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萩原朔太郎のゆかり地
「新前橋驛」
野に新しき停車場は建てられたり便所の扉 風にふかれ | ペンキの匂ひ草いきれの中に強しや。 | 烈烈たる日かな | われこの停車場に來りて口の渇きにたへず | いづこに氷を喰(は)まむとして賣る店を見ず | ばうばうたる麥の遠きに連なりながれたり。 | いかなればわれの望めるものはあらざるか | 憂愁の暦は酢え | 心はげしき苦痛にたへずして旅に出でんとす。 | ああこの古びたる鞄をさげてよろめけども | われは瘠犬のごとくして憫れむ人もあらじや。 | いま日は構外の野景に高く | 農夫らの鋤に蒲公英の莖は刈られ倒されたり。 | われひとり寂しき歩廊(ほーむ)の上に立てば | ああはるかなる所よりして | かの海のごとく轟ろき 感情の軋(きし)りつつ來るを知れり。 | 『純情小曲集』(大正14年)収録。 上越南線新前橋停車場 大正拾年六月開業 萩原朔太郎のゆかり地 に戻る
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