このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 解放しとらんとにはなんか後ろ暗さがあるとか   「長崎県」の目次へ
 九州の近代土木遺産                

 柵の外からカメラ突っ込んで撮した山の田貯水場の堰堤。駐車場はあるとにゲートは締め切って入らせもせん。

 ホームページに「九州遺産」のコラムば作ったときから、佐世保の「トンネル横町と山の田貯水池の堰堤」は取材候補にあげとった。
 それが、九州にはよか遺産ばっかし多かもんやケン、あとあとになってしもうて、今回やっと159番目にお目見えするごとなった。

 早岐から国道35号線で佐世保市内に入り、駅前ば通り越して北の瀬戸越へ向こうて長かメインストリートば走る。
 地図では春日町の信号から右折するごとなっとるとバッテン、佐世保の交差点は信号に名札がついとらんとの多か。少々不安になってきた頃、やっと春日町ていう標識のついた信号にたどり着いた。

 右折する車は多かとに、右折専用路線も右折信号も出らんケン、右折車が渋滞しとる。信号標識といい、右折信号といい「佐世保の道路はサービスの悪かぞ」で独り言で文句ば言いよったら、やっと右折でけた。

 そっから昔のまんまで幅の狭か道ば上っていく。1キロちょいで右側に浄水場らしきもんが感じられたバッテン、壁で中は見えん。さらに走ると貯水場の出入り口があった。

 しかし、ゲートは施錠してあって中に入ることは拒否。壁の透き間からのぞき見したら、堰堤の下の浄水場らしき施設は工事中で道路側は目隠しのテントが張り巡らされとる。軍事施設じゃあるめーし、なんで隠さないかんとか、ちょっと引っかかった。

 何とか貯水池の一部分と、入り口正面の「佐世保水道局百周年記念碑」ば、広角と望遠いっぱい使うて撮す。
 反対側に行けばなんかあるかも知れんと思い、いったん春日町の信号まで下り、ひとつ佐世保寄りの信号から入り直す。信号ば左折したらすぐにチンチンチン。松浦鉄道の線路やった、しかも小さな「山の田駅」がある。しかし今回は駅は無視して、また狭か道ば上っていく。

 小さな川があって橋が架かっとる。貯水池の溢流路( いつりゅうろ・階段式に水ば逃がす) か浄水場のあまり水ば流しとる佐世保川やろう。

 川の反対側ばまた少し登っていったら突き当たりに古か門が見えた。前に車ば止めて大きな木の表札ば見たバッテン、古すぎて文字が読めん。なだめすかししてやっと「山の田浄水場」て判読した。

 貯水池は標高100Mのとこにある堤高24.5m・堤頂長310m・流域面積4.5kmで、有効貯水量55.1万トンのアースダムゲナ。

 アースダムいうとは主に土ば使うて台形状に建設されたダムのこと。土堰堤( どえんてい) とも呼ばれるとゲナ。最も古典的な型式で、全国各地に散らばる「ため池」はこの形式で建設されとるとが多か。
 水はどっから引いとるかていえば、標高568mの烏帽子岳北側斜面ば水源にしとる赤木川と田代川。

 明治19年( 1886) に大日本帝国海軍の佐世保鎮守府が置かれることが決定し、流域の発展が始まった。
 さらに日露戦争後の軍備拡張による海軍の飲料水確保ば目的として、山の田水源池の造成が進められ明治41年( 1908) に完成しとる。

 こうして佐世保市の水需要ば支えてきた施設、いまも1日に8,000トンば取水しとる。敷地内にある様々な構造物は明治期、大正期の建物ばっかりで、古典主義の意匠が見られる。て、いうバッテン、中に入られんやったらどうにもならん。

 このほか山の田浄水場内には,木造下見板の水質管理係事務所棟、煉瓦造の濾過井上屋、また浄水場周辺地域では浄水場から200mほど西の導水線上にある煉瓦造の量水井上屋、2か所に設けられた減圧井( いずれも現在は使用されとらん) 、さらに海軍の錨マークが施された排気弁蓋など、ユニークな施設群が今なお存在し続けてとるていう。

 これが探しとった土木遺産の浄水場か。腐った鉄格子の門から見える範囲で撮す。

 うっそうとした中に入って行きたかバッテン、予約でもしとかんと案内はおろか、だまって入りよったら不法侵入に問われそう。

 折角来たのになんかピンとこん。ほったらかしとるくせにガードの堅か土木遺産やった。


右と下・でけて100年経っとる古い山の田浄水場跡。ここもガッチリとガード。

 佐世保市だけじゃのうして、日本の近代上水道システムの発展史が分かる遺産群としての価値もあるっちゃケン、将来の保存も考えて、もっとしっかり整備・公開することば考えな宝の持ち腐れタイ。

 インターネットで山の田の情報ば探しよったら「佐世保市水道局 メタウォーター落札の陰謀!」ていう投稿が見つかった。

 要するに、いま佐世保市が進めとる北部浄水場( 仮称) 統合事業は、水道局の局長が特定の業者( メタウォーター) と癒着して、加圧型無機膜ろ過方式( セラミック膜) ば強引に導入しようとしとる。ていうあばきタイ。

 北部浄水場統合事業いうとは、山の田とすぐ隣の大野浄水場ばいっしょにして、浄水量ば1日あたり50,600m3にして、佐世保市の水事情ば安定させようていうもんタイ。

 設計から建設期間は平成22年10月29日〜平成27年3月31日で、総工費97億円が見込まれとる。

 メタウォーターいうとは、メタウォーター株式会社のこと。東京都に本社ば置く水環境エンジニアリングの会社タイ。

 始めに駅長が工事現場が道路から見えんごと隠されとるとに、おかしかて感じたとは、このあたりが関係しとるとかも知れん。

 いずれにせよ、はじめて経験した、なんかスカッとせん九州土木遺産の取材やった。


 貯水場には入らせんし、浄水場のほうは工事中いうことで回りは幕張り巡らして見せんごとしとる。

 いままであっちこっちの土木遺産ば見てきたバッテン、こげん見られるとば嫌うとる施設は初めて。

上・貯水場のそばに祀られとるとは水神 ?
中・最近でけたごたるゲートが自由な立ち入りば拒否しとる。
下・塀の上から無理して撮った浄水場。この下の方にはがっちり隠した工事現場がある。
これが多分「北部浄水場( 仮称) 統合事業」やろう。

 場所・長崎県佐世保市桜木町7-16。九州自動車道から長崎自動車道ば走り、武雄JCTから西九州自動車道に入る。約25Kmの「大塔」からは佐世保道路になる。7Kmの「佐世保中央」が終点。ここで降り、取付道路ば直進して「松浦町」信号ば左折。これが佐世保の中心ば走っとる国道35号線。あとははじめに書いた通り「春日町」の信号まで我慢して走る。
 以前は西九州自動車道・佐世保道路て別々に現金ば払いよったけど、今はETCがあればスイスイ。
 ただし2014年4月からETCの割引制度が改悪されたケン、日祭しか馬鹿らしゅうて走られん。 取材日 2014.4.11

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