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知床調査 3  
2009年8月5日(水)  <鹿牧場見学、知床五湖、知床財団聞き取り、ナイトドライブ>


午前:鹿牧場と知床五湖> 

 やっぱりどうも眠りが浅く、6時前に目が覚めてしまいました。毎日平均5時間睡眠になってしまってます。出来るだけ疲れを残さないためにはもう少し寝たいのだけど、夜中に何度も目が覚めるほど眠りが浅くて困りものです。まあ朝早く起きることができたので、昨日の夜入ることができなかった温泉へ。朝風呂は気持ちがいい。

 8時過ぎに朝食会場へ。少しは昨日と変わっているのかと思ったら、全く同じバイキングでした。さすがに2日連続は飽きます。でも朝食に関してはこれがずっと続くんだよなぁ・・・。昨日は取り過ぎてしまったので、今日は少し少なめに、ヘルシーなものを中心に盛ってみましたが、結果朝から腹がパンパンになりました。バイキングだと貧乏性の性格が災いして、どうしても多めに盛ってしまいます。


<今日はちょっと軽めに>
 
<朝食会場のチタタ>

 今日から本格的に調査開始。3日目にして、ようやくいい天気になりそうです。9時半に集合してバスに乗り込み、まずはウトロ周辺にあるエゾシカファーム(通称鹿牧場)へ。知床では野生のシカが増え過ぎてしまったため、農作物等に被害が出るようになりました。そこで鹿の頭数を少し減らすため、野生のシカを捕まえて牧場に放し、最終的に鹿肉として出荷するという事業だそうで、鹿の頭数を減らすのと鹿肉の出荷で一石二鳥、というようなものです。もちろん、現実にはそんなに甘いものではないみたいですが。建設会社が新規事業参入という形で行っているそうで、苦労話を含めいろいろと興味深い話が聞けました。

 野生のシカを捕まえるには大変な苦労があるのかと思いましたが、シカは馬鹿だから餌を置いているだけで勝手にひょこひょこと牧場内に入り込むそうです。何という楽チンな捕獲!牧場で飼われているとはいえ、もともとが野生のシカなので、僕らがいると警戒して近付いてきません。シカと戯れることができると思っていたのに残念です。


<鹿がいないけど鹿牧場>
 
<小鹿が猛禽類から身を守るための場所>

 続いて近くにある鮭・鱒が遡上するという川へ。9月頃が一番多いそうですが、8月の今でもますが一生懸命遡上しようとしているように見えました。が、これはバスの運転手さんによるとそれは9月の遡上に向けての訓練をしているだけのようで、現段階では上る意思がないらしい。ちゃんと訓練しに来るところがすごい。今獲ればもうかりそうだと思いましたが、5月から8月までは獲ると罰せられるので獲れません。残念です。


<鮭が遡上する川>
 
<河口>

<5月から8月まではさけ・ます捕獲禁止>

<広々道路>

 時刻は11時半。再びバスに乗り込み、次はいよいよ世界遺産指定範囲内へ。今まで二日間うろうろしていた場所(主にウトロ)は、世界遺産に指定されている場所からは少し離れています。ウトロより先、知床半島の先端部分が世界遺産指定地域。知床3日目にしてようやく世界遺産範囲に足を踏み入れると言うのもなかなかのものですが。今日の午後に指定地域内にある「知床自然センター」で、知床財団の方にお話を伺うことになっていたので、それまでの時間を潰す(というより指定範囲内の自然状況を視察する)ために知床五湖を散策することになりました。知床五湖は知床観光の中でクルージングと並んでメジャーな部類に入ります。

 ウトロを過ぎ、世界遺産指定範囲内に入ると、新しい道路とその周りに緑がどこまでも続きます。家はありません。手を付けてはいけない自然の中にいるというのに、何となく人工的な違和感を覚えました。それは恐らく、韓国の38度線付近の様子に似ているからだろうと後で気が付きました。韓国の38度線付近も、人家は一見もなく、広い道路と地雷が埋められたために手つかずになった自然が広がっています。あのときの緊張感。知床は戦時緊張とは全く関係ありませんが、あの韓国の様子と似ていたために、変な緊張感と言うか違和感を覚えたようです。このときは全くそこまで考えが回らなかったので、妙な違和感に気持ちが悪くなりましたが。

 やがてバスは知床五湖に到着。知床五湖は文字通り湖が五つある場所で、散策路が張り巡らされています。ただ、3湖以降はヒグマ出没中ということで、残念ながら足を延ばすことはできないようです。1湖と2湖を見る20分のショートコースで我慢。いやしかし、ある日森の中熊さんに出会った♪なんてことが本当にある場所なんだねぇ。


<熊さんに出会うこともある>
 
<残念ながら先に行けない>

<散策路を進む>

<鹿が冬の飢えの凌ぐために木を食べる>

 てくてくと散策路を歩き、10分程で一湖に到着。水が澄んでいてきれいです。ここの湖の水は溶岩層から湧き出る地下水だそうで、流れ込む川がないので不気味なほど静かです。


<知床五湖 一湖>

 さらに歩くと二湖。二湖越しに見える羅臼岳が素晴らしい!天気が良くなって本当によかった。


<知床五湖 二湖と羅臼岳>

<鹿もいる>

<ここから先は立ち入り禁止>

 休憩も入れて1時間ほどで散策は終了。少し前まで、知床五湖は特に名のある観光地ではなかったそうですが、地元の営林署の職員が積極的に整備して知床の核となる観光地に仕立てたそうです。だからこそ、ヒグマの住処に人間が入って行った感覚が強くなります。訪れる観光客も多く、自然保護と観光促進のジレンマをひしひしと感じられる場所でした。

 五湖の名物に地元名産のハマナス・コケモモソフトなるものがあるというので食べてみることに。御当地ソフト品評会会長としては食べない訳にはいきません。知床の空を見上げながら、ピンク色のハマナス・コケモモソフトを食べました。運動の後の甘いものはおいしい。が、ハマナスやコケモモの味はあまり感じられず、バニラ味のソフトクリームだったような・・・。もっと味が濃ければいいのに。


<知床の空>

<ハマナス・コケモモソフト>

 知床五湖から知床自然センターに戻る道すがら、昭和30〜40年代の入植者の小屋の跡を見つけました。ボロボロになった小屋がそのままの状態で、撤去されずに残っています。厳しい開拓の歴史を感じさせるものです。


<入植者の小屋の残骸>

<岬が見える>

<午後:知床自然センターと財団聞き取り>

 1時半に 知床自然センター に到着。知床財団の職員さんへのヒアリングは3時からなので、それまでは遅めの昼食を食べたり、センター内を散策してお勉強することに。センター内には熊の毛皮が置かれてあり、毛の質感を楽しめるようになっています。いやしかし、熊はでかい。


<知床自然センター>

<熊の毛皮>

 センター内にある食堂で昼食。調査に来てから食べ過ぎているのと、午前中に鹿牧場を訪れたこともあり、軽めのエゾシカバーガー(500円)にしました。鹿肉は驚くほど癖がなくて、都内のハンバーガー屋で牛肉と言われて出されても分からないくらいです。おいしい。


<エゾシカバーガーセット>

<エゾシカバーガー>

 食後、近くにある 「100平方メートル運動ハウス」 を見学。今回の知床調査の肝の半分はこのしれとこ100平方メートル運動に関することですが、ここで書くとかなり長くなるので、詳細は省略します。入植の失敗と、土地を守ろうとした当時の町長の熱い思い。日本で最初の、自治体主導型のナショナルトラスト運動。詳しく知りたい方は、手始めに斜里町HPにある 「しれとこ100平方メートル運動のあゆみ」 のページをどうぞ。


<100平方メートル運動ハウス>

<寄付者の名前が並ぶ>

 3時から知床財団の職員さんへの聞き取り。今回の調査の、前半の山場でもあります。斜里町が立ち上げた財団にも関わらず、独自の道を行こうとする財団。斜里町からの出向職員だというのに、知床の自然保護のあり方を巡って斜里町と喧嘩になるくらい議論をする。どうしたらこういう仕組みが出来上がるのでしょうか。パーソナリティという要因が非常に大きなものだということが分かりましたが、ではもしその重要な一人の人がいなくなったらどうなってしまうのでしょうか。この辺りは非常に難しい問題です。ヒアリング内容に関しては、残念ですが(そして当たり前ですが)ここでは詳しく書けません。

 5時に聞き取りを終え、今日の日程は無事終了。夕暮れの時間が近づいて、プユニ岬から眺めるウトロの眺めが素敵でした。ここは知床八景の一つに数えられているそうです。前日のオロンコ岩に続き、二つ目をクリア。


<知床八景 プユニ岬からのウトロの眺め>
 
<オホーツク海が染まる>

 ホテルへの帰り際、バスの運転手さんが「今日の夜、よければ知床峠まで野生動物を見たり星を見たりするナイトツアーをしませんか」と提案してきました。運転手さんにしてみれば、観光をあまりせず、毎日5時すぎにホテルに入る僕らはかなり楽なお客さんだそうです。普通の観光客なら朝早くから夜遅くまで引っ張り回されるのに、今回は楽させてもらって申し訳ない、と逆に何て言えばいいか分からない謝り方をされました。そのお詫びの意味を込めて、ナイトツアーの提案をしてくれたそうで、じゃあ行ってみるかと。僕は動物にはあまり興味がありませんが、夜の星には興味があります。

 一旦ホテルに戻り、夕食会場に向かっていると、遠くの窓から眩しい夕焼け色が差し込んできていました。夕焼けに導かれるままに建物を出ると、そこにはオホーツク海に沈みゆく真っ赤な夕日が。嗚呼、きれい。一日くらいは綺麗な夕日を見ることができたらなぁと思っていたので、無事に見ることができてよかった。海に沈みゆく夕日が醸し出す寂寥感は何とも言えません。


<オホーツク海に沈みゆく夕日>

 今日の夕食は趣向を変えて鮭のちゃんちゃん焼きということで、いつもと違う会場に通されました。今日の朝獲れたばかりだという鮭とホッケ、ホタテ。料理人のおじさんが鉄板でちゃちゃっと料理してくれて、これが豪快でうまい。ビールが進んで困ります。北海道はおいしい食材が豊富で羨ましい。余ったちゃんちゃん焼きを白いご飯の上に載せて「ちゃんちゃん丼」にすると、これがまたうまいんだ。というか、毎日こんな贅沢な食事をしていていいのだろうか。役得ですなあ、すみません、という感じです。いや、ホント。


<ちゃんちゃん焼きの材料>
 
<生秋刀魚の刺身も>

<ちゃんちゃん焼き>

<ホッケとちゃんちゃん焼き>

 食後は有志でナイトツアーということでしたが、片付ける仕事があるY特講さん以外が全員参加という、かなりの参加率でバスに乗って知床峠へ。普通にナイトツアーに参加すると一回5000円とか8000円かかるという話でしたが、今回はもちろんタダです。バスは一路知床半島の真ん中に当たる知床峠へ。標高700mの小高い場所です。途中キタキツネやシカに遭遇しました。残念ながらヒグマには会えませんでしたが、まあキツネを見ることができてよかった。

 知床峠に着くころには少し雲が広がっていて、さらに満月ということで星はほとんど見えない状態でした。運転手さんは恐縮しきりでしたが、逆に満月というタイミングで来ることが出来たので満足です。知床峠からは羅臼側が見下ろせ、さらに天候が良ければその先に北方領土の一つである国後島が望めます。今回は月明かりのお陰で、うっすらと国後島が見えました。写真30秒露光しているのでかなり明るくなっていますが、水平線の部分で一部濃くなっているのが国後島です。まさかここで初の北方領土を見ることになるとは。


<知床峠から望む満月と国後島>

 ということで満足なナイトドライブを終えて10時頃ホテルへ。その後はいつものように飲み会ということでしたが、打ち合わせすべきことが多いのと皆さんお疲れのようで、11時にはお開きに。僕は眠くて仕方がなくて、先生方がいるというのに隣の部屋のベッドに横になる始末で、どうしようもありませでした。今考えるとすみません。僕の部屋の二人は明け方4時近くまで作業していたようで、本当に申し訳ない限り。


モドル

                                         

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