このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

無人駅(秘境駅)と鉄道時計(飯田線田本駅)
究極の無人駅(秘境駅)といわれる飯田線田本駅と鉄道時計

 無人駅や秘境駅の話題が出た際、必ず名前があがるのが、この飯田線田本駅である
 私は都内に住んでおり、以前鶴見線の無人駅を休日にj訪問した際、駅員さんがおらず、利用者もほとんどいない無人駅になんとも言えない魅力を感じた。
 無人駅や秘境駅に関する情報を調べている内に最もすごい無人駅が飯田線の田本駅という情報を目にし、訪問を計画した。
 
 2006年1月15日、豊橋方面からの電車で、11時37分に飯田線田本駅到着の計画とし、次の13時31分の電車までの約2時間滞在することとした。
 
 12月から1月にかけて、長野県、新潟県は大雪となり、列車の運休が相次いだ。
 気象庁のサイトで調べたところ、飯田地方は比較的降雪が少なかったようだが、平均気温が氷点下となる日が多かったようだ。
 訪問の前日は29ミリのまとまった雨が降り心配したが、当日は晴天に恵まれた。
 また気温も、連日の平均気温が氷点下といった状況とは違い、最高気温11℃となった。
 
 天候にも恵まれ、初めての飯田線に乗り、田本駅を目指した。
 車窓に広がる天竜川と山間部とのコントラストを楽しんでいるうち、電車はあっという間に田本駅に到着した。
 降車したのは私一人だけだった。
 冬の青春18きっぷのシーズンであることや、日曜日ということもあり、車内は鉄道マニア風の人も多く、車窓を撮影したりしていた人もいたので、この駅で降りる人がいるかと予想したがいなかった。
 
 やはりここは究極の無人駅(秘境駅)だ。
 
 今まで見た無人駅は、駅員さんがいなかったり、利用する人がほとんどいなかったりというパターンで、駅から見える範囲に、なんらかの民家や商店があったりしたが、ここは全くない。
 
 ホームに立つと、吹きっさらしの待合室があるが、周りはがけの斜面のようで、いつ落石があってもおかしくないような不安感がよぎってくる。

 出入口は待合室と反対側にあるが、とても駅の出入口といった感じではない。
 駅を出ると、急な階段になっており、こけが生えてすべりやすくなっている。
 
 その階段を登り終え、駅を一望し、改めて究極の無人駅であることを実感する。

 近くの集落までは、15分位かかるという。
 さらに、山道のような所を歩かねばならず、この日は前日の雨が落ち葉にしみ込み、非常にすべりやすく、斜面から足を滑らすと、奈落の底へ真っ逆さまの危険があるため、集落への訪問は断念した。

 駅周辺を小一時間散策し、待合室に戻った頃、12時56分発の豊橋行きが到着。
 私は反対方面の13時31分に乗るため、待合室でじっとしていたが、中の乗客や車掌からジロジロと見られた。
 やはり降りる人はいなかった。
 電車は予定通り発車していった。
 駅にはまた静けさが戻る。
 時々小鳥の鳴き声が聞こえるが、本当に静かで、鉄道時計の秒針の音が聞こえてきそうである。

 適度に日差しが降り注ぐ待合室で、鉄道時計を眺めながら時間をつぶした。
 目をつむり、鉄道時計を耳に近づけてみた。
 カチッ、カチッという針の音が気持ちを癒してくれる。

 13時30分過ぎ、予定通り電車が到着し乗車、田本駅を後にした。
 
 何もなく、誰もいない駅
 2時間という長時間だったが、なぜか苦痛ではなかった。
 いや、むしろ幸せだった。

 誰にも邪魔されず、鉄道時計と一緒に時を刻めたからだろうか。
 
 何もない駅だが、また鉄道時計と一緒に訪れてみたいと思った。
 いや、何もない駅だからこそ、また来たいのだろう。
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