このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
血のいろにゆがめる月は 今宵また桜をのぼり | ||||||||
患者たち廊のはづれに 凶事の兆を云へり | ||||||||
木がくれのあやなき闇を 声細くいゆきかへりて | ||||||||
熱植ゑし黒き綿羊 その姿いともあやしき | ||||||||
月しろは鉛糖のごと 柱列の廊をわたれば | ||||||||
コカインの白きかをりを いそがしくよぎる医師あり | ||||||||
しかもあれ春のをとめら なべて且つ耐えほゝゑみて | ||||||||
水銀の目盛を数へ 玲瓏の氷を割きぬ |
学校の志望は捨てん木々のみどり弱きまなこにしみるころかな | ||||
ぼろぼろに赤き咽喉してかなしくもまた病む父といさかふことか | ||||
今日もまたこの青白き沈黙の波にひたりてひとりかやめり | ||||
十秒の碧きひかりの去りたればかなしくわれはまた窓に向く |
学校の図書庫の裏の秋の草 | |
黄なる花咲きし | |
今も名知らず |
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