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私の旅日記
小長井町の海〜「昭和十九年秋」〜
教へ子は古稀となれども | ||||||||||||||||||||||||||||||
先生と呼びて訪ひ来ぬ | ||||||||||||||||||||||||||||||
少年のごと梶谷覚先生 | ||||||||||||||||||||||||||||||
小長井は山も人もよかった | ||||||||||||||||||||||||||||||
句 昭和七年二月二十七日山頭火 | ||||||||||||||||||||||||||||||
こゝに住みたい水をのむ | ||||||||||||||||||||||||||||||
命ながきことの | ||||||||||||||||||||||||||||||
喜び風薫る | ||||||||||||||||||||||||||||||
塚原仁先生 |
昭和十九年秋 | |
木下和郎 作 | |
わたしたちは やたらにわめき走りまくった | |
いっときもしゃべらずにはいられなかった | |
どんなにみごとに命中したか | |
銀の翼がどんなに輝いたか | |
いかに ゆっくり | |
落ちていったか | |
尾根を越え 部落を越えて 走ったのだ | |
みんなの証言は どこか すこしづつ | |
違っていた が | |
だれのことばも だれの言うことも | |
みんな信じられたのだ | |
尾翼だけが海面に突っ立っていた | |
トラックの上には すでに | |
引揚げられた飛行士がころがしてあった | |
どよめく群集に向って 髪の毛をつかみ | |
ぐいとあげられたその顔は 桜色の | |
少年のおもかげをもっていた | |
はじめて鬼畜をみた | |
やすらかな ねむりの姿勢だった | |
その頬に消防団員の平手がとんだ | |
わたしは少年飛行士となるはずだった | |
異郷の地に華と散るはずだった | |
わたしにはわたしのまぶたが | |
ぬれるようにかんじられた |
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