このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

アンコール遺跡−10 アンコール・ワット編(4・壁画東面)


<東面南側・乳海攪拌>

 乳海攪拌は、アンコールワットの壁画の中で最も有名なものと言われている。

 敵対して描かれることの多い神々と阿修羅が、この場面では不老不死の秘薬を作り出すために協力し合っている。乳海に薬草を投じて、マンダラ山を攪拌の棒とし、大蛇ヴァスキを曳き綱として、乳海を攪拌することにより命の露アムリタが生み出されるという。
 阿修羅はサンスクリット語ではAsuraといい、天上の神々に戦いを挑む悪神とされている。修羅場はこれから発生した言葉だそうだ。彼女が部屋に来ているときに、二股をかけているもう一人の彼女がやってきて鉢合わせ、という経験は僕にはないので、修羅場の意味がよく分からない。
 ちなみに僕と同世代の方であれば、阿修羅→アシュラマンと思考が展開するはずである。アシュラマンについての解説は こちら をどうぞ。

阿修羅神々

 下の写真の通り、神々も阿修羅も総動員で大蛇を引っ張っている。壁画は全長50メートルであり、カメラに入りきらない。雄大な綱引きである。ただし、繰り返しの多い単調な構図と言えなくもない。
 左側の最後尾は人間に近い姿であり、右側の最後尾は猿である。最初に見たときは左が神で右が阿修羅と思ったのだが、反対であった。右側の最後尾にいるのはただの猿ではなく、猿の将軍ハヌマーンであった。無意識のうちに人間>猿、人間=万物の霊長と考えていたわけであり、反省するしだいである。
 ちなみに阿修羅が頭を持ち、神々が尻尾を持っているのは、引き合っている間に大蛇が火を吐くが、焼かれるのは阿修羅の方で、神々は無傷でいるためだそうだ。

阿修羅神々

 中心には、ヴィシュヌ神が陣取っている。ヴィシュヌ神は、己の化身である大亀クールマの上に乗っており、クールマは支え棒となるマンダラ山を背中で支えている。ヴィシュヌ神の頭上では、天の舞姫アプサラスが踊っている。

ヴィシュヌ神

 1000年以上も攪拌を続け、女神が命の露を杯にかかげて飛び出してきた。その命の露は神々が飲み干し、阿修羅はヴィシュヌ神によって退治されたという。ヴィシュヌ神もしたたかである。


<東面北側・ヴィシュヌ神と阿修羅の戦い>

 同じ東面でも、南側の乳海攪拌は12世紀に作成れたアンコール遺跡の傑作と評価されている一方で、北側の壁画は16世紀に作成され、評価も低い。地球の歩き方でも「タッチも雑で稚拙」と低評価である。旅名人ブックスでは写真が一枚もない。
 下の写真も出陣風景に見えるのだが、誰の出陣かは不明である。

東面北側


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください