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安全と平和について


最近の動きなんだかどうだかは分からないが、
日本のあちこちの都市や町村で、
『無防備地域宣言』を条例に組み込もうとする動きが流行っているらしい。

『無防備地域宣言』なるものを積極的に導入しようとしているグループがあって、
様々な地域の市民団体と一緒になって、条例の制定を行おうと、
まあ、そういった活動を行っている模様である。

彼らの『無防備地域宣言』をするメリットというものは、
私が読んでみた所以下のようなものであるようだ。

1・『無防備地域宣言』をする事で、武力攻撃から町を守ることが出来る。
2・『無防備地域宣言』をする事で、憲法9条の平和の理念を実現できる。
3・『無防備地域宣言』をする事で、平和の願いを世界に知らしめることが出来る。
多分、こんな感じの点において、この宣言は有効なんだそうな。


そもそも、無防備地域宣言というのは、ジュネーブ条約という、
戦争にかかわる様々な取り決めをしてある条約の中の一項目としてある制度で、
この宣言をした地域、都市に対して、紛争当事国による攻撃は認められない。
とか、そんな感じの条項であったように思う。
以下のその条項を書く。

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『ジュネーブ条約追加第1議定書59条』
1.紛争当事国が無防備地域を攻撃する事は、手段の如何を問わず禁止する。
2.紛争当事国の適当な当局は,軍隊が接触している地帯の付近またはその中にある居住地で、
敵対する紛争当事国による占領のために開放されているものを無防備地域と宣言することができる。
無防備地域は、次の全ての条件を満たさなければならない。

 a.すべての戦闘員ならびに移動兵器及び移動軍用設備が撤去されていること。
 b.固定した軍用の施設または営造物が敵対的目的に使用されていないこと。
 c.当局または住民により敵対行為が行われていないこと。
 d.軍事行動を支援する活動が行われていないこと。

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まあ、これって、要するに、
『降参するので、攻撃だけは勘弁してもらえませんか。といってる人(民間人)に対して攻撃しちゃダメよ。』
と書いてあるように少なくとも私は読める。

それに、書いてある中身についてだが、『紛争当事国』とある。
これは、戦争をしている相手国という意味であると思われるが、
とすると、平時にこの宣言を出すと、どういうことになるのだろう?

自分の発想で考えると、

1・なんでもない時に『無防備宣言都市』宣言を行う。
2・有事の際に、他国の軍隊が進駐してくる。
3・自国軍隊が街を守ると条約違反とみなされる。
4・元より降参の意思を示しているので、そのまま無血占領
5・物資集積、攻撃拠点として利用される。

と、こんな感じになるような気がしなくもない。
少なくとも、こういう足場(もしくは弱点)が敵国にある事は、
攻撃側にとってはラッキーな事だろうと思うわけで。
更に言うなら、この条項というのは世界にある全ての国に対して有効な条項ではないのだ。
何故かというと、世界中の国全てがこの条約を採用(批准)している訳ではないから。

こういった条約がある事で、批准する国に対しては、
条約違反を問うことも出来るし、批准した側も、それなりにルールを守る責任が生じる訳だが、
そもそも批准していない国というのは、この条約の条項のどこかに
自分の国にとって都合の悪い箇所があるから採択していない訳だ。

まあ、我が日本国の近隣での批准状況としては、
韓国、ロシア、アメリカ、フィリピン等は条約を批准しているようではある。
当然日本も批准している。
ここまで読んで不思議に思った方もおられるのではないかと思うが、
ご近所でも批准していない国はあるのだと、調べてみると気付くもんです。


使い古された議論のお題ではあるが、
『安全』な状態と、『平和』な状態は違うといわれることがある。

軍事的な安全と平和の状態というのを想像するのは難しいが、

『安全』という状態は、私の理解でいうと、
<危険が及ばない状態>という事ではないかと思い、

『平和』という状態は、
<安全であることを自覚しないで済む>という事ではなかろうかと思う。

理念として平和を謳うことは、大切な事だと思う。
しかし、平和である状態を作り出す事と、平和である事を信じる事は
似ているようで実は違う事なのではないかと思う。

日本は平和である。
TVで、日本の危機が叫ばれようとも、安全が脅かされようとも、
少なくとも今この瞬間は、かなりの人間が日本は平和であると信じている。
明日の朝一番にミサイルが降って来ることを本気で心配している人は少ないだろう。

そういう意味において、日本は平和であるかもしれないが、
では、世界中の人間が我々と同じ認識を持っているのだろうか?
世界中の人間でなくても別によいが、
日本に危害を加える能力を持っている人間全てが、
日本への攻撃の意図を全く持たず、
なおかつ、現在世界は平和であるという認識を持ち続ける保障があるのであれば、
無防備宣言でも何でも出せばよい。

私は少なくともそこまでお目出度く考えることは出来ないので、
そう考える人たちの巻き添えになって死ぬのは勘弁してもらいたいと思う。

言葉や理念で戦争が無くなると信じて活動されるのは結構だが、
その啓蒙活動を行わねばならん国としては、日本はかなり低い順位だと思うのだが…


平和活動家の皆様が、平和思想をもっと活発に国外輸出してくれることを切に願います。
どうせやるなら、ODAの見返りとして、同額の武器をその国から没収でもすればええんや。
発展か、戦争か。
金持ち国の余裕としてその二者択一を突きつけてやればいい。

駅前で夢みたいなこと言うとっても何も変わらん事ないですか?


以上、雑感。
2005/11/21

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