このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

TOP総覧index隧道index


より大きな地図で 旧樽尾トンネル を表示
国道471号線旧道
旧樽尾トンネル


富山県南砺市
平成24年8月20日 来訪




富山ICを下りて約35km。
ひたすら人気のない山間の『酷道』をひた走り、久々に生活の息吹を感じられる場所に。
現在、南砺市に組み込まれた旧利賀村の百瀬川地域に来ている。

利賀村は百瀬川・利賀川・庄川の三河川の谷に地域が分かれているが、隣の地域に移動するにも険しい山を超えねばならず「何故こんな分断された地域が同じ自治体?(しかも明治期の頃から)」と余所者は考えてしまう程だ。

そんな利賀村のメインストリートが国道471号線。
このR471もなんだか凄いルートを通っていて、砺波市庄川からR156より分岐した後、山べり走りながら利賀村内を巨大なU字を描いて通過している。
そのUの字の底には山地を貫き、百瀬川・利賀川の両流域地域を結ぶ為の『新樽尾トンネル』が存在している。
この画像奥に見える青看板が示す丁字路を右折すると直ぐに新樽尾トンネルが口を開けている。
後に此方をお見せするが、今回のターゲットたる新樽尾トンネルの『旧道』はこの目の前にあるJAガススタ前から分岐する萎びた道。
















丁字路曲がって農家の犬に吠えられながら坂道登ると、拍子抜けするぐらいあっさり旧トンネルが現れる。






















旧樽尾トンネル。
馬蹄型の坑口で鉄道トンネルっぽい雰囲気。
延長約810mと結構な距離を持つが、ほぼ直線ということもあり、一応出口の光が見えている。(点のような小ささだが)
ただし、その出口の形をよく見ると微妙に歪んでいて崩落とかあったら嫌だなぁ、と不安な気持ちがよぎる
しかし、不思議なぐらい「キモイ、行きたくねェ」と言う間隔は無く、「まあ、あるね。」と言う淡々とした印象を受けた。
人里近くの明るい場所にあっさり出てきたモノだから今まで出会った『大物』とは違う感じだ。


















大理石の刻まれた扁額には『樽尾とんねる』とまさかの平仮名表記。
竣工も昭和44年と、100年モノの隧道も多いオブ業界で「つい最近」と言っていい程の新しさだ。
他のサイトで『樽尾隧道』という名で紹介されていることが多いが、銘板に記載されている名称や、完成された時期からもコレを『隧道』と称すのは、なんか違和感を感じてしまう。(まあトンネルだろうが隧道だろうが基本同じモノを指しているのだから、どっちでもいい気もするが)
そんな訳で当サイトでは此処を『トンネル』と言う表記で統一させて頂く。






















坑門左下には施工業者が刻まれた銘板。
上側に刻まれている『株式会社 城岸組』は利賀村密着の土木工事業者。
この樽尾トンネルから300m程北側に本社がある。(本社と言っても一見は木造家屋)
利賀村の歴史と共に歩み、この地の山野を知り尽くした人々が集まる業者であるに違いない。
下の方に刻まれた大富興業株式会社は滑川市の企業で、此方は城岸組より規模がやや大きく富山県下に多数に事業を伸ばしてるようだ

ところで、この銘板の上に鉄線がぽっこりコンクリから飛び出てているが微妙に気になる。
何かに使われていたのか?





























右側には何かが掲げられていたような枠の跡が見受けられる。
一番あり得るのは幅員・車高等の制限標識、もしく注意事項が書かれた看板といった所だろう。





























坑口入ってすぐ横に、かつて封鎖していた時に掲げられていた『通行止』看板と簡易ゲート。
後ろ向きなっている円形の板は間違いなく通行止標識。
まあ、いろいろアレでアレなトンネルなんで自治体的にはあんまり立ち入って欲しくはないだろう。
でもコレ『利賀村』と表記された看板がどかされた所をみると南砺市に合併後にこのトンネルの管理体制に何か変化があったのだろうか?
南砺市は『スキにしろ、但しウチ的には何があっても知らん』と言う方針?

まあ、そんな訳で入らせて頂きますよ。



















入っていきなり目に入るはズタボロになったコンクリ壁と今にも落下しそうな二度と点灯しない照明。
なんかコレ伊勢神隧道思い出すわー。
あっちと違って、天井が高いんで頭ぶつけるような事はまず無いが、やっぱズタボロ照明機器というのは生理的嫌悪を催す。
前言撤回、やっぱキモイはコレ。





















更に上部からケーブルが垂れ下がってきて、頭にぶつかりそうになる。
コレ明かり無しで入ってイキナリこれにぶつかったら泣く自信がある。
こんな状態だから他にも何か異常が発生してくるとも限らないので極低速で慎重に前進。
因みに何故か路面中央に側溝が設置されている。
現在は坑内全てに蓋がしてあるが、かつては溝がむき出しの危険な状態であったようだ



















いつの間にかコンクリ壁から素掘りに。
そして奥には物が置かれているのが見えてきた。
























離合箇所であった広い空間は物置に。
除雪機器(因みに先程の城岸組所有物)やその他資材多数置かれている。
前方のトイレっぽい細長バラック小屋は半壊してちょっと使えなさそう。





















その中でちょっとキュンとしたのが30km標識。
錆が浮いており大分長いあいだ放置されてるみたいだが、それはそれで味が出ててイイ。
小型の持ち運びできるタイプの標識で、このトンネル内に使用されていた物とは考えづらい。
おそらく路肩を大きく使用する工事の際の一時的な制限に使う為の標識だろう。




















坑内上部を見ると『01』もしくは『10』と数字が書かれていた。
数字はこの他の箇所にも書かれていた。
クラックや壁が脆くなった箇所を調べたものか?
基本放置プレイなこのトンネルだが地味に手入れが入っているのも事実。
4月頃にこのトンネルの通過する車載動画には、出入口前後がきちんと除雪されている事が確認できた。
ただ、先程見て頂いた通りこの中に除雪機器があるので『交通』のためではなく『除雪機器の出し入れ』の為に除雪されているだけだろうが。
となるとコレは『交通路の補修』と言うより『保管施設の補修』と言う事か?














離合ポイント終わって一車線に戻るが、素掘りは変わらず。
坑壁は土気地質で表面は比較的なめらか。
脇にはサラサラとした砂が溜まっている。
崩れているような箇所はないが、路面は染み出した地下水によって濡れていて、更に砂と混じり合って泥状となり滑りやすくなっている。
グリップの心もとない足元に注意しつつも、暗闇の向こうの「異変」に驚いて急ブレーキをかけようものなら転倒は免れないだろう。


















しばらくしてコンクリ巻きが復活。
しかし、この中も足元は乾いているとは言い難く泥の幕が路面を覆う。
とにかく『咄嗟』を要する行動を取ることがない様に祈りつつ、恐る恐る進む。





















コンクリ巻きは長くは続くかず、素掘りに戻る。
しかし、地質が変わったのか此処の坑壁はゴツゴツとした岩盤で所々小規模な崩落がある。
内部に入って半分ほど過ぎたが、まだ残り400m近くある訳だ。
出口の光はまだまだ遠い。













続く

総覧へ TOPへ戻る
隧道indexへ
掲示板
1

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください