このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


1−3. 高木ブーに関する考察  

 昨日(2001年11月22日)、出張日記にたびたび登場するオーストラリア人M氏と、会社のそばのラーメン屋に行った。ここは喜多方ラーメンのチェーン店であり、名店坂内食堂の味である。鉄道マニアの僕はもちろん磐越西線も制覇しており、そのついでに坂内食堂には2回行っている。食事時に行くと、店の前に長蛇の列が出来ており、僕も寒い中、30分程度待たされたことがあった。そこまで待たされても、あのスープをすすると、待った甲斐があった、という気がしてくる。もちろん、麺もチャーシューも絶品で、食べているうちに何か幸せな気がしてくるから不思議だ。今まで僕が食べた中では最高のラーメンである。

 さて、会社のそばのラーメン屋もチェーン店とはいえ、人気がある。我々はピーク時を避け、午後1時過ぎに出掛けた。M氏と僕のお気に入りはネギチャーシュー麺(半ライス付き)850円だ。ラー油も効いてなかなかの味である。食べ終わって勘定を済ませたとき、我々はクーポン券を貰った。そのクーポン券を見て、M氏は僕に質問した。
「Who is this guy? (こいつは誰だ?)」
 その時、僕は初めてクーポン券を見た。そこにはアロハ姿でウクレレを小脇に抱えたブーさんの笑顔があった。68歳とはとても思えない若さである。どうやらブーさんはこのチェーン店のイメージキャラクターを務めているようだ。
「His name is Mr. Boo Takagi. He is ・・・(彼の名前は高木ブーだ。彼は・・・)」
 そこで、僕は言葉に詰まった。はたして、ブーさんの職業は何だろうか?
 真剣に考えている僕を見て、M氏は訪ねた。
「Don’t you know him? (この人を知らないのか?)」
「I know him well, but difficult to explain.(知っているけど、説明するのが難しいんだ。)」
 僕は苦悩した。どう説明したら、この日本語をほとんど解さないオーストラリア人にブーさんの魅力を伝えることが出来るだろうか?

 まず、コメディアンという説明は不向きであろう。いかりや長介も著作「だめだこりゃ」の中で語っているように、ブーさんほどコントが下手な人間はいない。それでは、俳優か?僕はブーさんがドラマに出て演技をしているのは、残念ながら見たことが無い。僕がブーさんをテレビで見るときは常にブーさんとしてであり、何かの役柄に扮するというのはコントの中の雷様くらいである。それでは、ミュージシャンか?確かにザ・ドリフターズのギタリストであり、最近はウクレレを弾いている。弦の短い楽器と言うのは演奏が難しいそうだ。それをさらりと弾いているブーさんの音楽的センスを長さんは高く評価していた。でも、ブーさんがソロで発売したアルバムは数枚しかない。
 そのとき、僕は長島前巨人軍監督のエピソードを思い出した。浪人中の彼がホテルに泊まったとき、宿泊者のカードの職業欄に長島茂雄と書いたらしい。そう、彼は職業が長島茂雄なのである。他の人が就くことは出来ない日本で唯一の職業である。ブーさんにも同じことが言えるのではないだろうか?ブーさんは職業が高木ブーなのではないだろうか?片や日本で一番愛された野球選手、片や日本で一番愛されたお笑いグループの一員。何か相通ずるものがあるのかもしれない。

 そんなことを考えながらも、僕が使ったのは月並みな単語だった。
「He is a talent (タレントだね。)」
 その後、僕はザ・ドリフターズとは何か、全員集合とは何か、というところから説明を始めたが、M氏は明らかに興味を失い、会話は長く続かなかった。残念ながら、僕はブーさんの魅力をオーストラリア人に伝えることは出来なかった。あなたなら、高木ブーをどのように外国人に説明しますか?



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