10月上旬、奥日光を訪ねた。日光は昭和30年代から何度も訪れたが、今回は実に30年ぶり。新宿から東武日光まで直通があることなど、はじめて知った。便利になったものだ。紅葉の最盛期には毎年渋滞のニュースが流れるいろは坂も、まだシーズンはじめで空いていた。中禅寺温泉で路線バスを降り、栃木県立日光自然博物館の前を過ぎて、華厳の滝へ。まず華厳の滝の上の展望台へ。巨大な滝を上から見るその迫力に驚いた。離れて見てさえ吸い込まれそうなのに、至近距離で見たらさぞ怖くなるだろうと思った。エレベーターで100メートル降りる下の観瀑台で、落下する滝も壮観だったが、こっちは安心して見ていられる。白馬オリンピックのジャンプ台を後日上から見た時も似た感想をもったことを思い出した。小学生の団体などで、こちらの展望台は混んでいた。無料の上の展望台が空いていて、有料で行列待ちのこの展望台の方が混雑、というのも妙なものだと思った。
エレベーターと滝を結ぶ長い通路には、「華厳の岩頭に露と散った幾多の霊に対し……」ての趣意が掲げられた慰霊の像もあった。「巌頭之感」の遺書を残して華厳の滝に身を投げた藤村操は有名だが、他にも「露と散った」魂のあったことを知らされた(ネットで検索したら、その後、華厳の滝が自殺の名所になったこと、思想的にも大きな影響のあったことを知らされた)。 |