汽車旅つれづれはなし 13
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
---------------------------------------------------------------------- [汽車旅つれづれはなし] 第13号 2002/2/21 ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して 発行しています。( http://www.mag2.com/ ) ---------------------------------------------------------------------- 尚、登録・解除は、 http://www.mag2.com/mag2/m/0000043279.htm にて自由におこなうことができます。 --------------------------------------------------------------------- こんにちは。 お元気にしていらっしゃいますか? さて、今回のヴィデオ映像は、青森駅の夏の夕刻、 「日本海4号」の発車の様子。 発車前 出発 今回の、html版はこちらで公開いたします。 内容は同じですが、写真と一緒に読むことができますので ブラウザなどでご覧下さい。 ここです ↓ http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train13.htm また、バックナンバーのhtml版は以下のURLです。 http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train12.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train11.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train10.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train9.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train8.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train7.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train6.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train5.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train4.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train3.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train2.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train1.htm 「待合室」移転しました。 (こちらも、外部リンクなどありません。読者さん専用ですので どうぞ安心してご利用ください。) http://www63.tcup.com/6325/shoo.html ------------------*-------------------- 電車は、旅愁にひたる乗客のひとりを乗せたまま 大釈迦、鶴ケ坂、と停車してゆく。 このあたりはちょっとした山あいの様子であり、 それまでの平野、農村っぽい風景とは一変して山深い。 弘前在住の頃も、よくこのあたりで蒸気機関車の撮影をしたものだ... 鶴ケ坂を過ぎると、もう青森の都市圏だ。 再び平野部だが、今度は都市的な景観がひろがり、 車窓を流れる住宅の近代的な様子に戸惑っている暇も無く新青森に停車。 乗客が数人乗り代えると、また電車はスムーズに走り始める。 青森駅の奥羽線ホームへ入線し701系は無事、終着した。 青森駅は閑散としており、構内は広々と。 かつて、この構内で行われた蒸機さよなら運転、 D51-1号機の晴れ姿が脳裏をよぎる。 その場に居合わせなかったのに、不思議なことだが。おっと、ぼんやりしている暇は無かった。 十和田湖行きのバスに乗車するだった、と思い出し、 僕は跨線橋を渡り、改札を抜けた。 駅前広場は、盆休みの時期とあって若者たちで賑わっている。 一見して地元民と、都会からの旅行者とはすぐに見分けが付く。 顔立ちそのものが違うのもその理由のひとつに挙げられるが 都市の者が一様に仮面の如き無表情であるのに対し、こちらの若者は表情豊かである。 服装はほとんど似たようなものを着用している事には驚くが デパートなどをさらりと見ても都会と同じものが売られているから、やや納得する。 すぐ目前には津軽海峡が、青々として夏の海.. 岸壁では八甲田丸が岸壁に係留され、今はもう行き交う事の無い 海峡を見つめている。 かもめが一羽、船のデッキをかすめて飛びさる。 ..まるで、自由、という言葉の響き、そのもののように...駅前ロータリーをバスターミナルに向かって歩く。 ターミナルは、改札口を出て左手、海の方向 ロータリーに面して「JRバス」と大書されているのですぐに分かる。 以前は閑散としていて、ただ広いだけのように思えた この駅前広場も、コンビニ、喫茶店、ファーストフード、などが立ち並び都会風に様代わりしていて 当然の事だが、時代の流を強く感じる事となった。 さて、バスターミナルに付き、受付で乗車手続きを取る。 このバスは、定期観光バスのように建て前上は定員乗車である。 そのため、混雑時には満席となり乗車出来ない事もあるそうだ (そのような状況に遭遇した事はないが)しかし、路線バスのように停留所で客を拾うので 途中乗車のお客は立席、または補助椅子となったりもする。 乗車時間が長いのでこのような配慮をしたと思われるが、なんとも細やかな心遣いだと思える。 同じ路線でも十和田湖から花輪線の十和田南駅までの路線(十和田北線) では指定席料金を徴収されるが、こちら十和田南線は無料サービスである事も嬉しい。 さて、バスの時刻までは30分程間があったので駅ビルの中をぶらついてみた。 青森駅の駅ビルは、直接改札口には接続しておらず、 建物としては別棟になっている。 改札、みどりの窓口からキヨスクのお店、弁当のお店の前を通ってそちらに向かう。 弁当屋さんでは40半ばくらいのお母さん、にこやかに 津軽弁で「おべんとう、いかがですか?」と僕に言葉を掛けるので 弁当をちょっと見てみることにした。 ごく普通の幕の内ふう、「海峡弁当」。 ちょっと大き目の薄い弁当箱、煮物とかが多い感じで まずは無難な献立の様子。名物のほたて貝が小粒に。 おかず主体の感じ。 他に目をひいたのはほたて釜飯だった。 赤い丼風の容器に、煮しめた大き目のほたて貝が醤油風味っぽい炊き込みご飯に乗っている。 錦糸卵、漬物はきうり。ちょっと手頃名感じでお値段も800円程だったので売れ筋っぽい。 僕が見ている間にも年配の観光客、都会人風が数人 買っていった。 「あとで寄ります」とお母さんに告げるとにこやかに 「はい、どうぞ。」と。 優しげな微笑みに僕もつい、笑顔になる。 こんなささやかなふれあいもまたひとり旅の楽しみのひとつ、かな? などと気分も軽く駅ビルへ。 駅ビルはほとんどどこかのデパートのようで 都会にいるのと同じようなサービス形態だ。 でも土産物売り場が一階にあるあたりは、駅ビルっぽい。 南部せんべいとか、りんご、海産物などの干物などとヴァラエティに富む。 値段も市価と変わらない所は良心的だ...などと考え、周囲をふと見回すと 地元の方と思しき婦人たちが、普段着で訪れている。 なるほど、市価であるわけだ、とひとり合点をした。 エスカレーターで登ると階上は洋服、書店など。 髪を金髪にした女子店員がちょっと都会風の雰囲気を醸す。 そのまた上の階は食堂街のようだ...と、ふと壁の時計を見ると、そろそろバスの到着時刻だ。 食堂街を眺めるのも楽しいものだが、帰路にしよう、と エスカレーターで一階に降り、外へ。 駅前ロータリーはタクシー、バス、自家用車、と賑わっていた。 都会の駅ならマイカーは構内に止められないが ここでは割とおおらかにスペースが割り当てられている。 めいめいに、車を止めて談笑する人たちの中には 旅人らしい姿も見える。 山登りっぽい服装、ポケットの多いベスト、アーシーカラーのズボン、と。 クロスカントリー風の4輪駆動車。 青森駅からは、八甲田山にも程近いので、この方も 奥入瀬にでも行ったのかもしれないな、と思う。 ロータリーの角、バスターミナルの前に十和田湖行きの JRバスは、ブルーとホワイトのボディを揺らせ、停止した。 サイドにつばめのマーク。これは国鉄時代のままで、ちょっと嬉しくなる。 他の地方でも時々国鉄バス時代のままの塗装のものを見掛けたりもするが、 最近はあまり見ないようだ。 各社、JRバスを名乗ってはいても、別会社になってしまった所も多いから、だろうか。 さて、十和田湖線のバスに乗り込もう。 ハイ・デッキタイプの観光バスだが、料金箱と運賃表がついているところがなんとなく面白い。 もちろん、降車ボタンも付いているから、装備はワンマンカー、といった所。 このバスは、停留所を巡る路線バスなのだ。 面白いのは、テープ案内アナウンスが、観光スポットへ 入るとバスガイドの役目も兼ねるあたり。 英語でのアナウンスもあり、なかなか本格的。 名調子の民謡なども唄うので、御乗車の節はそのあたりもお楽しみに なられるのも良いかもしれない。 バスは、空気ばねのふんわりとした揺動と共に、定刻発車する。 エンジンの音も静かであるし、なかなかの乗り心地。 車両はおそらく高速バスなどと似たような仕様、やや定員が少ないもののようで この日、お盆の時期とあって都会人らしい観光客でさらりと席が埋っている。 僕は、車両中間のシートに座り、後ろに人がいないことを確認して1ノッチだけシートを傾けた。 あまり深く倒すとかえって疲れるからだが、この辺の感覚はバスならでは。 座席列車で仮眠を取る時などは深くシートを倒す事もあるが、バスだとちょっ疲れてしまうのは 重心の位置と、揺れの方向のせいかな、などと思う。 バスは、ゆっくりと青森市街を進む。 駅前の通りを直進し、大通りに出る。 このあたりは県庁所在地だけあって、大都会のイメージ。 空気がきれいなのと、遠くに山が見えるあたりは どこか長野あたりを連想させる。 市街地を離れるとすぐに田舎の風景になるあたりも同じ、だ。 空気ばねとディーゼルエンジンの振動の感じから 最近の気動車、たとえばキハ125あたりを連想するが シートとか車内の雰囲気は、ハイ・デッキでなければ 特急型、キハ183系あたりをイメージしたりも出来る そんな重厚な乗り心地に身を任せていると、 青森の市街地をいつしか離れ、よく整備された観光道路、 という雰囲気の道路をバスはゆっくりと登り始めた。 停留所をいくつか通過し、次第に周囲は高原の雰囲気、となって来た。 白樺の林が傾きかけた夏の陽に白く輝いている。 まがりくねった道路、快適なドライブウェイのこの 八甲田スカイラインをしばらく登り、青森市街が遠く 夏のかげろうに霞むほどの距離を経て、休憩地点に到着する。 「萱野茶屋」と名付けられたここは民芸調のお休み処。 駐車場が広く、このバスはしばらくの間停車する。 運転手が乗り遅れのないように、とアナウンスし 停留所にふんわりと停車した。 鉄道であれば、弱めブレーキ扱い、といったところ。 バスに遅れの無いこと、上りのバスに運休、遅れがないか尋ねたところ 「運休はないが、遅れは多少出ている」 とのこと。 今夜、青森発は2100過ぎなので遅れはそれほど困らない むしろ、運休があった場合には折りかえしができなくなるのが.. まあ、大丈夫なようだ。 仮に折り返し不能になったら...その時はその時。 タクシーを利用するか、酸ケ湯温泉に一泊すればよいかなどと思う。 気楽なひとり旅である。 帰投後の予定が詰まっているわけでもない。と のんびりとした気分で、エア・サスのバスから降りる。 ゆらゆらと揺れる様も、最近の鉄道車両のようだ。アスファルト舗装された駐車場に、木造の茶屋が少々 不釣合な感じだが、まあ、このあたりは仕方ない。 茶屋の外に、水道の蛇口が並んで設置されている。 ひとくち含んでみると、冷たさが丁度いい感じ。 ほのかに甘く、山の水かな、などと感じられる。 アナウンス、音の風景 折角だから、とサービスに感謝の意を表し、 なにか土産物を、と店の中をながめてみる。 団子の類、以前御話しした丸くて大きいおむすびなど 食物は夏場なので持たないかな...と これから先、1000km近くの旅程を思う。 あまり重いものも...とあたりを見回すと 微かに芳香を感じ、足をとめる。 木製の球が数個、網袋に入って掛けられていた。 見ると、青森ヒバ、とあり、その香りを楽しむもののようだ。 さわやかな香気が心地良い。ので、これを土産に購入し、 ザックにしまうと、内部が香りに包まれて とても品の良い、よい感じに思える。 と、そろそろ発車の時刻となり、バスに戻る。 運転手が人数を数え、乗り遅れのない事を確認する このあたり乗り合いバスだが、定期観光便のようだ。 もっとも、降車時に運賃を徴収している訳ではないから そのまま降りられては無賃乗車になってしまうが。(笑) バスはゆっくりとギアを唸らせて発車した。 心なしか山間の空気は涼しさを増したようで、太陽の 光もいくらかオレンジ色を帯びてきた。 カーヴの続く山道だが、しかし道幅も大型バスで適当、 というくらいのゆったりとしたルート。 きれいに舗装された道路を、バスはぐんぐん標高を上げて行く。 次の停留所は八甲田ロープウェイ入り口。 スカイラインから外れ、ちょっと脇道に入り やや急な坂道を登ると、そこがロープウェイ乗り場だ。 緑深い斜面に、ロープウェイの鋼索支柱が鉛直に立ち並ぶ。 その角度から斜面の傾きが判るが、どうやら冬期には スキー場となるようで、滑走に適当な傾きの 斜面が迫力満点。 いつか、冬にも訪れてみたい、と思いながら 視線を谷の方角に移すと遠く、青森市街と津軽海峡が 夏空に霞んでひろがっていた。 バスはぐるり、とロータリーを回る。 停留所の表示も、普通の鉄柱タイプのものと別に 擬木の大きな立看板が設置してあり、雰囲気造りと共に 観光客に向けてのよいアピールだ、と思う。 バスはもと来た坂道を下り、スカイラインに再び。 ゆっくりとヒル・クライムを続ける。 何台ものオートバイが、軽快にコーナーを駆けぬけて行く。 他県のナンバーがほとんどだが、中には遠く関東圏からの来訪者もあるようだ。 フェリー利用かな、などとふと思う。 一時、人気のあった[Motoトレイン]は、青森では降りられなかったし 今はどうなっているのだろう、とも。 20系寝台車が連結されていて、ちょっと乗車してみたかったが 時間の都合で乗れずじまいだった。 荷物車との混合列車なので、その乗り心地がちょっと 気になった、のだけど。 数十分程空気ばねの揺れに身を任せていると、アナウンスが入った。 次のバス停は城ケ倉温泉、と、英語での案内も入る。 国際的な観光地だな、と思い、車窓の緑深い森を改めて見直すと すでに八甲田山系の中なのか 人工的な建造物はまったく視界に入らなくなっていた。-------|以下、次回に続きます..|------- -----[あとがき]------------------------------ ご意見、ご感想、ご指南等お待ちいたしております。 このマガジンに返信して下されば届きます。 山岡。 --[PR]------------------------------------------------------------- 姉妹誌のご紹介。 メールマガジン「淡彩画」 http://www.mag2.com/m/0000007590.htm 現在、連載小説[city](カーアクションもの)短文物が主体です。 音楽のページでは、古今の名曲のお話しなども。 メールマガジン「ヒト学のかたわら」 http://www.mag2.com/m/0000005981.htm 著者の20年来にわたる人類学研究の過程からの 情報、分析、書物の紹介などが主体。 真面目にヒトの生態を考える方向きの真面目なマガジン。 メールマガジン「山岡鉄男のディスク漫談」 http://www.mag2.com/m/0000072708.htm メールマガジン「音楽徒然噺」 http://www.mag2.com/m/0000081574.htm ---------------------------------------------------------------------- 汽車旅つれづれはなし 第13号 2002/2/21 関連サイト http://www.geocities.co.jp/Hollywood/5733/583k.htm 掲示板 http://www63.tcup.com/6325/shoo.html 電子メールあて先 d51-1@nzm.jrnet.ne.jp 583k@railfan.forum.ne.jp 発行人 山岡 鉄男 ------------------------------------------------------------------------
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |