汽車旅つれづれはなし 14
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---------------------------------------------------------------------- [汽車旅つれづれはなし] 第14号 2002/4/21 ---------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して 発行しています。( http://www.mag2.com/ ) ---------------------------------------------------------------------- 尚、登録・解除は、 http://www.mag2.com/mag2/m/0000043279.htm にて自由におこなうことができます。 --------------------------------------------------------------------- こんにちは。 お元気にしていらっしゃいますか? さて、今回のヴィデオ映像は、本文中にもありますE751系「スーパーはつかり28号」の 青森駅出発の、と、夜の雰囲気... 映像はここです↓ 出発の風景 今回の、html版はこちらで公開いたします。 内容は同じですが、写真と一緒に読むことができますので ブラウザなどでご覧下さい。 ここです ↓ http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train14.htm また、バックナンバーのhtml版は以下のURLです。 http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train13.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train12.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train11.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train10.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train9.htm http://users.hoops.ne.jp/c62_/text/train8.htm 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靄まじりで周囲の様子は判らないが、山肌の窪地に沸いた源泉のそばに 湯治場が出来た、という様子。 盆休みの最中とあって、自家用車やオートバイが多い。 土産物屋がここにもあり、ちょっと見てみると、弘前市内のコンビニエントで 見かけたような丸いおにぎりの特大版?が売られていた。 値段は同じ、直径は倍、という感じだが、観光地の方が安いのは面白い。 おでん、お酒、ビール、フィルム、などという土産物屋らしい品がさらり、と立ち並ぶ。 頭上を見上げると風雪に耐えた木造の梁がほの黒く。 立派に空を仰いでいる。 土産物屋の左隣が温泉の玄関。こちらは改築したようで、旧式っぽい装飾。 まだ新しい感じ。 日本旅館風の広い玄関をくぐると、入り口に券売機があった。 入浴券を買う、という最近おなじみのシステムらしい。 500円。 入浴券を持って玄関を上がろうとすると、土間の所は靴、靴、靴.. どうやら、日帰り入浴客が多数、訪れているらしい。 中は木造で、かなり風格のある造り。 短い毛足のカーペットに、ソファ、広い空間、と旅館のような雰囲気。 はっぴの番頭さん、にこやかに入浴券を受け取る。 あがりかまちの所で待っているところに、続々と客足はとだえず、かなりの盛況である。まあ、千人風呂、といわれる程の湯舟とのことで、芋洗いになる事もないだろう と玄関ホールを後にし、右手奥の浴場へと向かう。 「撮影禁止」などと大書されているが、何故か?というとここの大浴場は混浴なのだ。 ふと、首からカメラを下げていた事に気付き、ザックにしまう。 板張りの廊下を歩いていると、銭湯の匂いがする。 ほのかに硫黄の雰囲気も漂う。 片板硝子の引き戸をがらがらと開くと、ちょっと手狭な脱衣場には人があふれている。 コイン・ロッカーもあるが、廊下に無料の貴重品入れがあったので そちらに入れ、タオルだけを持って脱衣場へ。人波がすこし収まるのを待ち、さっさと浴場へ。 最近、男女別の内風呂が出来たので、混雑はやや緩和されたとの事だったが それでも結構混んでいる。 階段を下ってこれまた板張りの浴場へ降りる。 衝立があって、その反対側は婦人の脱衣場、洗い場だが 脱衣場の方からは丸見えで、奥手の湯舟のほうにはあまり御趣味のよろしくない中年男性が...と。 御婦人はこちらは避けた方がよいか、と思いつつ洗い場に降りる。 洗い場の板はすこしぬめりがあり、硫黄臭の強い、白い湯は石鹸も泡立ちが悪い。 湯舟の湯は粘り気があり、とろり、とポタージュ・スープのよう。 やはり木造の湯舟は、底も板張りで、かなり深い。 温度もかなり高い。 千人風呂、と言われるだけの事はありちょっとしたプールくらいの広さの湯舟だが 温度が高いせいか湯舟の周囲にみな、座って足を浸けながら談笑している。 (婦人脱衣場のほうになぜか男性ばかり集まっているが 見るとどうも青森人の顔立ちではない人ばかり。 旅の恥はかき捨て、という事か...) やれやれ、と思いながら見上げると、天井は黒ずんだ木造りで高く 外の夏陽に照らされて湯気がゆらゆら、と。 日が出てきたのかな、と思い、壁の時計を見ると4時を回っている。 まだ、折り返しのバスは3本あるな..と思いながら、 とろり、とした湯に漬かる。 酸ケ湯、とあるように、ここの湯はすこし酸味があるようで 流石に飲湯をしている方はいない。 ゆっくりと足を伸ばし、弘前市内で疲れた脚を揉みほぐすと 思いの他硬直していて、自分でも驚く。 靴の底が摺り減ってしまう程だから、当然といえば当然だが... 10分程漬かっていたが、のぼせそうなので出る事にする。 窓からさし込む夏陽は、もう夕方、の雰囲気だ。 脱衣場で着衣をつけ、タオルを頭にのせたまま裸足で廊下を歩く。 大広間の椅子に空きを見つけ、すこし休もうとしたが休日の賑わい 落ち着ける雰囲気ではない。 広間のTVは高校野球を中継しており、その賑やかな応援の音もまた ざわめきの中に埋没してしまう。 子供の頃、この野球中継を聴くと夏休みになったと実感したものだったが.. などと回想を重ねるにも少々場違いな感じがして、外にでようと席を立つ、と 空席を探していた家族連れの一人が、通勤電車よろしく、 さっ、と僕の座っていた椅子に座った。 やれやれ..と、彼の顔を見ると、やはり都会人風。 靴を履いて外に出ると。さわやかな山の香気に包まれて もう夕暮れの雰囲気... あたりをすこし見回る。浴場の裏手は、昔ながらの湯治場のようで 木造の二階建の建物、昔の学校のような雰囲気の板張りの壁... でも、ひと気がない。 冬場は、農閑期とあいなってここも多いに賑わうそうだが (酸ケ湯までは除雪され、以遠、十和田湖方面は通行止。) その時期に来た方が良いかも、と思う。 バス停のそばに緑地が設けてあり、そこのベンチで持参してきた氷水を飲む。 もう、1kgの氷も溶けてしまって、細氷が残るのみ。 湯上がりの火照りには、それでも御馳走である。 映像はここです。 ...と、バス停を見ると、乗客らしき人影、数名。 バスを待っているようだが、どうやら遅れが出ている模様。 時刻表と時計を見比べているひとり旅風。 老夫婦、孫娘らしい女の子、小学生くらい。 登山のような服装をしているところを見ると、八甲田あたりにハイキング にいった帰路であるようだ。 休日の午後らしい風景。 女の子、歩き疲れたのかお爺さんの足元に座り込み、「ジベタリアン」している(笑) 土産物屋の方からそれをしかる母親の声は津軽弁、手には土産物を持っている.. 三世代で山登り、だろうか。 微笑ましい情景..。 ひとり、手持ち無沙汰風の若者に声をかける。 僕と同様「鉄」風は、小型時刻表を持っている。 彼は僕の風体を見、同類と見たかすこし表情を和らげる。 ザック、地味な色会いのシャツ、ラフなズボン、と 同じような服装を同類、と見たのか。 彼は東京からの旅行者で、僕と同じく周遊きっぷ利用。 青森・十和田ゾーン券で来訪し、期限一杯までこの辺りをぶらついて 東京に戻る、とのことである。 一見、学生風だったが、時間に余裕のある若者らしいプランで、少々うらやましい。 宿泊を予約してあるそうで、そのためかバスの時刻を気にしている。 この後青森駅まで下って投宿、との事で、すでに5時近く、ビジネスホテルなら良いが 旅館ではそろそろ夕食の時間である。 最近の宿は食事の時間が決まっているところも多いので 几帳面な性格の人はその変が気になるのだろう。 僕などはずぼら、というか、その辺はあまり気にしていなかったりもする。 鉄道の旅、いかにダイアがある、とはいうもののあまり綿密にスケジュールを たててしまうとちょっと面白味に欠ける、とか思うからで、 ひとりの時は大抵無計画が多い..。 彼は、携帯電話でどこかに連絡をしている。 「バス、少し遅れるそうです」との事。 JRバスのターミナルに情報を聞いていたようだ。 バス待ちの先程の三世代、それを聞いて安心した御様子。 それでも10分程の遅れで、青森駅行きのバスがやってくる。 満員か、と思ったが、車内は半分程の座席が埋っているのみ。 空席を求めて最後部まで進む。 先程の彼は、最後部、端の席に座る。 僕は、ひとつ空けて隣の席に座り、背中のザックを下ろし、反対側の空席に置いた。 バスはのんびりと発車し、さきほどエンジンを唸らせて登ってきた坂道を軽快に下る。 右、左、とカーヴを切る度にふんわりと、空気バネ懸架の車体は船のように揺れる。 すでに薄暮の様相を示し、車窓からの山の風景も視界が限られてくる。 バスはダイア遅れの回復運転か、かなり快調に飛ばす。 時折視界が開けると、青森市街の灯が瞬いている。 ガクン、とブレーキの揺れで気付く。 すこし眠ってしまっていたようだ。 隣の彼、を見るとやっぱり眠っている 終点まで乗車なので、そのまますこし眠ることにする。 バスはそんな旅疲れの僕らを乗せ、順調に進む。 次に気付くと、もう青森市街をゆっくりと駅に向かっていた。 ちょっとの間でも、熟睡出来たので頭がすっきりとする。 特徴的な三角の梁がブルーに照らされた橋を目前にして 夕暮れの喧騒、という雰囲気の青森駅に到着したのはほぼ定刻、だった。 さっきの彼とバス停で別れる。 昼間の弁当屋さんに「あとで寄ります」と言ったので、早速寄ることにした。 店は駅の入り口、売店のとなり。 大分駅なんかもそうだっけ、とか思いながらもう一度弁当の種類を見る。 幕の内、とかがいいかな、と見ると「海峡弁当」は売りきれ。 なにか、青森らしい物にしよう、と、「帆立釜飯」にした。 これはとりあえず明日の朝食、として... 僕は今宵の旅支度を、と駅ビルへ。 一階は土産物などが売られている。 南部煎餅など、軽いものを買い、ついでに夕食でも取ろうか、と 階上へとエスカレーターで昇る。 駅ビルの雰囲気はどこも似たようなものだが、どこかしら土地の空気 が感じられるものであり、青森駅でいうと海産物の乾物の匂いとかが一階のフロア に漂っているあたり、臨海の駅の雰囲気を感じさせる。 生活感のあるムード、というと駅前市場のある、JR九州管内の駅などを想わせるが どこか都会的な駅だと、食料品は地下、とデパートのような雰囲気であったりもするものだが... と、エスカレーターに身を預けながら窓の外を見ると、 すでに夜景、きらびやかなイルミネーションが漆黒の闇に映えている。 その辺りは都市的だな...とフロアを昇り、三階へ。 バス待ちの合間にちら、と見ただけだったので今度はじっくりと眺めることにする。 さて、今宵夜行で帰路、となると、何か土地の物を、などと考えたりもするが これも旅情というものかな、などと、名産品、地場産の食事にしようか... と考えていると、駅前で別れたさっきの彼にまた出会う。 やあ、と声を掛けると彼もにっこりと。 ひとり旅同士、まあ出会ったのも何かの縁だから、と一緒に夕食を取る事にし 彼が中華食堂の前にいたのでそのまま中華にする事に(笑) 我ながらいいかげんな物だが、まあ、その辺も気楽な一人旅の良いところ。 旅は道づれ、世は情け、と。... 彼はラーメン。半チャン、僕は...すこし考えてそれでも地場らしく、と、海鮮ラーメンにする。 大盛りのラーメンで、濃厚なだし、味付けはいかにも東北っぽい。 特大おにぎりよろしくヴォリュームも満点。帆立の風味、海草、蟹、海老..と 山盛りの熱々を頂き、しばし会話が途切れる。 底までスープを飲み干してふと時計を見ればまだ7時前。 彼は煙草を吸わないようで、灰皿もきれいなまま。 ビールなども注文しないようなので、尋ねると、酒も煙草もやらない、との事。 それでは金が余るだろう?というと、旅行で全部使ってしまう、とのお返事。 なるほど、そういえば僕もそうだ、と笑ってしまう。 彼はこんな感じで全国を旅しているそうで、僕が行った事のある地方ローカル線の 小駅の周囲の事、などを話すと「あ、そこ行った事あります」と、行った者でなければ 知らないような細かな事を話すのでちょっと驚く。 同じ駅で乗降した事もあったりもして、ちょっと不思議、に思ったりもして。 これから、どこかに行くらしい彼と食堂で別れ、僕はもうすこしぶらつく事にしよう とエスカレーターに乗った後、彼の名前も聞いてなかった、と気付く。彼もそれでなく 名、など尋ねなかった事に好感を覚える。 旅人同士、無名の人、でよいのだな、と。 名前、住所、職業、とかの話しになると、どうしても日常を思い出してしまう。 今は、旅の最中、普段の事は考えずに今、過ぎて行く時刻を大切にしたい..と。 彼もそんな気持ちだったのかもしれない。 幾日かして、振り返った時、そんな時刻の断片が記憶として残ってゆけばいい、と。 そういう想いが、また、次の旅へと誘うのかな、などと 夕刻の青森駅、夜行列車の始発駅らしい雰囲気の駅、ターミナルに足を向ける。 駅前は活気があり、若者たちが楽しそうにはしゃいでいたり、スケートボードの少年がいたり と夜の雰囲気。でも、渋谷あたりとは違い、刹那的には見えないところ、ちょっと安堵する。 プラットホームの見渡せるあたりに来、ふと見るとE751系が1番線に真新しい車体で佇んでいる。 ほとんど「スーパーひたち」みたいなスタイルだが、ちょっと興味を覚えて改札をくぐる。 カメラをぶら下げて跨線橋を渡り、1番線ホームへ。 Hatsukari と、ロゴの入った先頭部を入れて、写真を一枚。車両に露出を合わせると、空はこんなに明るく映ってしまう。 夜景写真っぽく、もう一枚(笑)車内はほとんど常磐線特急、という感じ。 東北新幹線が八戸開業、となった時、おそらくは新幹線連絡特急になるのだろうが そう遠くない将来、青森に新幹線が到達した時まで、の名称「はつかり」なのだろうか。 ヘッドサインがLED表示でなく 固定の「はつかり」表示、とは、その時この車両がどうなるのかがすこし気になる。 青森行き新幹線の名称が「やまびこ」では少々似合わないようにも思え やはり「はつかり」が似つかわしいとも言えるが、そうなるとこの車両、新製から 10年そこそこで役目を終る、のか。 はてまた北海道連絡特急になるか、ヘッドサインを替えて奥羽線の 485系の置き替えになるのか。 ...などと考えていると、発車時刻が近づいた、との アナウンス が入る。-------|以下、次回に続きます..|------- -----[あとがき]------------------------------ ご意見、ご感想、ご指南等お待ちいたしております。 このマガジンに返信して下されば届きます。 山岡。 --[PR]------------------------------------------------------------- 姉妹誌のご紹介。 メールマガジン「淡彩画」 http://www.mag2.com/m/0000007590.htm 現在、連載小説[city](カーアクションもの)短文物が主体です。 音楽のページでは、古今の名曲のお話しなども。 メールマガジン「ヒト学のかたわら」 http://www.mag2.com/m/0000005981.htm 著者の20年来にわたる人類学研究の過程からの 情報、分析、書物の紹介などが主体。 真面目にヒトの生態を考える方向きの真面目なマガジン。 メールマガジン「山岡鉄男のディスク漫談」 http://www.mag2.com/m/0000072708.htm メールマガジン「音楽徒然噺」 http://www.mag2.com/m/0000081574.htm ---------------------------------------------------------------------- 汽車旅つれづれはなし 第14号 2002/4/21 関連サイト http://www.geocities.co.jp/Hollywood/5733/583k.htm 掲示板 http://www63.tcup.com/6325/shoo.html 電子メールあて先 583k@railfan.forum.ne.jp (または、このマガジンに返信なさっても結構です) 発行人 山岡 鉄男 ------------------------------------------------------------------------
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