このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

魅惑の飯田線ツアー・7


蕎麦屋へのアクセスは困難を極めた。
というほど困難な訳ではなかったが、
まず入り口のドアが『自動ドア』なのか『自(分で)動(かす)ドア』なのかが分からない。
ドアの前に立っても反応がないので、恐らく手動なのだろうと思って、
ドアの引き手に手をかけたがびくともしない。
あまりにも腹が減ったので、困り果ててドアの前で立ち尽くしていると、
何かの拍子にドアが開いた。

なんや、自動だったんか。

店内は薄暗く、特に清潔といった感じの雰囲気でもない。
店の中に入ると、奥でなにやら喋っていたおばちゃんが出てきた。
席に着くと、メニューを持ってきてくれたので、何にしようか悩み始めようとしたら、
いきなりいつのやら分からないページの擦り切れた『るるぶ』を出してきてくれ、
店の看板メニューについて説明し始めた。

何でも、説明によると、川えびのかき揚げの乗った何ちゃらそば(失念)と、
ひどい辛さの大根の汁をだしにして食べる何ちゃらそば(忘れてばっかやないかい!)
この二点がこの店のお勧めメニューなんだそうな。

おばちゃんの話を聞いている間に、新たに一組客がやってきて、
おばちゃんがそちらに立ち去りそうになったので、
連れは『山掛けとろろそば(だった気がする)』をチョイス。
私はお奨め二点がセットになっている、『何ちゃらセット(失念)』を注文。
蕎麦が出来るのを待つことにした。

暫くすると、もう一組、標準語(というか東京弁)を喋る若人二名(俗に言うカップル)が入店。
店のおやじが登場し、擦り切れた『るるぶ』を片手に熱弁をふるうも、
カップルの無情の注文の前に崩れ去った。
曰く、
カ男「アイスコーヒー」
カ女「オレンジジュースと、五平餅」

おやじは最後の力を振り絞って抵抗した。
「アイスコーヒーもう終わっちゃったんですよ」

カップルに敗れ去ったおやじは、力なく後ずさり、
そして我々の前にやってきて熱弁をふるい始めた。
蕎麦に使っている大根が非常に辛い事、環境保護の必要性、天竜川を綺麗にすること
等、話が終わる気配が見えないよと思ったときに、
蕎麦が出てきた。


●失礼、食った後だった●

ともかく、これは辛い、
細長いお銚子に、例の辛い大根の汁が入っているのだが、
これが、舌がビリビリ痺れる強烈さ。
丸いお銚子には辛くない大根の汁が入っていて、
辛い大根の汁が辛すぎたときに、この辛くない大根の汁を入れると
辛い大根の汁辛くない大根の汁になるという大根の汁システム。

いいですか?長野県の人。
丸いお銚子にはいっとる汁全部入れても辛いんですけど、
そういう時はどう対処したら良いんですか?

何?そんなに辛らがるとは思わんかった?

ともかく、セットにもう一品ついていた蕎麦と共に何とか辛い蕎麦
を食べ終えた我々は、御愛想をするため席を立った。
お「先輩は、どこから来たの?」
私「(先輩って…)あ、愛知県からです」
お「そうかー、ゆっくり遊んでいってよ」
私「ありがとうございます」

お言葉に甘えて、我々は遊びに出かけた。
いつも通りの散歩、というより強行軍である。


●遥かに見えるはアルプスの山々●

天竜川の川面で遊ぶのだ。
ライン下りの船着場は断崖絶壁で取り付く島もないので、
大迂回して川で遊ぶ、そういうコンセプトだ。
このために今日はブーツを履いてきている。藪漕ぎも辞さない構えだった。

連れからブーイング。

仕方がないので、道なき道を行くのはやめて
道は道だが怪しさ爆発の雑木林の中を突っ切って北を目指す。
30分ほど歩いてたどり着いた河川敷で、ワクワクしながら川に降りてみると、
生活排水でヘドロの堆積した、何とも言えない濁った流れがそこにあった。

まあ、当然といえば当然で、
ここから上流には人口数万単位の町が川に沿ってあるのだ。
しかし山の川は綺麗だという先入観を持っていた我々には少々悲しい事実だった。

綺麗に晴れ上がった空に燦々と輝く太陽は
妙に疲れ切った体をじりじりと焦がす。
日陰に入ればかなり体感温度は下がるのだが、そんな事をしていては帰りの電車を乗り逃がす。

微妙に駅から遠ざかっていく進路を修正する為に、取るべき手段は一つ。


●畦道の強行突破●

ザクザクと足元の感覚が楽しい畦道を歩くこと数分、
小さな用水路を越え、軽自動車一台分の道幅の道を歩いて駅に到着した。

帰りは特急『ワイドビュー伊那路』を使って豊橋まで帰ることになる。
買っていた切符は、自由席特急券。
田舎では、少なくとも15分前には乗車口に並んで席取りをしていたものだ。
ここはその慣例に従って、早めに並んでおいたほうが良いんではないか、
と、私の親友である所の『典型的A型の血』が仰ったので、
素直にホームに立って待っていた。


●373系特急『ワイドビュー伊那路』●

この車両を見て、どこが特急じゃいと思った貴方、
そう、この車両は快速『ムーンライトながら』で使用している車両そのままなのですよ。

ここ、天竜峡は始発駅ではないので、自由席は混んでいるだろうと予想して
席を取る為に車内にかなり急いで乗り込んでは見たものの、
車内は閑散としており、一人でボックス使っていてもそんなに文句は言われんやろうというような有様。
発車後すぐに車掌が検札に来た。

その後、特急伊那路号は運転席でデジカメ片手に写真を撮る車掌氏と共に
それなりの速度で、飯田線内を豊橋駅に向かって疾走していった。

昨日泊まった湯谷温泉で、8割方席が埋まり、新城、豊川で更に増え、
ほぼ満席状態で東海道本線と並走を始める。

夕暮れから夜の帳が下りようとしている豊橋平野、
線形も良くなって、ぐんぐんスピードを上げる特急伊那路。

そうや、このスピードこそが特急なんや!
そう思った瞬間、


●東海道本線を走る貨物列車●

貨物列車に凄い勢いでぶち抜かれた。

列車はとぼとぼと豊橋駅に滑り込んだ。

ちなみに、蕎麦屋の自動ドアは、帰るときもなかなか開きませんでしたよ。





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