2月中旬、鳴子温泉に行った。温泉街に雪はほとんどなかったが、尿前(しとまえ)の関跡はかなりの雪で、芭蕉句碑も雪に埋もれていた。タクシーの運転手さんはとても傍まで行けないと言ったが、雪の表面は案外硬く締まっていて難なく歩いて行けた。郷里魚沼地方の春先の雪を思い出した。日中融けた雪の表面が早朝には凍って、ぬからずにどこでも自由に歩けるのだ。子供たちは晴れた日の朝には家の周りや裏山で、「凍(し)み渡り」を楽しんだ。橇やスケート(木型にトタンを張ったもの)で遊んだのだった。昔々の話である。 芭蕉は『奥の細道』の旅で、平泉から岩出山、鳴子を経て、山形県堺田の「封人の家」に泊まった。その時の「蚤虱(のみしらみ)馬の尿する枕もと」の句碑が、尿前の関跡に建っている。地元の鳴子町は「尿前の関跡」に関所の門構えと柵を復元整備した。運転手さんは鳴子温泉への行きかえりに、芭蕉が関所を通過する際の苦労や「尿」(しと)にまつわる話をいろいろとしてくれた。途中に日本こけし館があったが、冬季閉館中だった。 |