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若
桜
鉄
道
の
風
景
其
の
一
鳥
取
県
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秋も深まった12月初頭、霜が降りた早暁の構内に足を踏み入れた。
7時台に出発する気動車が唸りを上げている。
朝陽は山に隠れ、あたりはまだ薄暗い。
吐く息は白く、吸う息は凍てつくようだ。
時折、ディーゼルエンジンの排ガスが混ざる。
サクサクと霜を踏む音と気動車の唸りだけが聞こえてくる。
若桜鉄道は、JR因美線郡家駅から鳥取県東部の若桜町を結ぶ、営業キロ19.2kmの私鉄ローカル線である。
元は旧国鉄「若桜線」で、木材資源などの開発目的で敷設された。
開業は昭和5年1月20日で、当初は郡家〜隼間であった。そして同年12月1日に隼〜若桜間が開通し、全線で営業運転が開始された。尚、現在の第三セクターによる開業は、昭和62年10月14日である。
開業から78年を経ても、殆どの駅や施設が現役である。
給水塔や機関車転車台などは、SLが活躍していた頃の遺物であるが、そのまま残されている。
朝一番の列車は、鳥取より先の宝木行きである。
この列車は、現在でも旧国鉄の気動車で運行される。
この列車が走りすぎる時、往時の姿が甦る瞬間である。
丹比駅近くの大銀杏は、まだ青い葉があった。
丹比駅はひっそりとしていた。
列車はいつ来るのだろう。
安部駅に一番列車が着いた。
でも乗る人はいなかった。
因幡船岡駅の駅舎とプラットホームは、開業当初そのままである。
待合室の長いすが、静かに佇んでいる。
往時を想像しながら物思いにふけっていたら、けたたましいエンジンの音でふと我に返った。列車が入ってきたのだ。
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