このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
トップページに戻る | コラム集の目次に戻る || サイトマップ
日朝首脳会談で明らかになった拉致被害者の安否情報によって、日本国中が怒りと悲しみに包まれている。 拉致問題の徹底解明を求める声、北朝鮮に対する制裁措置を求める声、平壌宣言への署名を「拙速だった」と切り捨てる声。 さらには、「やはりあの国は『ならず者国家』だった」などという声すら聞こえてくる。
だが、私はそうは思わない。日朝首脳会談は成功裡に終わったと、私は信じる。
今回の会談の成果を疑問視する人々には、次の2点について、よく考えてほしい。
拉致事件に関して北朝鮮に非があることは、明白だろう。 しかし、では北朝鮮は加害国であって日本は被害国であると単純にいえるのだろうか。
そもそも北朝鮮が現在のような国家体制を敷くに至った原因は、日本である。 第2次世界大戦後、朝鮮半島が2つの国家に分割されたのは、日本の大韓帝国に対する植民地支配の帰結である。 日本には、民族を分断し、憎しみを生みだしたことへの道義的責任がある。
そして、拉致である。 日本は戦時中に、朝鮮半島に住む人々を多数拉致し、まるで作業機械のような扱いで強制的に労働に従事させた。 その多くは病に倒れ、あるいは飢えに苦しんだという。 その数は今回の拉致事件の比ではない。 もし、北朝鮮が許せないというのなら、我が国日本はいかにして許しを請おうというのか。
今回の会談で、北朝鮮は日本の主張に対して大幅な譲歩を見せた。 不審船問題、ミサイル問題、拉致問題、核開発疑惑などの懸案に対して、一定の責任があることを認めた。 これまでの路線とは大きく異なり、自国に不利な情報を自ら開示する姿勢を見せたことは、北朝鮮の誠意ある対応として評価するべきであろう。
そして誠意に誠意で応えること、すなわち相互の信頼関係を形成することこそが、国交回復には重要であり、あるいは両国間に生じた種々の懸案の再発防止にもつながるのである。
信頼されることによって、北朝鮮が国際社会に復帰する道は開かれる。 逆に、我々が信頼しなければ、北朝鮮は国際社会においてさらに孤立を深めることになり、核開発をはじめとする軍中心の国家づくりが進むであろう。 我々がどちらの道をとるべきかは、必然的に決まってくるはずだ。
相手を信頼しようとする寛容な心が、両国ともに、必要なのではなかろうか。
© 2002 Chisato Hayahoshi
トップページに戻る | コラム集の目次に戻る || サイトマップ
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |