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鳥羽山洞門
旧国道152号線
静岡県浜松市天竜区
2007・8・22 来訪

国道152号線『鳥羽山隧道』は静岡県の歴史的土木遺産に認定されている。
昭和17年開通の鳥羽山隧道は、
すぐ隣を走る国鉄二俣線(現・天竜浜名湖鉄道)との交差を避ける為に、
天竜川を渡る「鹿嶋橋(昭和12年完成)」を直線に延ばして建設したそうな。

さて、この事から逆説的にこの道が
「橋の先端が曲がっていて、鉄道と交差していた」
時代があったと言うのが分かる。
つまり旧道があると言う事だ。

さて、この旧道にも隧道がある。
が、こちらは歴史土木遺産には認定されていない。
スルーである。

では旧・隧道は歴史的にそんな価値のないショボイ隧道なのであろうか?
確認してみよう。

旧道との分岐点。
この後に天竜川渡る鹿嶋橋が掛かっている。
昭和12年に完成した当初は、この旧道の方に交通の流れが行っていた訳だ。
そして、このすぐ先で交差している鉄道もまだ開通していなかった。(ここの区間が出来るのは昭和15年)
天竜浜名湖線のガードを潜ると高さ2.3m、幅員1.8m標識が現れる。
これが隧道のスペックのようだ。
さて、鳥羽山の旧隧道の姿はいかなるものや?
おお!煉瓦隧道じゃないか!
しかも、かなり状態が良い!

と、言うか実は現地に来る前に写真で見てるんだけどね。

2007年コミックマーケット72(夏コミ)に参加した際、
私のサークルへ来てくださった閲覧者の方が、
この隧道の情報と写真を提供してくださったのだ。

2006年のG.Wの時にこの隧道の近くを通っているのだが、
比較的人口の多い住宅地傍に開通から120年近く経つ、
明治22年製のレア隧道があるとは!
扁額。
だいぶ文字が欠けてしまっている上に、標識が邪魔でかなり読みにくい。
さて、この隧道の名前は『鳥羽山洞門』である。
「隧道」ではなく「洞門」だそうだ。

大辞林によると「洞門」とは
①ほらあなの入り口。また、ほらあなの入り口に作られた門。
②落石・雪崩防止のため、道路に接した擁壁を用いて設けたトンネル状の工作物。
との事である。
基本的に土木建造物に『洞門』という名称が使われるのは②の場合が多い。
「鳥羽山洞門」の場合は①が当てはまりそうだが、
何故、ここには隧道ではなく洞門と言う名称が使われたのか気になる所だ。
隧道前の切り通しの側壁には多数のノミで削ったあとが残る。
工作機械など殆ど無く手作業が全てだった時代を物語る痕跡だ。
内部は途中で素彫りになったりせず、オール煉瓦巻である。
多少幅員を犠牲にし、北行き一方通行の代わりに狭いながら歩道スペースもある。
完成から120年経ち、今だ実用的な道である事は中々すごい事である。
煉瓦古隧道と言うと、心霊スポットにされがちだが、この鳥羽山洞門も例外ではないようだ。
が、人の目が多い事もあるが落書きやイタズラ等も無く至って内部は綺麗である。
精々、近隣の中高生が肝試しコースに使ってキャーキャー言うぐらいであろう。
それだけでも十分近所の人には迷惑だろうが。
北側坑口。
両坑口ともは出口付近は補強版に覆われている。
南側の扁額は更に劣化が激しく、最早文字の判読が出来なくなっている。

ちなみに、この隧道の上にはかつて徳川家康が築いた鳥羽山城があった。
武田軍が支配する川向いの二俣城攻略の為に築いた城で、武田との攻防戦が終結した後は庭園等も造られ地域支配に一役買っていたそうだ。
戦国の時代が終わり、長い太平の世となる江戸時代が訪れると鳥羽山城は廃城となり放置されていたが、現在は庭園跡を復活させ鳥羽山公園として市民の憩いの場となっている。
隧道周辺は非常に閑静な住宅地。
こんな所で写真を撮っている自分は軽く不審人物である。
地域住人の冷ややかな目を感じる。
藪に覆われた廃隧道へアタックするのもシンドイが、こういうのも結構ツライッス。
途中、鉄道によって道が分断されている。
かつては踏切があったのであろうか?
ただ、旧・国鉄二俣線が開通した時には現道は完成していた訳で、以前からこのような状態という気もする。
線路に沿って100m程進むと鳥羽山より下りてきた道と合流、その道で踏み切りを渡る。
踏み切りを渡ってすぐにこの丁字路。
左折すると鳥羽山隧道の坑口から出てきた現道にぶつかり、右折すると二俣本町駅前へ。

さて、明治時代の職人達によって造られた鳥羽山洞門。
開通して長い月日が経ちながら現地の人々の役に立っているこの隧道は立派ぢゃありませんか。

静岡県土木部の皆さん、こっちも土木遺産に認定させてあげてください。


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