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すぱくり人生 〜大学編


【ある文2生 X君の一週間】

僕の通う大学では、「文科2類は楽だ」と言われている。

「文科2類」とは、大学二年生までに平均点で50点以上取っていれば、何もしなくても経済学部に進学できる、前期教養課程の科類である。三年生からの後期課程に進学するため、「進学振り分け」という競争を勝ち抜くために高い点数を取らなければならない「理科1類」「理科2類」「文科3類」や、日本の将来を担う「文科1類(→法学部)」、「理科3類(→医学部)」と比べ、「文科2類」(以下文2)は格別に楽なのである。例えば、文2の楽さを象徴する格言として次のようなものがある。

「文3、文1、猫、文2」

忙しさの順に並べると上のような順になるのだという。つまり、えさを探さなければならない猫よりも、文2は楽だ、というわけだ。

僕はこの大学に文2で合格した。そして文字通り1,2年時は猫のような生活、いや、猫よりも堕落した生活を送っていた。当時の文2生活を振り返ることのできる貴重な資料はないだろうか、と探していたところ、当時サークルの雑記帳に何か書いていたような気がしたので、探して読み返してみた。すると案の定、僕がしたためた1年11月頃の文2生活が記載されていたのだ。

以下では、この内容を見ていこうと思う。読み返してみると、笑いの要素にはかけるが、当時の僕がいかに堕落した生活を送っていたかがよくわかる。自分への戒めとして以下に転載しようと思う。表現がおかしなところや、サークルの人間にしかわからないようなところもあるが、ノートに書いた内容をそのまま転記したということでお許しいただきたい。

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このノートを見ていると文系(特に文2)は楽でいいねーというように言われているみたいだが、それは誤解である。その誤解を解くために、文系が理系と比べてもそん色なく忙しいということを証明するために、ある文2生の一週間の生活を記述する。これを読めば文系がどれだけ忙しいかわかるはずである。仮に文2生の名をX君とする。

月曜日
今日はどうも風邪を引いたみたいで体がだるい。いつも出ていない1限の「日本語テクスト分析」は今日も出ないとして、2限の第二外国語(F語)も休む決心をする。X君がF語を休むのは、実は初めてである。今日は一日休養だと思って寝ていると、12時半頃クラスの友人からメールが。「今からオレんちでみんごる(みんなでゴルフ3)やるんだけど来ない?」と言われ、渋々いくことにする。5時半までゲームをした後、6時からエコプロのミーティングに参加。そのあとMクドナルドで友人たちと真面目な討論をし、12時半帰宅。疲れたので寝る。

火曜日
今日は必修、方法論基礎ともないため、クラスの多くの連中は休日にしているが、向学心にあふれるX君は2限を除き授業を入れている。すばらしい。1限は数理科学。これは1学期もとったのだが、テスト寝ブッチしたのでもう一度とっているだけであって、テストさえ受ければよいので、授業には出ない。よって11時半起床。3限の現代教育論、4限の社会統計学に出る。X君はこの二つの授業がとても好きである。だから火曜日も真面目に学校に来るのである。5限の人間行動基礎論は休講だったので、情報棟でメールチェック。1日25件来るので大変だ。そのあと高尾山Mに出るが、自分の存在意義を見つけられず、寂しい気持ちになる。結構早く終わったので山手ラーメンに行きそのあと情報棟で9時まで格闘。帰宅は10時。木曜のゼミに向けて本を読む。

水曜日
1限は経済Ⅱ。文2の要望科目ではあるが、諸事情により水曜1限は出られないので、Yさんにノートを頼む。ところがYさんも寝過ごしたらしく、この日の経済はノートなし。でも気にしない。教科書読んで勉強することにする。2限は空いているので、今日も登校は1時から。3限スポーツの前に部室に立ち寄ると、テーマ出版の話をしているため、途中から来たX君に居場所はない。3限ソフトボールで軽く汗を流した後、4限の経営政策科学に出ようとすると席がない。仕方なく生協食堂へ。食堂でクラスの友人たちと熱い議論を交わす。5限科学技術基礎論だったが、精神的疲労のために帰宅。というのも、この日採点が遅れていた日本の政治の結果が返ってきたのだが、「可」をとってしまったのだ。ちなみに60点。総合科目で可を食らうことはX君にとって最大の屈辱である。もうやる気が起こらないのでこの日は9時に寝ようとしたが、明日のゼミのレジュメを忘れており、徹夜の覚悟でパソコンとにらめっこ。明け方6時に戦いが終わった。

木曜日
徹夜の覚悟で臨んだにも関わらず、朝6時に不覚にも寝てしまい、気が付くと何と1時!1限の東洋思想史のみならず、3限の英一まで休んでしまう。でも仕方がない。X君は戦っていたのだ。そんな彼に授業出席まで求めるのは間違っている。しかしX君は偉い。4限のF語をしっかりと受け、5限のゼミにも参加。その後下北沢のとある店で天丼を食べながら今日一日を振り返るX君であった。

金曜日
今日は2限からなので、8時起床。2限英二、3限F語を真面目にこなす。4限は言語Ⅱが休講だったので、8月ギャザリングであった人に会う。X君も向こうもお互い覚えてなかったが、名刺交換をして今後よろしくということで知り合いになる。5限は何をとっていたかを思い出せなかったが、授業直前に近現代史を取っていたことを思い出したX君は情報棟へ向かう。なぜなら放課後のテーマ講義ミーティングのレジュメを作るためだ。彼は授業を切ってまでサークルのために命をささげているのだ。テーマMでもまたまた熱い議論を交わし、下北沢のMクドナルドでまたまたまたまた議論をする。11時45分の閉店まで。そして帰ると12時半。

土曜日
本来の文2なら家でのんびりと過ごすはず。が、向学心と三四郎を愛する心にあふれるX君は今日も調査のために休みを返上したのである。同僚のA君とまずは白百合の学祭に行く。断っておくが、決して女の子を引っ掛けに行ったわけではない。エコプロの一環として、ごみ調査に行ったのである。白百合はごみの分別がうまくいっていない。しかし男二人だったX君たちは、白百合の女性オーラに負け、すごすごと退散したのであった。滞在時間わずか5分。完全なる敗北であった。
 仕方がないので男の巣窟である東工大に行くことにした。噴水の前で焼きそばを食べていると、テニサーの女の子二人が近寄ってきた。硬派なX君は誘いを断ろうとしたのだが、女には目がないA君はふらふらとついていき、じゃがバターを買わされてしまった。その後スタンプラリーをすることになり、A君の目は少年のように輝いていた。よかったね、A君。6時まで東工大を楽しんだ後、帰宅。今日の夜くらいは休もうと、ゆっくりまったりのっぺりと過ごす。

日曜日
今日は本郷に行って泳ぐはずであったのに雨が降っているからたるいとA君に言われ、、しぶしぶ行くのをあきらめる。しかし昼から雨だと天気予報で言っていたにも関わらず、朝から降っていたらしく、洗濯物がすべてやられてしまったX君だった。だがこんなことではX君はくじけない。テーマ講義のために休日の今日も情報棟へ行き、一人パソコンと格闘する。途中腹が減ったので、山手ラーメンに行き(←これはX君の楽しみなのである)、その後また格闘する。しかし情報棟は6時までだったので、その後は部室で高尾山Mに出席。「なんで今頃来るんだ?」という冷たい視線を浴びつつ、X君が来て15分後にMは終了。実はX君は調査するものがないのに、人の調査にけちをつけることなんてことは出来ないと思い、あえてミーティングを欠席したのだ。努力をしていない者が高尾山Mに出席してはいけないと思っているのであった。ミーティング終了後久しぶりに部室でまったりしていると、なんとなくどこかに飲みに行こうという話になって、明大前の焼肉屋に行くことにする。酒に弱いX君が飲めないと言っているにもかかわらず、A君は無理矢理X君に酒を飲ませようとした。ひどい。しかしほろ酔い気分はX君も好きである。気分のいいまま家に帰り、そのまま寝る。

どうだろうか。このX君の一週間は激動だったといっても過言ではない。世の文系が楽だと思っている諸君は、これを見て考えを改めてもらいたい。授業に出なくとも忙しい文2もいるのだと。ここまで読んでくれた人、ありがとう。

ちなみにX君はすぱくりではない。

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どうだっただろうか?今読んでみると何てものを書いてるんだという気分になってくる。「忙しい」などと言っておきながら、こんなことを書くのに3時間くらいかかった気がする。お前暇ジャン!と当時の僕に突っ込みたいものだ。

ちなみに、本文中に出てくる「熱い議論」とは単なる駄弁りのことである。また「酒が弱いX君」というのも嘘です。そしてもちろんX君はすぱくりくんです。結構嘘が多いな・・・・。つまり全然忙しくなかったわけです。よくまあいけしゃあしゃあとこんな恥ずかしいものを書けたものだ。

とにかく今は、そんな時代もあったねと笑って過ごすことにしようと思う。

(2004年6月)



モドル

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