まず最初にあげられる点は、あらゆる人々が利用しやすいように、車両にデザイン上の工夫がなされている点である。この車両は、超低床の連接車両で、プラット・ホームとの段差がほとんどなく、車イスやベビーカーでも容易に乗り降りできる。また、静かでスマートなので、町の動く風景としても魅力的である。ヨーロッパなどには、歩道に沿ってゆっくり走る、町なかの「水平エレベーター」という感じの路面電車もある。
次に環境とのかかわりからみて、電気エネルギーで走る路面電車は、炭酸ガスをださないため、大変クリーンな乗り物だという点があげられる。環境浄化は世界共通の課題である。
さらに、その経済性も評価されている。路面電車は、線路を敷くための建設費が安い。その敷設建設費は、1キロメートルあたり概算10億円から20億円と見積もって、地下鉄の約30分の1、高架を走るモノレールの約10分の1程度である。だから、他の交通機関に比べて運賃を安くできる。
このように、新しい路面電車には、大変魅力的な長所が幾つもある。
1997(平成9)年から翌年にかけて路面電車の線路の延長や車両の新造の際、政府から補助金を受けられることになった。このような中、1997(平成9)年には、日本で初めて、熊本に低床2連接の路面電車が登場し、多くの人々の注目を集めた。また、1999(平成11)年には、広島に「グリーンムーバー」と呼ばれる、全長30メートル余りの5連接低床車両がドイツから導入された。これら、熊本、広島の新車両は、日本における路面電車の新時代の幕開けにふさわしいもので、多いに話題を集めた。今後、日本で路面電車を有効に活用していくためには、どのようなことが必要であろうか。
| 低床車両「グリーンムーバー」(広島市) |
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