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私の旅日記
佐世保〜「五足の靴」〜
すばらしい人生ではないかもしれない | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
しかし素晴らしい生き方はできる |
明治32年(1899年)、谷郷町に佐世保教会設立。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
昭和6年(1931年)12月、現在地に教会が完成。 |
ランプの明かり、カンテラの | |
灯かげ煙れるせりうりの | |
夜店の中に、一段と | |
聲はりあぐる瀬戸物屋。 | |
「早來い、早來い、品物は | |
みんな廉か。」といそがしく | |
左のふときてのひらを | |
握りこぶしに打叩く | |
「この花いけは有田焼、 | |
買はっせ、買はっせ、そら貮圓。 | |
廉か。」と呼べど、群集は | |
冷然として澆り見る。 | |
「貮圓、壹圓五十錢、 | |
七十五錢、四十錢、 | |
ああ、負けましょ、二十錢。」 | |
赤き襷を汗ばしる。 | |
わが賣る品のあたひをば | |
恥づる色なく、おのれから | |
下げて手を打つ、あはれなる | |
佐世保の街の瀬戸物産。 | |
更にあはれむ。汝が妻は | |
死にか別れし、みそかをと | |
はたや逃げたる。三十の | |
男ざかりのやもめずみ。 | |
後ろを見れば、竹たてて | |
夜露に吊すハンモック | |
眠りてありぬ、青白き | |
五才ばかりの娘の兒。 | |
明治四十年八月五日 | |
与謝野鉄幹 |
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