このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

アンコール遺跡−14 アンコール・ワット編(8・中央祠堂)


<中央祠堂>

 いよいよ中央祠堂である。前ページにも書いたが、中央祠堂の階段は、人々が登るのを拒絶するような急勾配である。ここを登るのは「登頂」という言葉がふさわしい。

中央祠堂と西北の祠堂

 2005年8月20日現在では、中央の階段(左下写真の左側階段)は工事中で登ることが出来なかったため、やむなく右側の階段から登った。工事中で無ければ、皆中央の階段を登るに違いない。

中央祠堂と西南の祠堂

 階段の前に立つと、高所恐怖症ではない僕でも緊張してしまう。急勾配のうえに、足の踏み場が狭い。僕の足は26.5cmなのだが、踵(かかと)は乗らない。したがって土踏まずの辺りまで段を踏みしめ、急勾配を登らねばならない。
 
 気合を入れて階段を登り始める。上の段に手を付かねば登れないので、ほとんど梯子である。
 段に手を付いてみたところ、砂がざらついていて結構滑りやすいことが分かった。また、12世紀から数え切れないほどの人がこの階段を昇り降りしているため、ところどころ磨滅している。歩きにくいこと、この上ない。

 視線は目の前の段に置くことである。ここで決して下を見てはならない。恐怖心にとらわれるからである。中央祠堂の階段を踏み外して下に転げ落ちると、まず間違いなく怪我をする。打ち所が悪ければ、命の危険さえある。
 中央祠堂は「神の世界」を表したものである。僕は、階段を登って一歩ずつ「神の世界」に近付いている。同時に「あの世」にも近付いているのではないか、と感じた。

 なんとか無事に登りきって、遂に中央祠堂とご対面である。中央祠堂第三回廊からの高さは34m、地盤からの高さは65mである。12世紀に、デバターなどが彫刻された石材を組み合わせて砲弾形の尖塔を作り上げたということに、素直に感動した。クレーンも使わずにどうしてこのような尖塔を作ることが出来たのであろうか。また、尖塔に限らず、壁画や回廊なども含めたアンコールワット全体を、電力を使わずに作り上げたというのは奇跡に思える。

中央祠堂

 第三回廊から参道が見える。「神の世界」は当然高いところになければならない。上述の数字によれば、65−34=31メートルなので、第三回廊の地盤は高さ31メートルということになる。地上31メートルの建造物から人を見下ろす。当時の人は神に近付いたと実感したに違いない。

参道

 第三回廊も「田」の形をしている。真中の線の交点に中央祠堂があり、四隅に祠堂が立っているので、合計5つの祠堂がある。第二回廊と同じく、空白部分は池となっており、こちらは天上の聖池ということになる。先程登ってきた階段は右下の交点である。
 右下の写真は、西を下にして、「田」の下の横線から真中の横線と上の横線を撮ったものだ。

第三回廊

 下の写真は、第三回廊から第二回廊を見下ろしたものである。「田」の左下の交点から取ったものだ。

第二回廊

 階段を上から撮った写真は、下の一枚しかなかった。これは登ってきた西側とは正反対の東側(「田」の上の横線と中央の縦線の交点)の写真である。上から見ると、足がすくむ。

東側

 「田」の右の縦線と真中の横線の交点にあたる南側の階段のみ手すり(とは言っても、ただの細い鉄の棒)があるので、第三回廊から下りる人はみなその階段を使う。僕は3日とも中央祠堂に来て、そのたびに別の階段から登ったが、降りるときは安全第一でこの階段を使った。



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