このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

ナハフ11形 3等座席車

     ナハフ11 9 特別急行(かもめ) 京都 昭和33年8月 奥野利夫氏撮影



ナハフ11 6 東シナ

敗戦後の旅客需要の伸びは大きく、ダイヤ改正ごとに特別急行や普通急行の新設が行われました。しかし我が国の鉄道は勾配線区を多くもち、従来のス級客車(自重33,5屯)では機関車の牽引定数の関係で、これ以上の増結は行えない状況にありました。そこで考え出されたのが客車の自重を軽くした軽量客車の開発です。
国鉄では「車両の軽量化」の研究が昭和28年から行われて、その結果昭和30年に登場したのがナハ10形客車です。
ナハ10は従来の客車に比べ、車体鋼板を薄くし、床下器械に軽合金を多用し、台車もプレス組立を採用した軽量新設計のTR50が装着され、自重は23屯とスハ43形に比べ、3割も軽くすることができました。
外観もスイス国鉄の車両と間違えるほどの、上下に大きく隅が丸みを帯びた窓枠が採用されました。シルとヘッダーをなくしたスマートな車体は遠くから見てもよく目立ちます。
このナハ10の改良量産型として昭和32年より登場したのがナハ11形です。ナハ11の基本設計はナハ10と変わりありませんが、出入り口扉を改良し、照明の蛍光灯化がはかられたために別形式となりました。ナハ10の緩急車仕様がナハフ11形です。ナハフ11形も昭和32年に登場し、現在も量産が行われています。


ナハフ11平面図


★最新型の3等座席車です。特別急行列車・普通急行列車の3等座席車に組み込まれ、オハ35やスハ43の変わる3等車としてナハ10形とともに全国で活躍しています。

★京都〜博多間特別急行(かもめ)の最後尾に連結されていることは有名ですが、この9月まで、東京〜博多間特別急行(あさかぜ)に連結されていたほか、東京〜長崎間特別急行(平和 さちかぜを改称)、10月に登場したばかりの東京〜鹿児島間(はやぶさ)など第一線で活躍中です。なお(平和)(はやぶさ)は共通運用になっています。
(平和)(はやぶさ)の編成表はこちらからどうぞ。

★普通急行でも東京〜佐世保間(西海)東京〜鹿児島間(日豊本線経由 高千穂)などで使用され軽量客車の乗り心地が普通急行でも楽しむことができます。


★冷房装置の設置はなく、扇風機が4機設置されています。

★窓の寸法は横1080㍉は従来の客車と大差ありませんが、高さは800ミリと天地方向に大きくなり、軽合金の窓枠のおかげで、窓の開閉が簡単にでき、夏の旅行も快適に過ごすことができます。




★車内を見てみましょう。まず特筆すべきは3等車でありながら蛍光灯が採用されたことです。マロネ40形式から採用が始まった蛍光灯は、最初故障が多く点灯不能になる事態も多く起こりましたが、その後改良され、ついには3等車にまで採用になったわけです。今後生産される国鉄車両はすべて消費電力の少ない蛍光灯が取り付けられることになりました。

★ナハフ11では、蛍光灯が天井左右に2列づつ取り付けられ、夜間でも大変明るい車内になっています。

★さらに内装には化粧板が使用され、今までの木目を生かしたニス塗りから一新しました。化粧板は淡緑色で天井のクリーム色と相まって、車内を明るくする一つになっています。この化粧板は銀色に輝く軽合金の金具で取り付けられています。車内引き戸も銀色の軽合金製です。このように車内の景観は近代的なビルの事務所のような趣を感じさせるものになっています。

★座席はスハ43形と同じような、向かい合わせの固定座席が採用されています。座席のピッチも1470㍉で3等車標準仕様になっています。ひじ掛けの素材は合成樹脂が使われ、ここにも軽量化の工夫がなされています。
★結核の蔓延を予防する見地からタンツボが床にはめ込まれています。




★トイレと洗面所は座席車の標準仕様である車端部にそれぞれ一ヶ所ずつ設置された形です。トイレは和式です。なお内装は客室と同じように化粧板が貼られ、清潔感が高まりました。

★10系客車から出入台の外にトイレと洗面所を設置するようにしました。この結果車端部の座席からトイレの位置を離すことができ、臭気が客室に漂うこともなくなりました。



▲従来の3等標準車スハ43形では、座席のすぐ横が便所になっていましたが、ナハ10系から、デッキを隔てて便所を設置する形に設計変更しました。客室の窓を開けていても、便所の臭気が客室に入り込みにくくなりました。
台車は新設計のTR50です。従来の台車に比べ軸距離を短くしバネの改良を施したため、軽量でも安定した乗り心地が得られます。

▲昭和31年11月の東海道線電化完成で電化区間が延伸し、煙害が少なくなったため屋根は銀色で塗装されています。

▲出入り口の扉は新設計の2段窓です。この窓は下段は固定ですが、上段は下に開けることができます。
この結果デッキの立ち客にも涼風が入るようになりました。

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