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明治そのまんま、日本でここしかなか石造りの機関庫    「鉄道遺跡」の目次へ
 

 鉄道開通からしばらくたった明治44年(1911)、もう石橋でさえコンクリート橋に取って代わろうてしよった時代に、人吉機関庫は石積みで造られた。
 縦が51m×横が16mの当時としては大きか建造物やった。機関車の出入り口は4mスパンの3連アーチで石橋そっくりやった。加久藤カルデラの凝灰岩が、そこらあたりにいっぱいあったことと、永年石橋で鍛えられた肥後の石工が、おってくれたケン、こげな頑丈な機関庫が作られたとやろう。
 石造の鉄道機関車庫なんて全国的でもめずらしか。しかもまあーだ現役いうとは、この人吉機関車庫だけタイ。

 人吉機関区そのものは、鹿児島線建設に合わせて、明治41年(1908)に開設されとる。42年11月には人吉〜吉松が開通して、鹿児島線が全通する。
注・八代から川内経由の現肥薩おれんじ鉄道(旧国鉄時代の通称"海線")がでけたとは19年後の昭和2年のこと。

 通称「山線」ていわれた初代の鹿児島線は、人吉〜吉松間の矢岳越えば担当しとったケン、機関庫にもはじめから大型タンク3100型が配置されとった。のちにEタンク4110型が12両投入され、最後は山岳用に重装備したD51型がきて機関庫の主(ぬし)になる。大型力士ばっかり抱えた相撲部屋のごと、当時の機関区はさぞかし迫力のあったろう。

 勿論、転車台(ターンテーブル)もあった。これがなからな蒸気機関車は方向転換がでけんケン、大事なもんタイ。

 ディーゼルやら電気機関車にはいらんケン、転車台も過去の遺産となりよるとやが、「さよなら人吉号」運転の時、熊本から人吉まで走ってきた蒸気機関車58654が、ちゃんとひっくり返ってきたケン、 ターンテーブルも残っとったとやろう。

 2010年にはまた「SL人吉号」が甦るげなケン、ターンテーブルはしっかり残しといてもらわないかん。

 最後までおったとは、湯前線用に残った8620型蒸気機関車。SLあそボーイで復活した58654号で、昭和50年まで居ずわって活躍しよった。





上・出入り口の石造りアーチ、いちばん北側のひとつが見える。
下・「SL人吉号」さよなら運転の日、人吉駅からの最後の発車ば見送ったとは、SLば懐かしむ人ばっかりじゃのうて、機関庫も別れば惜しんどった。
最後までここにおった58654は機関庫の横ば通るとき、なんとも悲しげな汽笛ば鳴らして走り去った。

  SL在りし日の 人吉機関庫
 蒸気機関車での運行も終わりに近づいた頃、それでも機関区には"山線"のデゴイチ、"川線"のC57、湯前線の8620がおって賑やかやった。
 今なら大問題やろうバッテン、当時はあんまり公害問題も気にせんで、煙はモクモク出し放題やった。
 昭和48年、熊本区のDD51ディーゼル機関車に後ばゆずって、デゴイチもC57も人吉から去った。
 球磨川沿いば気持ちよう走りよったC57100号機は、いま長崎市の中央公園に保存されとる。
        
撮影は昭和47年(1972)10月10日

    九州の機関区
 若松機関区  明治23年12月 筑豊興業鉄道会社の若松機関庫として
 直方機関区  明治24年 8月  筑豊興業鉄道が直方〜若松間で営業開始すると同時
 後藤寺機関区 明治29年2月  豊州鉄道行橋機関庫の派出所として開設
 行橋機関区  明治28年    豊州鉄道の行橋機関庫として発足
 西唐津機関区 明治37年3月  唐津興業鉄道を九州鉄道が買収(明治35年)後
 香椎機関区  大正3年11月  鳥栖機関庫吉塚分庫として
 佐賀機関区  昭和10年9月  佐賀線の全通に合わせ
 早岐機関区  明治30年7月  九州鉄道の武雄〜早岐間開業時
 佐々機関区  昭和11年10月 早岐区佐々支区から昇格
 鳥栖機関区  明治39年11月 九州鉄道は久留米機関庫を廃し、長崎線の分岐点に
 熊本機関区  明治24年4月  九州鉄道の熊本機関庫として
 人吉機関区  明治41年    42年11月には人吉〜吉松が通じ鹿児島線が全通した
 大分機関庫  大正元年12月  豊州線の大分開業は明治44年
 南延岡機関区 大正12年12月 日豊線全通
 柳ヶ浦機関区 明治45年3月  行橋の分庫 
 豊後森機関区 昭和9年11月  久大線全通にあわせ
 宮崎機関区  大正2年    県営鉄道時代から
 都城機関支区 大正6年    吉松機関区の分庫
 鹿児島機関区 明治34年6月  鹿児島〜国分(→現隼人)間開通に合わせた
 吉松機関区  明治36年9月  鹿児島〜吉松間が開業と同時
 出水機関区  昭和4年5月   海線の鹿児島線が完成すると
 志布志機関区 大正14年    志布志線の開通に合わせて

 場所・熊本県人吉市。九州自動車道ば人吉ICで下り、突き当たって右折、すぐの信号ば左折すると県道54号線。肥薩線の踏切ば渡って1km足らずで国道118号線に出るケン、右折して1kmで人吉駅前の信号ば右折すると駅に突き当たる。駅前ば左折して線路沿いに走ると機関庫が見えてくる。 取材日 2005.07.31/2007.03.25

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