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小天温泉の「草枕の道」を散策した後、タクシーで野出(のいで)峠を越えて熊本市に出た。『草枕』は冒頭の「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ……」が有名だが、戦前には、「おい! と呼んだが返事がない」と始まる第二章「峠の茶屋」の場面が旧制中学校教科書に採られていて、『草枕』は知らなくても「峠の茶屋」を知っている者が多かった、と野田宇太郎が書いている(『九州文学散歩 中』)。その野田宇太郎は通越(とりごえ)峠の「峠の茶屋」に二度も足を運んだが、漱石の歩いたのは野出峠ということになったらしいと聞いて、もう一度この峠の「峠の茶屋」跡を歩いている。
野田宇太郎は「茶屋跡に近く『草枕』の文学碑も立つという話」を聞きながら小天温泉への道を下ったと記しているが、その文学碑が野出峠に建っていた。「草枕 峠の茶屋跡 1966」と刻まれた碑の側には、「野出越之茶屋跡」についての、環境庁・熊本県の説明板や『草枕』冒頭の一節が刻まれている碑などもあった。金峰山も目の前だが、あいにくの小雨で、頂上は雲に隠れていた。 |
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「草枕 峠の茶屋跡」の碑 (撮影 1987・3・27) ▲ |
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「智に働けば角が立つ……」『草枕』の冒頭が刻まれた碑 ▲ |
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「野出越之茶屋跡」についての、環境庁・熊本県の説明板 ▲ |
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野出峠の旧道 左手に「草枕 峠の茶屋跡」の碑 ▲ |
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小雨の中の金峰山 ▲ |
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