このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

慈恩の滝
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場所・大分県天瀬町・玖珠町

 慈恩の滝は、天瀬町と玖珠町の町境にある。二段滝。

 国道210号線のすぐそばていうこともあって立ち寄る人が多か。

 国道と平行して走っとる久大本線の車窓からでも滝が見える。

 観光特急ゆふいんの森号なんかは、滝ば見せるために、ここでわざわざ徐行運転ばしてくれる。

 慈恩の滝には大蛇伝説がある。

 今からおよそ千数百年の昔、この滝壺に大蛇が住んどった。
 ある年の麦の実る頃、夜中にこの大蛇が滝壺から這い出して麦畑の中でのたうちまわり、田圃の麦ば荒らしてしもうた。

 わずか一夜で近郷の麦畑はほとんど全滅に近か被害ば受けた。そればかりじゃなか。その年の秋の実り田も荒された。

 このため農民はホトホト困り、滝壺に竹網ば張るやら、あるときは加持祈祷もしたとバッテン、その甲斐もなく大蛇に荒らされ続けたていう。

 農民は自分とこで喰うもんもなうなってしもうた。

 先祖から受け継いだ田畑ば捨て、家ば捨てて村から出て行くもんも続出した。

 こげな年の……夏の夕暮れどき、部落ば通りかかった旅僧が、このありさまば聞いて、この大蛇ば静めてやろうて決意した。

 その夜のことタイ。旅僧が滝しぶきのかかるあたりに座って、一心に読経ば続けよったら、やがて滝壺に逆渦巻が起り、波の中から凄まじい形相の大蛇が姿ば現わした。

 これば見た旅僧が大蛇に向かい「そげな浅ましか姿では経ば聞くことも出来めえ。……心ばやわらげてクサ、姿ば変えて出てこんや」てさとした。

 すると大蛇は、ザブンと水中に身ば沈め、こんどは頭だけで水の上に現れた。

 旅僧は大蛇に向い法ば説きながら、「おまやぁ、なし田畑ば荒らすとか」て問いただしたら、大蛇は頭ば胴の方に曲げ、舌の先で体中ば舐め始めた。

 旅僧が大蛇に近づいて、よう見たら、ウロコの間に虫が寄生しとるいうことが分かった。

 旅僧はこの大蛇ばあわれに思うて、その胴体の上ば経文で撫でさすると、大蛇は静かに滝壺の中へ帰っていったていう。

 その後、大蛇は一度も田畑ば荒らすことなく、稲や麦もよう実り、農民は大いに喜びあうたていう。
 
 あとから農民は、この旅僧のために寺ば建立し、慈恩寺て名付け寄進したていうことバッテン、慈恩寺は戦国の争乱で大友宗麟の軍によって焼かれてしまい、今はのうなっとるとゲナ。

 滝の裏に回り込んで裏見ができる。

 万年山から流れてきた水がしぶきばあげとつて、その迫力には圧倒される。

 もちろん夏は天然の冷蔵庫タイ。

 日田市から国道210号線ば天瀬温泉経由で約15km玖珠方面へ東進する。

 久大本線「杉河内」駅ば過ぎればすぐ右手に見えてくる。


 地図はJAFルートマップから転用

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