普通の表情で歩き出した。


その翌日の事。


ここは、陸蒸気の中。


陸蒸気の外の景色は勢い良く流れている。


藤田五郎と敬一は、隣り合って席に座っている。


敬一は陸蒸気の外の流れる景色を笑顔で見ている。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見ている。


敬一は藤田五郎にもたれ掛かると、ゆっくりと目を閉じた。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

敬一は藤田五郎にもたれ掛かりながら寝ている。

藤田五郎は敬一が寝やすいように、体勢を僅かに動かした。


それから暫く後の事。


ここは、東京の町。


敬一と美鈴の住む家。


玄関。


敬一は荷物を持ちながら、笑顔で帰ってきた。

藤田五郎は荷物を持ちながら、普通の表情で来た。


美鈴は藤田五郎と敬一の前に微笑んで現れた。


敬一は荷物を足元に置くと、美鈴に笑顔で話し出す。

「お母さん! ただいま!」

美鈴は敬一に微笑んで話し出す。

「敬一。お帰りなさい。」

敬一は美鈴に笑顔で話し出す。

「とても楽しかったよ!」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

藤田五郎は荷物を足元に置くと、敬一と美鈴を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一がいろいろと迷惑を掛けたと思います。」

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「敬一は迷惑を掛けていない。安心してくれ。」

敬一は藤田五郎と美鈴に笑顔で話し出す。

「斉藤さんと一緒に出掛けられてとても楽しかったよ!」

美鈴は敬一を微笑んで見た。

藤田五郎は敬一を普通の表情で見た。

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「いつも本当にありがとうございます。家に上がって休んでください。」

藤田五郎は美鈴に普通に話し出す。

「俺は疲れていないが、敬一は疲れていると思う。」

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「僕も疲れていないよ!」

藤田五郎は敬一に普通に話し出す。

「敬一は、美鈴さんに旅行中の話しをして、荷物の片付けもしなければならない。俺と話す時間は、美鈴さんのために使え。」

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「分かりました!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! とても楽しかったです! 本当にありがとうございました!」

藤田五郎は敬一に普通の表情で頷いた。

藤田五郎は足元の荷物を持つと、美鈴と敬一に普通に話し出す。

「失礼する。」

美鈴は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「気を付けてお帰りください。」

藤田五郎は荷物を持ちながら、美鈴に普通の表情で頷いた。

敬一は藤田五郎を笑顔で見た。


藤田五郎は荷物を持ちながら、普通に帰っていった。


それから少し後の事。


ここは、敬一の部屋。


敬一と美鈴が居る。


敬一は荷物から綺麗な色の貝殻を笑顔で取り出した。

美鈴は敬一を微笑んで見た。

敬一は美鈴に綺麗な色の貝殻を差し出すと、笑顔で話し出す。

「お母さん! 由比ガ浜で見付けた貝だよ! 綺麗な色だからお土産にしようと決めたんだ!」

美鈴は敬一から綺麗に色をした貝殻を受け取ると、微笑んで話し出す。

「敬一。綺麗な色の貝殻のお土産をありがとう。大切にするわ。」

敬一は美鈴を笑顔で見た。


それから少し後の事。


ここは、藤田五郎の家。


玄関。


藤田五郎が荷物を持ちながら、普通の表情で帰ってきた。


時尾は藤田五郎の前に微笑んで現れた。


藤田五郎は足元に荷物を置くと、時尾を普通の表情で見た。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「おかえりなさいませ。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「敬一君は喜んでいましたか?」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「良かったですね。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎に微笑んで話し出す。

「お酒の用意は出来ています。食事は温めたら直ぐに食べられます。」

藤田五郎は時尾に普通の表情で頷いた。

時尾は藤田五郎を微笑んで見た。


藤田五郎は荷物を持つと、普通に家の中へと入って行った。

時尾は微笑んで家の中へと入って行った。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

今回の物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承ください。

ここからは、後書きを加筆訂正しながら書いていきます。

普段と違う雰囲気の藤田五郎さんと敬一君が書きたくて考えた物語です。

藤田五郎さんと敬一君が、鎌倉への二人旅をする物語です。

泊まりで鎌倉に旅行をしていますが、海水浴はしていません。

藤田五郎さんと敬一君が、藤田五郎さんの自宅(大体の場所は分かっているのですが、物語の中には登場していません)から鎌倉までの距離を一時間にどれくらい歩けるのか、陸蒸気(おかじょうき)のルートの確認が取りきれなかったので、時間については詳しく書くのを止めました。

物語の設定当時は、東海道線があったそうです。

東海道線が出来た当初は、品川駅〜横浜駅[現在の桜木町駅]があったそうです。

途中停車無しで、一日二往復、約三十五分での到着だったそうです。

その後に直ぐに、川崎駅や神奈川駅が出来たそうです。

そして、新橋駅[現在の汐留駅]〜横浜駅[現在の桜木町駅]で開業したそうです。

現在の東海道線とはかなり違います。

今回の物語は、鎌倉が舞台の一つになっているので、大姫と源義高と海野小太郎幸氏が登場しています。

三人には本編があるので、大体のイメージで物語に登場しています。

「大暑(たいしょ)」は、二十四節気の一つです。

暑気が至り一年で最も暑い「酷暑」の時期です。

七月二十三日頃、及び、この日から立秋までの期間をさします。

夏の土用が大暑の数日前から始まり大暑の間中続きます。

小暑と大暑の一ヶ月間が暑中で、暑中見舞いはこの期間内に送ります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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