このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白うふれり。 時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪のふるらむ ——『伊勢物語』東下り(九段) |
『伊勢物語』での「五月のつごもり」は、現在の6月下旬から7月上旬にあたる。 時知らぬ山は富士の嶺……の歌の意味は、時節を知らない山は富士の山であるよ。いったい今をいつと思って、鹿の子まだらに雪が降っているのだろうか。 浅い雪しか知らない都人にとって、夏に目にする富士の雪がどんなに驚きをもたらしたか、想像に難くない。「鹿の子まだら」も、残雪のせいとは思わなかったらしいことが、「雪のふるらむ」という表現からうかがえる。この後に、この山は都にたとえれば、比叡山を二十も重ねた高さ……という説明も続くから、歌も含めてこのような記述は、当時は貴重な見聞記であり、情報源の役割を果たしたことが判る。 |
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「鹿の子まだら」の富士 |
宇津ノ谷峠を歩いた時は、富士はずっと雲の中だった。「鹿の子まだら」の富士を見ないでは、『伊勢物語』を歩いた気がしないでいた。 6月中旬のある日、いきなり梅雨の晴れ間が訪れた。前日までの雨が上がって、朝から雲ひとつない快晴だった。近くの多摩川の土手まで行って見ると、富士が実によく見える。朝食もとらずに小田急で西に向かった。途中の車中からも富士がよく見えた。これは三島市での撮影。その後、日本平、三保の松原、富士川近くでも写したが、結局、朝のうちに写したこの写真が一番だった。 |
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