このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


「温情停車」はなぜ生まれたか


毎年1月から3月にかけて発生するのが受験生の誤乗によるいわゆる「温情停車」です。
これに対しては、あくまで自分の不注意であり、受験生だからと特別扱いする必要はない、という批判が強いのも確かです。
しかし、その誤乗が、起こるべくして起こった、ということがもしあったらどうでしょうか。

ここでは、必ずしも本人の責任だけとはいいがたいあるケースを取り上げます。


※このテーマに関しては2003年2月に、「【検証】近未来交通地図」で論じています

写真は2003年8月撮影


2003年2月に、その「事件」は起きました。
高校受験のため蘇我から西千葉に向かおうとした女子中学生が、総武線経由の快速電車に乗るべきところ、誤って京葉線経由の通勤快速に乗ってしまい、当時の正規の停車駅である八丁堀ではなく、手前の新木場に臨時停車して降ろしてもらったというものです。
幸い、受験には間にあったのですが、その扱いには批判の声が数多く上がりました。

さて、乗った電車もまた運が悪いとしか言いようがないほぼノンストップの京葉線通勤快速だったことが騒ぎを大きくしたのですが、この「事件」、件の女子中学生の不注意と片付けていいものだったのか。
実はその影に、「これでは間違えるのも無理はない」というしかない事情があったのです。

蘇我駅改札を通ってまず見える表示

蘇我駅の改札は1箇所。そこを通ると写真のような表示に出会います。
千葉で乗り換えて西千葉に行くのであれば正面の3番、4番線への階段は京葉線ですから行ってはいけません。千葉方面は左手1番線、2番線に向かいます。

よく見ると「(一部京葉線経由)」とありますが、朝と深夜のみですから、お休みの日にたまに電車を使うような時にはそこから京葉線が出ることはなかったでしょう。

そしてホームに降ります。
そこには「千葉、東京方面」と大書きした看板が目に入ります。やはりここにも「特急、快速で京葉線に直通の電車は2番線」と添えられてはいますが、メインの表示が目立ちますね。
さらに困ったことに、ホーム、そして階段上の通路には発車案内がありませんでした。(今も無いのでは?)

ホームに降りたところの掲示

口を開けている罠はもう目の前です。

普段は電車通学でない中学生、さらに電車区間でない駅ですから、何時の何行きの電車に乗って、ということは調べていたか、親か担任に聞いていたでしょう。
そして、そこには恐ろしい罠があったのです。

向かって左側1番線に到着したのは内房線からの快速大船行き。右側2番線には外房線からの京葉線経由通勤快速東京行きです。
この2つの電車は、7時45分発の同時発車だったのです。
ホームに案内はありません。放送は流れていたでしょうが、雑踏と電車の音の中で不慣れな中学生に聞き分けろというのは酷でしょうか。
そして中学生は魅入られたかのように2番線の通勤快速に乗り込んだのです...

千葉、東京方面のホームに着いた「東京行き」に乗ってのこの悲劇。単なる不注意とはいえません。
蘇我以遠から乗ってきていれば、車内放送で「この電車は京葉線経由」と言いますから、この電車が乗るべき電車かと言う判断は容易に付きます。しかし、同じホームの両側にいる電車。1番線、2番線と言っても、目の前の乗り場が何番線か、実は理解している人は少ないでしょう。

さらに電車の行先表示を見比べると「大船」と「通勤快速/東京」です。京葉線経由の表示などありません。千葉、東京方面のホームから乗るとして、東京行きを選ぶことをどうして責められるか。千葉で乗り換えと言うことを聞かされているでしょうから、通勤快速、と言う耳慣れない種別でも、県都の千葉を通過する電車はないと信じたのでしょうか。
E217系と201系、違いに気づけというのも酷でしょうし、E217系のほうも京葉線の205系と同じ銀色です。

例外になる列車が終点近くまでノンストップという救いようがないタイプなのに、案内面でのフォローが著しく欠けていたのです。
ただでさえ間違いやすいところに、同時発車と言う「発車時間」と言う識別手段も無力化する状態にありました。もちろん、内・外房と総武、京葉の相互の流動を一番効率的に捌くこのダイヤは便利ですが、間違わないようにする努力も必要です。
2002年12月のダイヤ改正で出現したこの同時発車、驚いたことに現在も続いています。

あれから3シーズン目になりますが、もう悲劇は起こさないように案内を改善してほしいものです。





習志野原の交通局へ戻る

習志野原今昔物語に戻る

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください