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東京湾早周り
アクアバスと東京湾フェリー見てあるき

割高な通行料金の影響で利用が伸び悩む東京湾アクアラインですが、ひとり気を吐くのがアクアライン経由の高速バス群です。
当初は木更津と羽田空港、川崎、横浜という対岸両都市を結ぶ路線からスタートしましたが、羽田アクセスのはずのリムジンバスが、羽田空港でそのままモノレールや京急に乗り換えて都心に向かうと言う想定外の利用も多く、やがて東京−鴨川の「アクシー号」、東京−館山、白浜の「房総なのはな号」など、都心直結型の路線が立ち上がり、好評を博しました。
特に木更津、君津地区の人気は高く、東京駅、浜松町をターミナルとする京成系と、品川をターミナルとする京急系が競合、というより両グループとも順調に利用を伸ばしました。

あおりを食ったのがJR内房線で、廉価な移動ニーズも無視できないと総武線経由の内房線快速を日中毎時1本に増発しましたが、館山道の延伸、富津館山道路の全通にもはやこれまでと、2005年12月のダイヤ改正では看板列車の特急「さざなみ」が日中の便を大幅に削減し、事実上の通勤特急化するなど、主役が変わりました。
思えば房総半島の交通の「主役交代」といえば、明治〜大正期の鉄道整備に伴い、それまでメインだった内航汽船が廃れて以来の話ともいえます。

こうした激変の時期を迎えつつある東京湾岸、内房地区をこの夏、アクアライン経由のバスと、短絡ルートとしては老舗の東京湾フェリーで早周りとしゃれ込んでみました。

君津バスターミナル


写真は2005年8月撮影


●定着著しい君津線
2005年8月初めの平日、盆休みには早いですが夏休みをとって上京した際、ふと思い立ってアクアバスと東京湾フェリーでの早周りを志しました。
木更津金田ICそばの木更津金田バス停がバスターミナルになったこと、君津バスターミナルの現況、そして2004年暮の登場からわずか9ヶ月で廃止される千葉−金谷港の高速バスを見ておきたかったのですが、時は夏、それならば暑気払いに船旅と言うのも乙なものと、金谷港からフェリーで久里浜に抜けたのです。

海ほたるから見たアクアライン

スタートは東京駅発13時半の君津駅行き。
実は時間配分を読み間違え、その前の用事からの移動が厳しく東京駅に着いたのは25分。京成系の高速バスが出るのは、銚子など東関道方面が前からのみずほ銀行前で、鴨川、君津などアクア方面が住友生命前と分かれており、かつ若干距離があります。
八重洲地下街を駆け抜け君津行きの京成バスに飛び乗りましたが、落ち着くと汗が噴出しました。車内は17人の乗車で、夏休みらしく家族連れもいれば、新日鉄関係でしょうか、ビジネスマンもいます。

アクアバス発祥の地ともいえる木更津、君津エリアですが、東京直結路線が出来たのは意外と新しく2000年7月。当時試乗してみましたが、シャンデリアもついた貸切改造の日東バスの姿と、新日鉄君津製鉄所の構内(厳密には入構証が必要なエリアの外側だが、製鉄所ゲートの内側である)に乗り入れ、そこにバスターミナルがあるのに驚きました。
2003年10月に京成、京急両方が大増発(この時東京駅のバス乗り場が二分された)し、君津、木更津が分化された格好になりましたが、これを後押ししているのが2003年4月に完成した君津バスターミナル。館山道君津ICまでの開通もあり、君津直行型の運行につながっています。

バスは鍛冶橋から京橋ランプに出て首都高環状線へ。まったりと掘割の中の環状線を行き、芝浦からレインボーブリッジを渡ってお台場の賑わいを横目に湾岸線に入ります。千葉というと葛西方面の常識を破り、大井から羽田、そして多摩川河口をくぐり神奈川県に入るこのルートが、東京湾を迂回する陸上ルートを短絡する格好になっていますが、横浜と木更津の案内が並ぶのはいつになっても違和感を感じます。

レインボーブリッジを渡り湾岸線へ

浮島JCTをぐるりと回り、アクアラインへ。延長10kmあまりのトンネルを抜けると横断橋部分へ。気温のせいか靄ってて視界はあまり優れません。そのうちに漁村の趣の金田海岸に至り、木更津金田の料金所では出口車線を使います。

アクアラインを渡りきると金田海岸

木更津には寄らず君津直行のバスですが、木更津金田は例外。君津線のほか、木更津線、鴨川線、勝浦線と京成系の高速バスが総て立ち寄るターミナルとなっており、P&Rの拠点になっています。
もともと高速道高架下の駐車場とアクア連絡道側道のR409にある路上停留所の組み合わせでしたが、2004年12月にICそばにあるアクアわくわく市場の駐車場を乗っ取るような形でバスターミナル化しており、いまはいったんR409からそれてバスターミナルに寄って一周します。
一方で京急系は当初からの袖ヶ浦BTを使っていますが、アクア横断道と交差するR16を千葉方面に少し進んだところにあるBTに京成系は寄らず、京急系は脇を通りながら金田には寄らないとちぐはぐ。高架下の豊富なスペースを生かして一体化すれば利便性も高まるのにと思うのですが、手探りで始めたところ大当たりした袖ヶ浦BT側は元祖の意地もあるでしょうし、木更津市と袖ヶ浦市の鞘当ての感もあり、系列によってP&R拠点が違うままになっています。

東京からわずか40分というその木更津金田では3人下車して再びアクア連絡道へ。かつては「湾横連絡道」という実も蓋もない呼ばれ方でしたが、アクア連絡道となっています。もっとも、木更津JCTまではアクアラインというイメージですから、金田で区切るのもお役所仕事の感が否めません。
木更津JCTはかなり内陸になるので手戻り感があるのですが、君津市街へのアプローチを君津ICから製鉄所方面に向かって山から浜へ攻める格好にして克服しています。館山道に入り順調に南下すると、これまでR128、内房線を越えて海岸のR16に直結していた木更津南ICが枝線扱いになり、木更津南JCTを設けて君津、館山方面との分岐になっています。君津方面から木更津南にも行けるのですが、なぜ木更津南ICのロングランプ扱いにしなかったのかは謎ですが、通行料金の関係でしょうか。

この先は君津IC

車線が1車線に絞られると最終の君津IC。ここから富津中央ICまでの区間が未完成ですが、工事区間の土盛りはあるものの、完成には程遠い格好で、何時になるのでしょうか。
君津BTはICを出て右手に進んで程なくで、所定では57分ですが、若干遅れての到着。それでも小一時間ですから速いものです。BTでは7人が下車して、バスは君津市街地に去ってゆきました。

君津BTに到着


●君津BT、そして金谷港線
君津BTは一列に並んだ3レーンのバス乗り場。バスプール兼用の広場を挟んでトイレと待合所がありますが、駐車場と反対側になるせいかバス停に行列が出来ています。バス乗り場と背中合わせに駐車場が広がっており、いくつか空きスペースは見えますが、8割方埋まっているのは立派で、通勤利用をはじめとするニーズに応えている様が分かります。

君津BTの駐車場バス待機場と待合室

バス乗り場は東京行き、金谷港線両方向と、羽田行き、ローカルの3つに分かれてますが、ローカル路線はこの9月15日限りで金谷港線ともども消えており、純粋なP&Rになっています。もっとも、高速バスは市内に停車するのでフィーダーはあまり必要としていませんが、将来館山道が全通したとき、館山方面との高速バスとの連携を考えると、その時には考える必要があるかもしれません。

君津BTに入る日東交通の一般路線バス

金谷港行きの待ち時間は15分ほどですが、君津行きから降りた客は総て駐車場に消えました。
一番先頭側3番乗り場は東京行きと千葉行き、東京湾フェリー(金谷港)行きの乗り場ですが、5,6人が並んでいます。これはいかに、羽田からの乗り継ぎか、と思っていたら、14時半の東京駅・浜松町行きがやってきて全員乗ってしまいました。

バスを待つ人は多いが...皆東京行きの車中へ...

入れ替わりに現れた33分発の金谷港行き天羽日東バスは6人乗車で全員下車。ここからは私だけと散々です。実は君津行きで到着したときICで千葉行きとすれ違ったのですが、あまり乗ってませんでした。せめてさっきの東京行きに乗り継いだ人がいくらかはいたと信じたいです。

金谷港行きはここで全員下車

君津BTを出たバスは、IC前の大通りではなく一本南の通りを進みます。ほどなくR128に出て左折しますが、R128もやがて片側1車線になるとそこからは「房総の道」です。
富津中央ICまでは高速がなく、R128に頼りきりの区間ですが、夏と言うのに両方向ともほぼ順調。しかし流れていても遅いことには変わりありません。浅間山IC改め富津中央ICから先もR128を行きますが、ここから富津竹岡ICまでは高速自動車国道の館山道で、富津竹岡からは一般有料道路の富津館山道路と言うのはややこしいです。どっちも同じ対面通行で、なぜ竹岡で区切るのかでしょうか。

高速佐貫や高速上総湊と言った停留所があるはずですが、見落としたようで見つけられませでした。どうもR128上の路上停留所のようですが、ちょっと高速バスの停留所にしてはお粗末に過ぎます。
P&R拠点でもないし、クルマ利用でも駅という乗降場所があるだけ内房線のほうがマシというのが実態のように見えてきます。もちろん、海岸沿いの狭い土地柄、集落も駅沿いにあるため差別化が図れないのも痛いです。

海沿いに進むと金谷港。東京湾フェリーの桟橋脇に着いたのは15時15分の定時に少し遅れていましたが、普通電車でも30分強の君津−浜金谷に40分もかかっては厳しいのも無理はないです。天羽地区から君津乗り継ぎ東京方面というのも、上総湊駅と高速竹岡に停まる「房総なのはな号」が直通するわけですし。
それにしても、千葉起点の高速バスは千葉−銚子線といい、なぜか根付きません。国鉄時代そのままの房総ローカルに負けるのですから、道路事情の悪さがすべてと言う感じです。唯一鴨川へのカピーナ号は定着しましたが、久留里など内陸のニッチ需要と、まあ房総半島横断による短絡がカバーしているのでしょう。乗り入れる東京ドイツ村が貢献しているようには見えませんし。

折り返し待機中の千葉−金谷港線


●そして東京湾フェリー
フェリーの出港は15時半。券売機もありますが、万札だったので昔ながらの出札で購入すると航送と同じスタイルのなかなか立派な切符です。35分の航海とはいえ、船の特徴として港湾設備もしっかりしており、土産物を購入して乗船しました。

金谷港金谷港出札。京急連絡を前面に...


船はしらはま丸。とりあえずソファータイプの窓側の席に座りましたが、空いています。と、やがて航送組が現れるとそこそこの乗りになりました。クルマだとアクア経由のほうが早そうですが、それでもクルマ利用がメインと言うのは変わりません。もっとも、昔はR128にまでフェリー待ちの長い行列が伸びていたのに、今は来たらすぐ乗れると言う感じです。それでも全国的に見たら乗っているほうに見えますし、今の3船使用のダイヤを、閑散期を中心にちょっと間隔は開くが2船使用にすれば、収支のバランスが保てるでしょう。

しらはま丸船内

船内は平日と言うのにゴルフ客も多く、デッキにはゴルフバック置き場があるのには驚き。ただ、船内で「握り」の精算をするのはちょっと見苦しいです。
船内には立派な売店やスナックコーナーがありますが、一部しかあけておらず、どうも期待していた生ビールはないようです。せっかくクルマではなく公共交通で回ってると言うのに(笑)

後部甲板のゴルフバック置き場。このほかにもあった

せっかくの「船旅」ですから、落ち着いたところで上甲板デッキに出てみます。
東京湾の最狭部を横断するだけに、大型船がどんどん行き交うのが見て取れます。振り返るとE257系の「さざなみ」が海岸線を行くのが見え、のどかな風景ですが、航路のほうはのどかとは程遠いです。
大型船はここから湾内は水先案内を義務付けられているのでしょうか、小型船を先導しており、見ていると湾外に出る船から分かれて待機している船も見えます。
さらに漁船にプレジャーボートと、ほとんどが湾の内外を行き交う中を直角に横断するフェリーの運航はなかなか難しそうです。

前方を横切る大型船水先案内と別れて湾外に向かう大型船

やがて三浦半島側に至ると久里浜港。
港湾設備の関係か、下船口の位置が違っており、「金谷下船口」「久里浜下船口」と二つあるのはご愛嬌でしょうか。タラップがかかって下船しますが、切符を渡して船首側にあるターミナルまではちょっと距離があります。

まもなく久里浜港「久里浜下船口」に並ぶ乗客

ターミナルの前には駐車場が広がっており、航送せずにここでP&Rして、金谷港からゴルフ場の送迎バス、というような利用形態もあるんでしょうね。
船首のゲートが開いてクルマが下りてくるのを見やりつつバス乗り場に行くと、程なく京急バスが入ってきました。YRP線用のICカードセンサー付きの車両でしたが、フェリー客でいっぱいになって出発。
退勤時間帯でやや混んでいましたが、10分程度で京急久里浜駅に到着し、小さな旅は終わりました。

しらはま丸から下船するクルマ京急久里浜駅へはバスで...

京急線の乗り場に出るとやってきたのは都交5300系の特急。行先はなんと「成田空港」とあり、横浜方面に向かった君津行きで始まった小旅行の締めにふさわしい?倒錯した行先でした。




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