３．　沈黙の艦隊　　

　「沈黙の艦隊」は、読者に緊張を強いる。作者かわぐちかいじが突き付ける世界政府、核廃絶、軍備永久放棄といった問題に対し、我々読者はどのように回答すべきなのか。自衛隊ではたして日本という国を守ることができるのか？軍備永久放棄などやはり机上の空論に過ぎないのか？
　「沈黙の艦隊」は海江田四郎率いる原潜「やまと」が米海軍と戦いながらニューヨーク沖に達するまでの２ヶ月の物語である。米第七艦隊所属原潜「シーバット」の艦長海江田と乗組員達は、艦名を「やまと」と変え、米原潜や艦隊を次々と撃沈していく。激怒した米大統領ベネットは日本占領を打ち出す。アメリカの恫喝に対する日本の総理竹上の回答は？日米安全保障条約を破棄してアメリカと戦うべきか？それとも屈辱的な条件を受け入れざるを得ないのか？
　漫画の領域を超越した世界が、「沈黙の艦隊」では描かれている。ここでは「やまと」の戦闘の経過をたどってみたい。

　＜　「やまと」　戦闘の経過　＞　

日時	場所	結果
１１月２３日 ９時５０分	小笠原海溝	音響魚雷で米ソ３人のソナーマン負傷。
１１月２４日 ９時５０分	ミンダナオ海溝	米原潜「ニューヨーク」航行不能
１１月２５日	モルッカ海峡	米原潜「ダラス」航行不能 米原潜「シカゴ」と「カンサス」衝突 米原潜「ヒューストン」と「デンバー」衝突 米原潜「リトルロック」を押し潰す
１１月２７日	沖縄近海	ソ連原潜「レッド・スコーピオン」右舷潜舵破損
１１月２９日	沖縄近海	ソ連巡洋艦「グローズヌイ」と駆逐艦「オスモトリテルヌイ」衝突 ソ連護衛艦「プロヴォルヌイ」撃沈 ソ連巡洋艦「ヴァリヤーグ」撃沈 米空母「ミッドウェー」撃沈 米戦艦「ニュージャージー」撃沈 米巡洋艦「ヨークタウン」、米ミサイル巡洋艦「デイル」、米ミサイル駆逐艦「レフトウィッチ」、同「オバノン」被弾 米巡洋艦「レイク・エリー」、同「ケープ・セント・ジョージ」被弾 米巡洋艦「ヴェラ・ガルフ」撃沈
１２月４日	横須賀沖（東京湾内）	たつなみ、米原潜「ハート・フォード」撃沈 たつなみ、米原潜「サンタフェ」撃沈 たつなみ、米原潜に押し潰され、撃沈（乗員全員無事）
１２月２４日	北極海	米原潜シーウルフ級「キング」撃沈 米原潜シーウルフ級「アレキサンダー」強制浮上
1月１９日	ニューヨーク沖	米ミサイル巡洋艦「サウスカロライナ」、「ユエシティ」を誤射 米ミサイル巡洋艦「フォックス」探信音 米イージス艦「チョーシン」探信音 計２８艦に対して探信音
１月２０日	ニューヨーク沖	米ミサイル巡洋艦「サウスカロライナ」撃沈 米イージス艦「チョーシン」撃沈 米ミサイル巡洋艦「フォックス」撃沈 米空母「Ａ・リンカーン」探信音 米ミサイル巡洋艦「アーカンソー」探信音 米ミサイル巡洋艦「ビドル」探信音 米ミサイル巡洋艦「ホーン」探信音 米駆逐艦「ハリー・Ｗ・ヒル」探信音 米駆逐艦「ハリー・Ｗ・ヒル」と米駆逐艦「エリオット」衝突 米駆逐艦「フレッチャー」探信音 米駆逐艦「フレッチャー」撃沈 米空母「Ｔ．ルーズベルト」探信音 米イージス艦「タイコンデロガ」撃沈 米イージス艦「ゲティスバーグ」撃沈 米イージス艦「ハーベイ」撃沈 米ミサイルフリゲート艦「レフトウィッチ」撃沈 米ミサイルフリゲート艦「オブライエン」撃沈 やまとハープーンミサイルを２回発射
１月２３日	ニューヨーク沖	対米宣戦布告 四カ国艦隊「やまと」の周囲に浮上 「やまと」白旗掲揚 米空母「Ｊ．Ｆ．Ｋ」と衝突
１月２６日	ニューヨーク沖	「やまと」被弾後沈没（乗員全員無事）