このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
有
田
町
有
田
内
山
磁
器
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町
佐
賀
県
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有田駅を降り立つと,気持ちの良い秋風に体を包まれた.
まずは観光案内所で地図をもらおうと立ち寄った.対応してくれたおっちゃんが丁寧に散策路を説明してくれたので,散策計画がすぐに浮かんできた.そして頭の中で3分考え決めた.隣の上有田駅まで歩いて電車で戻ってくることにしよう.
電車の中で一緒だったドイツ人の一行が手を振ってくれた.彼らは「imari」の愛好家で,窯元をこの目で見てみたいと言っていた.そういえば有田町とドイツのマイセン市は姉妹都市の関係である.彼らと関係があるかは定かではないが.
やおら立ち上がって大荷物をコインロッカーに預け,カメラと筆記具を携え歩き始めた.
しばらくすると,時代を感じさせる重厚な和建築の陶磁器店が軒を連ねる町並みに変わってきた.窯元を示すレンガ造りの煙突も見える.
「有田内山」.
ここは日本が誇る磁器「有田焼」が誕生した町である.江戸時代から続いていると思われる商家や屋敷が建ち並び、中には瀟洒な洋風の建造物も見られる.しかし「秋の有田陶磁器まつり」が終わった後の休日ということもあり,行き交う車や人もなく閑散としていた。
皇室御用達の名店,香蘭社の本社社屋が建ち並ぶ。瀟洒な洋風建築が目を引く。
カンカンと踏切の警報機の音が聞こえてきた.音のほうへ行ってみると神社の参道に踏切があり,鳥居をかすめて特急電車が通過していった.「陶山神社」というその社は,陶祖として「李参平」が祀られていて,境内には彼を称える碑が建っている.急な石段を登っていくと何やら変わった鳥居が見えてくる.この鳥居は磁器製であった。聞くところによると,日本で唯一とのこと.数十年前に台風で倒壊したらしいが,修復されて現在に至っている.なるほど割れた茶碗を合わせたような痕がある.それにしても青に浮かび上がる唐草模様がなんとも美しい.
遮断機のない踏切がある陶山神社の参道。
トンバイ塀がある裏路地を抜けると、磁器店が建ち並ぶ通称「トンバイ塀通り」である。
「有田焼」と「伊万里」は同義だそうである.
「伊万里」の名称は,かつてこの地域で焼かれた磁器を積み出す港が伊万里港だったことによるそうである.
「有田焼」の起源は,肥前の国藩主鍋島直茂によって集められた陶工の中に,朝鮮出身の「李参平」という男がいたそうである。 後に金ケ江三兵衛と名乗るその男は1613年に有田泉山で白磁鉱山を発見し,そこに天狗谷窯を開いて日本で最初の磁器を焼いたのが始まりであるとされている。
表通りから裏通りへ入ると,トンバイ塀のある小路がある.
トンバイとは,窯の内壁用の四角い耐火レンガのことで,高温で表面がガラスのようになっているのが特徴である.
このトンバイと使わなくなった窯道具などを集めて赤土と焼粉とを混ぜて固めたもので塀をこしらえたのが「トンバイ塀」と呼ばれていて,この地域にしか見られないそうである.
表この小路には,レンガの壁で囲われた岩尾磁器の工場や古い窯元が連なっている.
トンバイ塀を追っていくと,小川を渡り墓地の前を過ぎ,小路を進むと有田陶磁美術館がある.さらにその奥は深川製磁の工場である.
一通り町並みを見て周り,目的地の上有田駅に着いた.しかし,このまま電車で戻るのはもったいない気がしたので,歩いて有田駅まで戻ることにした.同じ道を歩いて同じ景色を見ているのだが,何か違う感じがした.行きがけに得た知識によって,見る目がもっと深くなっているのである.背中を押されるように,我を忘れシャッターを切っていた.
私が撮影に没頭していると,後ろから突然「こんにちは!」と挨拶された.振り返ると制服を着た中学生らしき男の子が礼をしてくれた.私はとても気分が良くなった.
しばらくして,今度は道路の反対側から「こんにちは!」と挨拶された.見るとクラブ活動の帰りらしく大きなスポーツバックを抱えた男の子が恥ずかしそうにこちらを見ていた.「こんにちは!」と返すと,ぺこりと頭を下げ,早足でわき道へ入ってしまった.
都会で暮らしてきて人との交わりが希薄な中にいるせいか,挨拶は当たり前のことなのだが新鮮に感じた.ましてや見ず知らずの観光客への挨拶はとても勇気がいることだ.おそらく学校でそう教育されているのだろうが,彼らは何か誇らしげであった.
小腹が空いたので有田駅近くで食堂を探していたら,「有田焼きカレー」ののぼりを見つけた.見ると駅弁で何やら全国で一番と書いてある.わけがわからず店に入ろうと扉を開けると,カレーをほおばっていた若いおねえちゃんやおばちゃん軍団がいっせいにこちらを向いた.あいにく満席であった.なるほど,店でこれを温めて食べさせてくれるのだ.仕方ないので,近くにあった中華料理屋に入った.
「宝来軒」の暖簾をくぐると,「いらっしゃい!」と威勢のいいおっちゃんが迎えてくれた.ちゃんぽん定食を勧めてくれたが,どうしても焼飯が食べたくてお品書きもよく見ずにその大盛りを頼んでしまった.後から入ってきた客がそのお勧めを頼んでいたが,見ると小さい焼飯や杏仁豆腐が付いて,しかも量が多く値段も50円しか変わらない.来るあてもないのに次回は絶対ちゃんぽん定食と思いながら焼飯をほおばった.
満腹で特急電車の車中の人となった.心地よい揺れが眠りを誘う.もうすぐ博多である.
駅への道すがら,見事な紅葉を見つけた.
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