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若松交差点 欠陥構造の遅すぎる改良

東京湾岸の大動脈、R357の交通情報で。「若松を先頭に」の声を聞かない日はありません。いや、その先の船橋市日の出が先頭という放送であっても、実は若松が重要なポイントというか発生源の一つであることは間違いないわけで、R357を使って千葉方面と行き来する人にとっては「若松」の名はまさに鬼門です。
この若松交差点、船橋市内の慢性的な渋滞解消を図るべく計画されている 湾岸船橋IC(仮称)の設置と合わせてようやく改良されることが決まりました が、それとて2011年度ですからあと3年程度は現状に耐えなければいけません。

この千葉県、いや、首都圏でも有数の渋滞ポイントですが、この渋滞は交通集中による発生ではなく、実は致命的な欠陥構造が招いている面が大きく、さらに非常に簡単に実施できるはずの改良が取られてこなかったと言う、きわめて不可解な結果が招いてきたのです。
若松交差点が現在の形態になって20年余り。あまりにも長い放置のツケを思うと怒りすら覚えるわけで、この若松交差点の「設計ミス」というか「運用ミス」について、じっくりと論じていきましょう。そして読者諸賢にもこの交差点の異常さを理解していただきたいのです。

「平成23年度の完成」をようやく掲げたが


写真は2008年11月撮影


●要衝の若松
若松交差点。ここは東京湾岸部を貫く大動脈であるR357が、北に向かっては船橋市から鎌ヶ谷市、柏市を縦断して我孫子市へ抜けるr8に、南へ向かっては幕張新都心から検見川浜、稲毛海岸を貫くベイサイドの新しい幹線r15になるどちらも重要な県道と直交する交差点です。

東京方面への放射方向の道路すら満足でない千葉県において、いわんや横断方向の道路は貧弱の一言ですが、そのなかで大部分が片側1車線とはいえ、1970年代に地形に逆らってまっすぐ我孫子のR6まで整備された新道であるr8は、その当初がR6と重複して取手までの県道だった名残もあり「船取線」として、数少ない横断方向の幹線道路として限界いっぱいの働きをしています。

R357の整備により、京葉道路花輪ICから若松まで伸び、その後1980年代の幕張新都心とそれに連なる埋め立て地の整備により、若松からさらに南東進する形でr15が延長されたことで、千葉県北西部の湾岸から内陸、東葛地区を結ぶルートが確立したのです。

R357はいわば東関道の「側道」ですが、沿道の京葉工業地帯の事業所へアクセスする際にはまずR357を介することになります。さらにr8やr15への連絡など、東関道からダイレクトに行けないがためにどうしてもR357の負荷は高くなります。
特にr8やr15との接続と言う意味で考えると、千葉方面は湾岸千葉ICからになりますが、何となれば京葉道路花輪ICから宮野木JCT経由と言うルートもあるわけで、1990年代初頭に花輪ICの下り入路が開設された後は比較的分散しやすくなっています。

それに対し東京方面は京葉道路だと箱崎を経由せざるを得ないうえに、湾岸エリアや横浜方面へは方向違いとも言えるため最初から湾岸道路を目指すしかないのですが、最初のICがなんと市川の首都高湾岸線千鳥町ランプまでないため、東関道の通行料をケチる流動と言うよりも、東関道が使えないためやむなくR357を千鳥町に向かう流動が集中することも、若松や日の出と言った「お馴染み」の渋滞ポイントの発生原因となっています。

r8から若松を臨む


●若松特有の渋滞
人口59万人を擁する中核市、船橋市をはじめとする流動が集中することが若松の渋滞の原因であり、それを解消すべく 湾岸船橋IC(仮称)が事業化された ことは確かに問題の解決に向けた大きな前進です。

しかし、2011年度の完成というリリースを見て思うのは、1990年代初頭には既に「酷い渋滞」が常態化していたことを考えると、実に20年余りも改善がなされずにただただ渋滞を垂れ流してきたわけです。
上記の資料によると、1人1km当たりの年間渋滞損失時間は千葉県平均の実に20倍を超える83.2万人時間/kmであり、船橋市の全人口が年間1時間半は若松交差点の渋滞に付き合っているという計算になるほどの惨状ですし、それが20年も続いていたと言うことは、単純計算で千葉県平均の400倍の損失を若松交差点は一人吐き出していたわけです。

さてこの若松交差点の渋滞ですが、一般的な渋滞と異なる特徴があります。
それは交差する4方向が同時に渋滞するのです。首都圏の近郊都市に位置するこの交差点、通常なら東京方面向き、もしくは東京方面から、といったメインとなる流動に即した渋滞が発生するはずです。

「全方向渋滞」を示すカーナビ

しかし、ここの渋滞は全体感でいえば確かにそうした一般則に従って発生するR357の渋滞の一部ですが、若松の渋滞はその際に本来流れているはずの逆方向が同時に渋滞するのです。さらに、若松を抜けると例えピーク方向であっても概ね渋滞がしばらく解消されるという特徴もある、というか、若松の渋滞は必ず若松を先頭に全方向で発生するのです。
これは若松の処理能力が極端に低いというしかないでしょう。

この若松の存在をはじめとする船橋市内のR357の渋滞は、ここを通らざるを得ないクルマにとっては法人個人問わず難題のようで、羽田空港から津田沼駅へのリムジンバスは高い利用率を誇る重要路線ですが、千鳥町ランプからR357経由では信頼性を大きく損なうため、湾岸習志野ICまで行き、海浜幕張駅やメッセ近くの浜田交差点でUターンし、新習志野駅近くの秋津交差点まで戻ると言う完全に手戻りなルートを取りますし、本来需要が見込めるはずの船橋駅発着のリムジンも、日の出付近の渋滞への懸念から、千鳥町ランプからの立体化が完了した二俣交差点から西船橋駅に向かう西船橋行きを早朝深夜のみ延長することで設定するに留まっています。

r15の片側2車線を埋める渋滞


●若松の驚くべき構造
R357とr8、r15と言う重要幹線同士の十字路。平面交差と言う構造が問題でしょうか。否、それなら西隣の日の出や栄町も同じですが、上記資料の年間渋滞損失時間を見ると若松の半分程度です。もちろん交差道路の交通量が段違いに低いと言う事情はありますが、それでも酷さが際立ちます。

ではなぜ若松だけが、というと、実はただの「平面交差」ではないのです。
なんとr15からr8への「直進通り抜け」が出来ないのです。r8からr15へは抜けられるのに逆は不可です。平面交差の十字路で直進が出来ないと言う不可解な構造。これがすべての元凶なのです。

正面のr8には抜けられない(r15から)

十字路と言いながら後付けで接続したr15については、R357やr8からは普通に進入できますが、r15から若松交差点に来ると、そこにあるのは左折専用の表示。r8への直進やR357東行きへの右折が出来ないのです。もっともr15からR357の東行きへは、谷津干潟公園の駐車場に入る以外の流動に関して若松に向かう必要が全くないため(r15若松手前最終の交差点から若松までの間で発地となる施設が全くなく、R357の若松以東は谷津干潟公園以外でr15から別ルートで到れる香澄交差点までの間に着地となる施設はない)、問題はr8への直進に限られます。

では強制的にR357西行きに追い込まれてしまうことに対し、行きは来れたr8方面への流動はどうするのか。それこそ香澄交差点などの段階でR357に入っていないといけないのか。もちろんそれが「渋滞回避」になるのですが、そこまで気が回るドライバーや、案内してくれるカーナビは少ないです。

実は若松で合流するとわずか100mほど先にUターン路があるのです。
そこを使ってR357東行きに入って若松に戻り、「左折」してr8に行くのです。
多車線道路で平面交差や右折合流を用意できず、Uターン路で引き返させるケースは確かにありますが、幹線道路同士の交差でのケースは聞いたことがありません。

2車線まるごとR357西行きへ


●驚愕の構造が招く全方向への影響
通常上記のようなUターン路は信号が無く、状況を見ながら分合流するスタイルが一般的ですが、ここでは片側2車線道路の車線変更を100mの間に必然的に強いることになることもあり、若松の西100mにあるUターン路に信号が付けられています。

これがUターン専用であればR357東行きだけに付ければいいのですが、悪いことに船橋競馬場の厩舎・関係者のゲートからの出口も兼ねているため、滅多にないのですがここを使ってR357西行きに合流せざるを得ないクルマがあります。(R357東行きからのUターンについては、手前の浜町2丁目交差点(ららぽーと前の交差点)からここまで両方向とも沿道に出入りする施設が無く、浜町2丁目の誤通過対応を除き考慮の必要はない)
そのためR357西行きも信号が付けられており、短区間で2ヶ所の信号と言う渋滞発生のモデルケースのような構造になっています。

若松で合流し、Uターン路に並ぶ車列Uターン路(の先の東行き若松)から続く車列

このためr15からr8へ向かう流動、これは単純に船取線を北上する流動だけでなく、花輪ICから京葉道路に入ったり、R14やR296に向かう流動もあるため少なくないのですが、これは若松が直進可能であれば本来R357には全く絡まない流動なのに、まずR357西行きに入ることでR357西行きの交通量を嵩上げし、さらにUターン路を経てR357東行きに入ることでR357東行きの交通量も嵩上げするのです。

Uターン路から出たクルマはr8へ向かうべく左側へそしてようやく若松に戻ってr8へ左折

さらにUターン路に入るクルマがR357西行きの信号を先頭に滞留することで、r8からR357に入るクルマに影響することでr8が滞りますし、この複雑な構造を捌くために若松の信号パターンはR357両方向と、r15北行き(この時間帯にR357から両方向の右折も入る)、r8南行きの3パターンとなっており、一般的な2パターンに比べて割り当て時間が減るため、容量が下がっています。

r8からの右折車も被さってさらなる混雑Uターン路進入待ちです

信号制御の問題としては、実は全方向に絡む問題ゆえ全てを満足させる解決策は不可能ですが、強いて言えば船橋競馬場厩舎からのクルマを除きUターン路経由でR357西行きへの移動を不可とすることと、厩舎からの出場車が無い時はR357西行きの信号は常に青にすること。さらにはUターン路からR357東行きへの合流を最大限確保するため、若松東行きの本線が赤になるのとUターン路との交差点の本線が赤になるタイミングを揃えることは必須です。特に後者は若松に遅れてUターン路出口の信号が赤になるため、若松からUターン路までに本線からのクルマが並んでしまい、Uターン路から出られないためR357西行き、さらにはr8、r15へと影響が波及しているだけに、問題は深刻です。

Uターン路出口の先に若松

このように容量が低いところに、不可解な構造が原因で基本となるR357の交通量が無用に「嵩上げ」されてしまったからたまりません。
これが全方向若松先頭の渋滞発生の基本的なメカニズムなのです。

●改善はできなかったのか
両方向の道路が90度に交差する単純な十字路のはずなのに、なぜr15からr8への直進が出来ないのか。
4車線のr15に対し、r8は東側に事業用地がある暫定2車線であり、そのつなぎが難しいのか。
20年余りも現状維持されてきたからには何か事情があるはず、と、幾度となくクルマでは通っている場所ですが、今回初めて歩いて現地を見てみました。

結論から言うと、現状維持なんて話ではありません。放置です。いや、不作為と言う名の故意に近い渋滞といえます。
r15の上下線の間、そしてr8の東側の事業用地は若松をアンダーパスするであろう「本線」の用地まで用意されていると確信するに足る広さがあります。いや、アンダーパスを着工できないからr15からの直進が出来ない、というありがちな言い訳も聞こえてきそうですが、とりあえず現状の平面交差の段階でも、直進が可能なように改造できない理由がないのです。

これまで何か構造物その他の障害があり、どうしても直進側の用地が確保できないと思っていました。若松をr8からr15もしくはR357に行く際にそれらしい構造物が見えた気もしたからです。

このフェンスがあるから通れない!?

ところが現地をじっくり見て仰天です。まず考え得る理由となる京葉線や東関道の高架ですが、東関道はr8、r15の当初計画分を一気に跨ぐロングスパンの橋梁となっており、京葉線は既に4車線となったr15の上を跨いでいます。
複雑そうに見えたのは雑草が絡むフェンスと、ガードレールに囲われ信号柱が立つアイランドの存在のみ。唯一これが「直進出来ない構造」を決めているにすぎないのです。

複雑そうに見えますが...

要はr8からr15へのルートを東側に振るためにR357西行きからの右折車線の停止線を少し下げ(本線からの分岐に余裕はある)、雑草が絡むフェンスとアイランドを撤去すれば片側1車線分の往復通行の用地は容易に確保できます。
信号設置場所の変更とアイランド、フェンスの撤去が必要ですから「明日にでも」とは言いませんが、どう考えても年度内には出来る話であり、2011年度の完成を待つような話ではありません。

フェンスのr15側。どこに障害が?


●欠陥放置への嘆息
千葉県の平均を20倍以上も上回る渋滞損失を20年余りも「生産」し続けた若松交差点の渋滞が、恐るべき欠陥構造と、それの故意にも等しい放置が原因であることはもはや明らかです。

今回2011年度に改良されるというのも、湾岸船橋IC(仮称)が用地確保の問題から若松の東側、湾岸習志野寄りに設置され、ランプウェイの関係上r15を経由して若松でR357にアプローチするからさすがに重い腰を上げたというしぶしぶ感すら伺えるわけで、利用者として、そして国税、県税、道路特定財源の納税者として、首都圏有数の渋滞ポイントにおいて、交差点内のアイランド撤去がメインの簡単な工事という対策すら手をつけなかった理由をはっきりと開示してもらう必要が国や県にはあると考えます。

花輪ICから若松間の4車線化にしても、1999年の中野木−花輪の4車線化の時点ですでに現在の事業用地は確保されていたわけで、2002年の中野木交差点の立体化で工事中のスローガン通り「道路交通情報から中野木の文字を消します」が実現した現在、花輪まで流れているのにその先若松までの区間だけ異様に渋滞しているとか、若松先頭の渋滞が花輪以北にまで伸びて京葉道路やR14方面に向かう流動にまで影響を及ぼしてきたことを考えると、この不作為がどれだけの「損失」を地域に与えてきたかを真摯に受け止めるべきです。

広々としたr8側の事業用地

全区間の4車線化が不可能でも、若松方面のみ2車線、さらに交差点手前では3車線にして、左折、直進、右折と割り振ることで、R357西行きへの渋滞に巻き込まれるクルマを減らすという小手先の対応すら取らないでいたことは理解できません。

さらに言えば、谷津干潟のラムサール条約登録以降、かつては歩行者などいる由もなかった若松交差点を通り、谷津干潟と南船橋駅の間を行き来する流動が増えました。このためR357からr8への左折が歩行者と干渉して滞るほか、R357の歩道橋を嫌って横断禁止のはずの交差点を無謀横断する歩行者も目に付くようになっています。

このあたりも「普通の平面交差点」にすれば無理なく横断歩道の設置も可能ですし(交差点西側でR357南側に誘導すればr8への左折車への干渉は激減する)、クルマのみならず歩行者の問題まで惹起してきた現状、悠長に2011年度を待つ余裕などないはずです。





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