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(1)講座番号2
「裏側で鉄道の安全・快適を支える鉄道の「スジ屋」話」
講師:塚田雅弘さん(名鉄 運転課 課長補佐)
プロジェクターでページ送りして解説していくタイプの講座
●講師経歴
2005年 入社
研修期間を経て、営業部、広報担当などにつき
2014年から現在の運転保安部に配属(スジ屋に)
配属は本人の希望ではなく辞令 とのこと。
営業の仕事が今の仕事(スジ屋)に活きている。
スジ屋、性に合う仕事 らしい。
●会社概要
・名古屋地区を中心とした鉄道事業メインの会社で〜・・・(略)
・列車本数(平日) 3637本
そのうち回送は310本、名鉄名古屋駅を通るのは900本
・総路線長は、全国の私鉄の中では 第3位
・鉄道事業のほか、不動産や病院など
●鉄道事業本部の組織
・安全統括部
・計画部
・営業部
・運転保安部
L 運転管理課
L 運転課 (スジ屋 講師の現職)
L 運転指導課
L 運転指令課
・土木部
・車両部
・電気部
●スジ屋=「列車の運行ダイヤを作成」。主な仕事内容は、
・基本計画(列車スジ計画、車両運用計画)
・臨時計画(臨時列車の割り込み計画)
・行路計画(乗務員の計画)
※事故などでダイヤが乱れた場合、ダイヤを復旧させる作業は
スジ屋の仕事ではない。
一時的なダイヤ変更をするのは「運転指令」の仕事。
●利用者から見る「ダイヤ」
・時刻表=「商品カタログ」 名鉄を利用するためのカタログ
●事業者から見たときの「ダイヤ」
・商品カタログ=名鉄の魅力・利便性を顧客にアピール
・各セクションをつなぐ「共通情報」
・収支に直結
●スジ屋が考えていること
・利用者の利便性 :これが第1条件
・乗務行路(乗務員のやりくり)
・車両運用(車両のやりくり、1週間に1度車両点検が必要)
・駅員スケジュール(始電終電時刻など)
・他社調整(地下鉄直通、JRと線路共用など)
・安全性
・車両投資(車両寿命) :1両 約1億5千万円
・線路設備(保守、新設) :ダイヤ改正の1番のキッカケ
●スジ引き(ダイヤ作成)に必要なデータ
(1)基本運転時分 :車両がどれくらいの速さで走るのか
(2)駅停車時分 :乗り降りなどに要する時間
(3)時隔 :列車と列車の時間的間隔
(1)基本運転時分
・「ランカード」=車両ごとの速度グラフ
・横軸は距離(駅名がずらり)、縦軸は速度
・各駅間をどのくらいの速度で走れるかを示したグラフ
・車両自体のスペック、線路条件(勾配やカーブなど)、
信号条件(速度制限)などで作成
(2)駅停車時分
駅ごと、時間帯ごとに設定
(3)時隔
列車と列車の間を どれだけ離すか
追い越される列車においては =
駅に着いてから抜かされるまで + 抜かされてから発車まで
●安全マージン
・余裕をみて5秒きざみで作成
・電圧 1割減で計算
・制限速度より 2〜3km/h減で計算
・性能が悪い 古い車両のスペックで計算
●スジ屋の鬼門、スジ屋泣かせな駅「犬山駅」
・「犬山線」「広見線」「小牧線」の3路線が合流するほか、
「犬山検車場」に行く線路もある。
・駅は6番線まである。
・各線路へ自由に行き来できるわけではない。どこから来て
どこへ行くのかで使える線路・番線が限られる。
・乗り換え駅なので、利便性にも配慮。
●名鉄名物「名鉄名古屋駅」
・犬山駅に比べると構造は単純。
・基本は、続行時隔(前列車との時差)80秒+停車40秒=120秒間隔
・2分に1本が限界値
・マージンを見て朝のラッシュ時は「28本」運行
・平日8時台は28本、8両のフル編成で運転。
閑散時の12時台も24本が乗り入れているが、編成車両数を減らして運転。
(参考:地下鉄 東山線は「運転本数」を減らしている)
●ダイヤ作成において難しい箇所
・単線になる路線
・地下鉄との相互直通
・豊橋 :JR東海と線路共用
・名鉄名古屋駅 :利用者と列車が集中
●2種類のダイヤ
(1)列車ダイヤ:列車の発着を示したダイヤ (
配布資料「列車ダイヤ」
)
(2)運用ダイヤ:編成数や車種を、記号や線種で表示したダイヤ
・ぱっと見、列車ダイヤとあまり変わらない
・「2本ヒゲ付きは 〜」「波線は 〜」という具合に
記号や線種に意味があり、列車ダイヤよりもゴチャゴチャ
・豊橋=「ト」、岐阜=「キ」
・通常 一般には出回らない業務用のダイヤ
●名鉄の車両
・特急列車(ミュースカイなど)
・一般車両
・地下鉄直通車両
・形式により連結できない車両がある =使える路線が限られる
●車両運用の効率化
・マックス8両編成で走れる路線と、走れない路線がある。
・路線合流駅で(乗客を乗せたまま)連結して、なるべく名古屋駅に
入る列車を減らす。
・ここで使用する「車両」が重要になる。連結できる車両での運用が必要。
●1日の流れ
・5〜6時台 :朝ラッシュに向けて車両の送り込み (変則的)
・7〜8時台 :輸送力 フル活用
・9〜14時台 :パターンダイヤへ移行。編成車両を削減して点検へ。
・15〜21時台:帰宅ラッシュ
・22〜24時台:停泊場所に向けた送り込み。妙に長い編成など変則的。
●ダイヤ改正までの道のり
・12ヶ月前 :現状の把握
・10ヶ月前 :テーマ、方針を検討
・9〜6ヶ月前:ダイヤ作成
・5〜3ヶ月前:車両、乗務員の運用計画を作成
・2〜1ヶ月前:公表、新ダイヤへの移行準備
●まとめ 「スジ屋とは」
・商品開発部隊
・事業収支のカギをにぎるもの
・安全の基礎となるもの
・多岐にわたる知識と経験が必要な「職人」
・地道な作業、粘り強さが必要
・関係部署に対し説明や交渉するスキルも必要
●質疑応答
・三河線の記号「MU=ミかわの ウみ側」「MY=ミかわの ヤま側」
・津島線の記号「TB=ツしま ビさい」
・知立駅 高架、、、?
あとはよくわからない「質問」ではなく、「要望」みたいなものだった。
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<感想>
丁寧な解説で「スジ屋」というものが どういう仕事なのか、
良くわかりました。
「安全マージン」は関係するだろうな とは思っていましたが、
「使用する・使用できる車両」のことや「乗務員のやりくり」などに
関しては思い至らず、奥深さを知ることができました。
「時刻表=商品カタログ」というのは面白い発想かと。
スジ屋の鬼門という「犬山駅」は、ぜひ見に行ってみたいと思いました。
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