このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

29. さだまさしの「償い」 (その2)   


 2002年3月6日。ニュースの続報が入った。

三軒茶屋駅事件の実刑少年に「償い」の歌詞届く

 東急田園都市線三軒茶屋駅で昨年4月に起きた傷害致死事件で、実刑判決を受けた少年2人のもとに、さだまさしさんの歌「償い」の歌詞が届けられた。「償い」は東京地裁の山室恵裁判長が判決後、謝罪の意味をかみしめるよう、少年に歌詞を読むことを勧めたものだ。歌詞に触れた少年の1人は、東京拘置所で面会した母に、「分かっている」などと答えたという。

 さださんが作詞・作曲した「償い」は、交通事故で男性を死亡させた若者が遺族に仕送りを続け、7年目に「あなたの優しい気持ちはよく分かりました」という手紙を受け取る内容。山室裁判長が判決後、この歌を引き合いに出し、「歌詞だけでも読めば、なぜ君らの反省の弁が人の心を打たないか分かるだろう」と少年2人を諭していた。

 神奈川県のとび職少年(19)は拘置中の東京拘置所で、「償い」の歌詞が書かれた手紙を読んだ。さださんのCDを持っていた少年の叔母が歌詞を書き写し、判決翌日、拘置所あてに投かんしていた。

 先月末に接見した母親が感想を尋ねると、「これから(=出所後)の事だよね」と答え、「長い年月がかかっても、一生懸命にやって遺族に誠意を見せないと」との問い掛けに、「分かっている」と応じた。また、母親が「人に許しを請うのは簡単な事ではない」と言うと、「そうだね」と答えたという。

 母親は、「裁判長は『言葉だけで何100回謝るより、行動で示さないといけない』と言いたかったのだと思う」と話している。

 歌詞は、もう1人の東京都の元専門学校生(19)にも、関係者を通じて伝わったという。

 事件では銀行員牧顕さん(当時43歳)が2人から暴行を受け命を落とした。判決は、それぞれ検察側の求刑通り懲役3年以上5年以下の不定期刑。少年側は控訴せず、6日午前零時、実刑判決が確定した。(読売新聞)
[3月6日16時33分更新]

 この少年はきっと更正するであろう。彼は自分の犯してしまった罪を深く反省したために控訴をしなかったのだ。今、彼はきっと少年院にいるので、自由に音楽を聴くことが出来ないはずだ。彼が出所して最初に聴く歌はさだまさしの「償い」に違いない。

 彼がさだファンになってしまうのは、もう避けられない運命だ。彼は毎年、被害者を供養するために、長崎まで「精霊流し」に行くことになる。
 彼は罪を償ったのだから、一般市民として生活を送る権利がある。恋人との出会いは「雨やどり」だ。デートの時に喫茶店に入ったら「パンプキン・パイとシナモン・ティー」を注文する。そして、プロポーズの代わりに「関白宣言」を歌い上げる。OKが貰えたら、その喜びは「天までとどけ」であろう。新婚旅行は北海道で、もちろんBGMは「北の国から」である。そして「朝刊」のように幸せな新婚生活を送る。
 彼には娘さんが出来るかもしれない。一人暮らしを始めて連絡が無かったら、留守電に「案山子」を吹き込むのだ。娘さんが結婚する直前には「秋桜」を歌い、当日には「親父の一番長い日」を歌う。これで娘さんも安心してお嫁に行けるというものである。
 上のニュースの中で接見に来た母親の人生を、「無縁坂」を口ずさみながら噛み締めるに違いない。両親が亡くなったときは「防人の詩」だ。そして、自分の人生の中では自分が「主人公」だったと振り返りながらあの世へ旅立つのだ。
 
 こうやって書いてみると、さだまさしの才能の凄さに改めて気づかされる。ちなみにこの日記を書きながら聴いたBGMはさだまさしの「ウルトラスーパーミラクルベスト 感動の素」である。

 

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください