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西船橋駅 中間改札の不条理



エル・アルコン  2007年4月6日



PASMOスタート、Suica共通化と歩を同じくして新設された西船橋駅の中間改札。
カード共通化に伴い不可避となった「ある事情」がこの設置を促したのですが、それを考慮しても不可解な点が多く、かつ、カード導入とは直接関係がないような措置まで一緒に実施されるなど、どうも素直な話ではありません。
この新たに設置された中間改札を実際に見る機会があったので、少し
論じて見ましょう。

中央通路の中間改札


※この作品は「交通総合フォーラム」とのシェアコンテンツです。

※写真は2006年7月及び2007年3月撮影


3月18日のPASMOサービス開始、Suicaとの共通化に伴う諸問題は別稿で論じましたが、その中で指摘した中間改札の問題、今回その象徴のように見られているのが西船橋駅のそれです。

西船橋駅に限らず、これまでノーラッチだった乗り換え駅における中間改札の設置は、経路把握やフェアライドの問題を考えると、止むなしとせざるを得ない面もあるのですが、この西船橋駅の中間改札は、そうした一般論とは分けて考えるべき問題が多すぎるのです。

●西船橋駅の概要
JRと東京メトロおよび東葉高速が乗り入れる西船橋駅。JR総武線と東京メトロ東西線、東葉高速線は、4面7線のホームが並んでいる構造は、1969年の東西線開通当時からの構造です。
4面のホームは橋上駅の1箇所しかない改札につながる1本の連絡通路でつながっており、番線も1番線から8番線までの通し番号が付けられていました。
当時は駅全体が国鉄の管轄で、あたかも全部が国鉄の駅の趣でしたが、そもそも東西線が総武線のバイパスとして建設された経緯があり、平日の朝夕は津田沼への直通運転もあるため、他社線乗り換えと言うより、国鉄他線への乗り換え駅のような感じでした。

直通需要が旺盛にもかかわらず、東西線と総武線の乗り入れが平日朝夕の一部の列車に限定されることから、乗り換え客の多さは際立っており、かつ、総武線ホームが中線を挟んだ2面3線でホームが狭いため、階段も狭く、ラッシュ時に限らず階段の混雑が慢性化していました。
そのため、東京側の先端部に乗り換え専用の階段がまず増設されました。

1978年の武蔵野線(建設中は「小金線」だった)開通時には、同線は従来線に直交する形の高架ホームを1面2線設けており、中央通路から袋小路のように通路が伸びていました。
後に1981年の京葉線開通時(かその前)に、1面2線が増設されています。
この時か時を置いてか、千葉側に連絡通路が増設され、こちらは武蔵野線などの高架ホームのコンコース経由で改札口にもつながっています。

●中間改札の概要
基本的な構造はその時から変わりません。
2005年にエキナカが出来、エレベーターなどバリアフリー対策がなされたものの、乗降に関する基本的な構造はそのままでした。

ところが2007年3月18日のPASMO導入、Suica共通化を控え、中間改札が導入されると言う話が出てきたのです。
東西線は総武線、中央線のバイパスと言う位置付けでの経緯から、西船橋駅及び中野駅でJR線に直通していることもあり、西船橋駅と中野駅は同じ構内の並びホームに発着しています。
そのため、東西線を通り抜けて総武線と中央線を利用する乗客は、特に直通列車を利用するとどちらの経由かを確かめるすべがありません。

きっぷの時代には、「正しい経路でお買い求め下さい」と案内し、あとは乗客の良心に任せるしかなかったのですが、SFカードの時代となるとその判定は改札機任せです。それでもパスネットとイオカード(Suica)に分かれていた時代なら、カードの種別で経路を判定することが可能であり、年初に東葉線から東西線経由で中野まで乗車し、パスネットの残額不足で窓口精算したときも(精算機での精算が出来なかった...)、メトロ経由で精算されましたが、今回の共通化で、全くその手段がなくなったのです。

中野側は三鷹直通も多く、かつ中野駅ですら同じホームからJR線経由と地下鉄経由が出るという状態では打つ手が無く、平日朝夕を除けば全てここで乗り換えになる西船橋駅に白羽の矢が立ったのです。

中間改札は3つの通路に設置されました、と言えば簡単ですが、1つしかなかった改札がそのままだと、降車客が利用線区によっては中間改札→出口改札と二度手間になるため、改札口も分離し、メトロ側に新しい改札口が誕生しています。
また、中央通路はともかく、単に乗り換えることだけを考えて作られた東西の連絡通路は、精算機、精算所の設置もあって、スペースが相当苦しくなっています。

新たに設置されたメトロ・東葉専用改札従来からの改札はJR専用に


●中間改札がまねくボトルネック
では、何が問題なのか。

一つの駅のどこにでもあるような連絡通路の途中に突然設置された中間改札。そもそもそのような設備の設置を全く想定していなかった構造ですから、突如現れた「関所」は、自動改札機を通る手間もあって、乗り換え客の滞留を招きます。

もともと中央通路しかなかった時代は、東西線が到着しても、ここがネックで総武線を1本逃す、ということが日常茶飯事であり、1本、そして2本増設されてからも、改札やトイレ、武蔵野線に近い中央通路は混雑が目立っており、さらにスムーズに流れることを期待しているのに、逆に通路で滞ることをある程度前提にした設備の設置は、利便性を大いに損ないました。

中野口と違い直通が少なく、かつ西船橋駅自体が目的地になることが少なく、隣の船橋や津田沼まで総武線に乗り継ぐ乗客が利用の太宗ですから、連絡通路は命綱であり、そこをいかに捌くのかが開業以来の課題だったはずなのに、と言う思いが強いです。

東京方通路の中間改札


●中間改札で滞留する必然
それでも正しく乗車券類を購入していれば、少しタイムラグはあるとはいえ、改札機がエラーを起こさなければ流れると思うでしょう。
ところが実際には、休日を中心に中間改札で戸惑う利用者が多いと言う話です。これは不慣れなだけかと思いたいですが、一方で利用形態を考えると、ここに中間改札を設置したため、ここで精算を余儀なくされるケースが出てくるのです。

乗客が全部が全部ICカードを持っていないわけですし、500円のデポジットを払ってまでたまにしか使わないような鉄道のカードを買うインセンティブが働くとは思えません。
一方でそうした乗客はきっぷを買うわけですが、津田沼駅で新京成、船橋駅で東武野田線から乗り換えてくる流動を考えると、新京成や野田線の駅で西船橋駅までの通しきっぷを買うケースが多いと考えられます。
これは、津田沼駅や船橋駅での券売機の混雑、特に船橋駅は野田線から来ると、きっぷ売り場が改札を通り越した向こう側という位置関係の悪さもあり、通しきっぷを求めるインセンティブが働くであろうことは容易に想像できます。

逆にメトロ側からの流動を見ると、西船橋接続でJR線まで購入できる券売機がある駅が実は限定的であり、さらに都営線から来る場合は乗継割引があるから西船橋駅まで買うことになります。
このように、西船橋で何らかの精算が必要になるケースが確実に存在します。そうした事情はフェアライドにも影響することから中間改札の設置は理に適っているとはいえ、そもそもここでの精算を想定していない構造では、混み合うのも無理はありません。

案内係急募
4月30日までは案内がつくようです


●「エキナカ」を巡る問題
上述の通り、2005年に西船橋駅は大きく変わり、エキナカ「Dila西船橋」が開設されました。
当時は中間改札など無い状態でしたから、メトロ側(メトロ〜東葉高速で完結する流動)の利用者も、エキナカを使えましたし、逆にメトロ側にあるショップをJR側の利用者も使えました。
また、トイレはオストメイトや障害者対応のものがエキナカにも出来たため、JR、メトロの両方にあるのですが、当初はタイミングや混み具合に応じて使い分けが出来ました。

ところが中間改札の設置です。基本的には行き来は出来ないはずですが、ICカードの場合、定期券はどうやら行き来が出来、SFカード機能で乗車中は相手方への移動まではできるが、戻れないようです。改札から外には出られるようですが、JR線乗車中にメトロのミニプラに寄っていた人は、SFカード機能だと西船橋で打ち切り計算になるわけです。
メトロ側からエキナカ利用は、「ご法度」の折り返し乗車で無い限り打ち切り計算なので、いったん両方の改札口経由で戻るという手間さえ惜しまなければ可能です。

とはいえ両社の商業施設利用者にとっては面倒であることには変わりが無く、少なからぬ影響が出ることは確実でしょう。
特に規模が大きなJR側にとっては、なにやら自爆の気も無きにしも非ずです。

JR側の「エキナカ」Dila西船橋メトロ側のミニプラ


●連絡通路の閉鎖
これは本来中間改札設置とは関係無いはずですが、東京側の連絡通路の利用時間が朝夕に限定されました。(6時〜10時、16時〜23時)

精算用の係員の配置とコストの関係であることが透けて見える話ですが、ただでさえ中間改札設置で通路の滞留が懸念されるというのに、通路そのものを閉鎖すると言うのは話になりません。
まさかエキナカに行ける「便利な」通路をお通りください、と言う深慮遠謀では無いでしょうが、ただでさえ混み合う中央通路の負荷が高まりました。

特に東西線は日中、5番線から発車する東葉勝田台行き快速の直前に到着する西船橋止まりの普通が7番線に入るため、南行徳〜原木中山から東葉高速線への移動は階段を使った乗り換えになるのですが、使える階段が減ることになります。

また、東西線は構造上、前後に出口や乗り換え階段がある駅が多いのですが、その中で中野側がメインになっている駅が多く、東京側の連絡通路は東西線内の利用を基準にすると利便性が高いのですが、これが使えないと言うのは意外と不便です。

そうは言っても日中は閑散としていることも事実で、よしんば日中は仕方が無いとしても、深夜23時で閉鎖すると言うのは困った話です。
この時間帯、各線、バス路線の最終連絡が絡む時間帯であり、かつ東西線も総武線も東葉線も本数が限られていますし、どちらも遅れがちです。
各線の列車が到着すると、階段や通路をあわただしく急ぐ人が絶えない状態で、連絡通路が1本閉鎖される、しかも東西線側で利便性の高い側の通路ですから、中央通路東京側の負荷は相当高まります。
東葉線開業後は、これまで東西線ホームから総武線ホームへの一方的な流動だったものが、総武線ホームから東葉線ホームへの流動も発生しているため、流動が輻輳します。

だからといって駆け込み乗車は危険ですから余裕を持ってご利用を、という建前論では現実を見ていない書生論であり、この時間帯で大昔のように連絡通路(さらに中間改札)の混雑で1本見送りなどと言うのは悪い冗談です。

通路閉鎖を告げるお知らせ


●直通列車の問題
中間改札設置で完全に分離できなかったのが平日朝夕に走る津田沼直通列車です。
この列車をJR線内のみ利用するケースは少ないとはいえ、これを運転するために総武緩行線が西船橋止まりになっているため、これが使えないと乗車チャンスが減るわけです。

中間改札を通り、この直通列車を利用した場合、SFカード機能では西船橋で打ち切り計算になると言う話もあり、有人通路を通らないと何らかの問題が発生するようです。

直通列車がなくなれば完全分離されるので、エキナカ利用は別として、後述する運賃問題などすっきりした形態になるはずですが、そもそも総武線船橋以遠との流動が多い中での直通運転中止はサービス低下であり、かつ西船橋駅連絡通路の混雑の激化に働くこともあるため非現実的です。

●運賃計算の問題
東西線が総武線のバイパス機能をもって開業した経緯や、総武緩行線との速度差から、東西線を経由、また、東西線を通り抜ける流動が少なくありません。
このため、千葉〜下総中山と千葉みなと〜西船橋の各駅から東西線を経由して中野〜三鷹の各駅相互間の利用においては、前後のJR線の営業キロを通算して運賃を計算し、メトロ線の運賃と合算する「通過連絡運輸」の取り扱いをしています。

例えば津田沼から阿佐ヶ谷までで考えると、本来なら境界駅で打ち切り計算になって、

津田沼−西船橋:160円
西船橋−中野:300円(メトロ経由)
中野−阿佐ヶ谷:130円
合計:590円

となるところ、通過連絡扱いになると、

津田沼−西船橋/中野−阿佐ヶ谷:160円
西船橋−中野:300円(メトロ経由)
合計;460円

となるのです。これは前後のJR利用時の計算において、運賃は5km刻みで計算するため、打ち切ると本来はこの距離まで乗れるはずだが切り捨てられていた営業キロが、通算することで無駄なく使われることになるからです。(上記の例だと、津田沼−西船橋が6.1kmで、160円区間の刻みは6〜10km。中野−阿佐ヶ谷は2.6kmなので、通算して計算すると8.7kmで、同じ160円区間の運賃になる)

ですから中間改札を経由すれば通過連絡扱いになるかと思いきや、なんとSFカード機能では単純打ち切り計算(上記の例では590円)になるというのです。
さらに経路を識別できない津田沼直通列車を利用すると、なんと全線JR経由で計算され、690円もかかるのです。

本来の運賃が460円ですから、1.4倍、230円増しの計算は酷い話ですし、経路が特定できるのに130円も高くなるというのも理解できません。
この事態を回避するためにはあらかじめ磁気きっぷの連絡きっぷを購入するようにと説明していますが、津田沼直通列車はともかく、中間改札を作ったことで、メトロ経由とJR経由を識別できることになったはずです。
少なくとも中間改札経由では規則の原則通り計算すべきであり、不可能では無いはずです。

ちなみに、駅の掲示では津田沼−三鷹を例示して、単純打ち切り計算だと通過連絡より30円高いとしていますが、阿佐ヶ谷のように130円も違うケースがあるわけで、本則を適用しないことによる不利益を些少に見せようとするトリックを感じます。

それでも直通列車の問題が残りますが、これも直通列車の時間帯は通過連絡適用の区間に限り、通過連絡で計算するというようなプログラムにするというような救済が必要です。
かつて東武線の北千住駅改良前、北千住駅での乗り換えを極力減らすために、北千住乗り換えで地下鉄銀座線や浅草線へ向かう定期客に対し、朝ラッシュ時に限り浅草、また業平橋→押上での乗り換えを認める(乗り換え駅以外の経路外の各駅では下車禁止)「浅草う回」「押上う回」(「う回(=迂回)」は定期券面のスタンプの表記)の制度がありましたが、これに該当する磁気定期券は、その時間帯のみ浅草の東武や営団(当時)の改札機を通れたわけで、そのような時間限定的な取り扱いをすべきです。(私も一時期「浅草う回」扱いの定期で通勤しており、浅草経由を経験しています)

そうなると本当にJR経由の客が不当に安くなると言う批判もあるでしょうが、上記の通り通過連絡扱いになる区間は限定的であり、かつこの区間では東西線経由が安くて速いということが広く知られていますから、そもそも経路が特定出来ない非定期客で本当にJR経由というのは少ないはずですから、割り切って考えるべきでしょう。

日中はこの通路はシャッターが下りる


●問題が多すぎる今回の施策
とはいえ中間改札が無いと通過連絡どころか単純打ち切り計算も出来ないわけです。
しかし、それを割り引いて考えても、今回の中間改札の設置は問題が多すぎます。流動的には特に西船橋以東の総武緩行線は、東西線との乗り換えがメインとも言える状態で、その乗り換え流動の利便性を物理的に下げたこと。特に本来は今回の変更とは関係が無いはずの、連絡通路の閉鎖に至っては、不便さの度合いをいたずらに増すものであり、本来は少しでも影響を緩和することを考えるべきところ、全く逆の効果になっています。

そう考えると、特定の利用者に対してはSFカード機能の利便性を捨ててもらう形になりますが、通過連絡を含む西船橋−中野間の通り抜け利用の場合は磁気きっぷの購入を原則とし、SFカード機能ではJR線経由で計算、と割り切って、中間改札を設置しないと言う選択肢もありえました。(東葉線内発着はメトロ経由で計算していいでしょう。わざわざ東西線の快速を降りてJRの各駅に乗って中野へ向かうようなケースこそレアでしょうし)
これであれば、通り抜け客にとっての磁気きっぷ購入の不便さはあっても、中間改札での滞留や、おそらく要員問題が理由であろう連絡通路の閉鎖といった不便は回避できるわけで、相対的にはまだマシだったのではと思うのです。

常磐緩行線、千代田線の西日暮里接続もそうですが、なんとか会社間を越えた輸送の連携でバイパス機能を保持するなどの輸送力確保を行ってきたものが、今回のPASMOサービス開始、Suicaとの共通化という、支払手段の「シームレス」化によって、物理的、経済的な「バリア」を生じせしめるとは、なんとも皮肉なものです。

少なくとも西船橋の中間改札を利用する乗客にとって、こうなるくらいなら本当に1枚のカードで乗れるほうが良かったのか。本来疑うべくもなく便利になったはずのそれを問いたくなるくらいの「サービスダウン」であり、さらにそれをできるだけ緩和する努力が見えないというところが、他所で見られる「問題」と一線を画した「問題」なのです。




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