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ナハネ10形 3等寝台車

          ナハネ10 4(寝台側) 大ミハソ 大阪 昭和31年3月 奥野利夫氏撮影

          ナハネ10 2(通路側) 大ミハソ 大阪 昭和31年3月 奥野利夫氏撮影


ナハネ10 65 東シナ 寝台側
ナハネ10 65 東シナ 通路側

昭和30年に試作されたナハ10形と同じ軽量構造を採用して、昭和31年に110両が製造(うち10両は北海道向け)されたのがナハネ10形3等寝台車です。軽量構造を持つ客車としては初の量産形式です。
車体はナハ10形同様、シルやヘッダーがなく、四隅を丸くとり天地方向に拡大した窓まわりは、今までの客車にない斬新でスマートなものになりました。
さらに車体幅を従来の2800㍉から車両限界いっぱいの2900㍉とし、ホームとの接触を避けるため裾を絞り込んだ従来の客車にはない形状をしています。
車体幅を車両限界いっぱいまでとり裾を絞る設計は、今年(昭和33年)に登場したモハ20系(こだま)形電車や(あさかぜ)の20系固定編成客車に引き継がれました。
車体色は従来の客車同様ぶどう色1号ですが、光沢のある塗料を使い、屋根の銀色と相まってホームの照明に光り輝いています。


ナハネ10 平面図



★昭和31年ナハネ10形の製造により、敗戦後初の3等寝台車復活となりました。すぐに全国各地の夜行の普通急行列車に組み込まれ、同年11月からは、新設の特別急行(あさかぜ)にも連結されるようになりました。
それまで寝台車は2等客対象に限られていましたから、C2等寝台より安い料金で寝台車が利用できるとあって、3等寝台車は連日寝台券は売り切れ満席!!の盛況となっています。
3等寝台料金は、上段720円、中段840円、下段960円です。
ちなみにC2等寝台料金は、上段が1200円、下段が1560円となっています。

★昭和32年より、ナハネ11形(ナハネ10の設備を改良した増備車)の登場により、夜行の普通急行列車には1両〜数両のナハネ10あるいはナハネ11の3等寝台車が連結されています。
ナハネ10が組み込まれた東京〜博多間普通急行(筑紫)の編成はこちらからどうぞ。


★上り普通急行(霧島)に組み込まれたナハネ10 60 東シナです。
左に見える2等寝台車が1号車のマロネ38、そして2号車が1両だけ組み込まれた3等寝台車のナハネ10,3号車特ロスロ51、4号車並ロオロ35と続きます。
山陽路を夜行運転して、朝京都に着いたところです。これから昼の東海道を東京へとめざします。
昭和33年8月 奥野利夫氏撮影


★内装を見てみましょう。軽量構造のため銀色に輝く軽合金が引き戸や暖房カバー、窓枠などに使われ、うす緑色の化粧板とともに明るい車内となっています。

★寝台は戦前のスハネ31形3等寝台車と同じく、枕木方向に上中下3段の寝台が向かい合わせに並べられ、片側廊下式になっています。
車体幅を車両限界いっぱいにとったため、寝台長を1900㍉確保した上で、通路幅も755㍉を確保することができました。

★寝台幅は520㍉で2等寝台車スロネ30形の600㍉より狭いものの、各寝台ごとに枕灯がつき、各段ごとに包み込むタイプのカーテンが取り付けられ、戦前の3等寝台車より改良されたものになっています。

★昼間は写真のように、寝台仕切を上に跳ね上げて車内の見通しがきくようになっています。中段寝台は下に下げて背もたれとします。上段寝台は固定式です。
昭和31年3月 大阪駅にて 奥野利夫氏撮影




★新設計のファンデリアが各寝台区画に1基ずつ取り付けられています。ファンデリアは天井に埋め込まれた扇風機ですが、普通の扇風機と違い二枚羽根構造になっていて、上中下各段に涼風が行き渡るように工夫されています。上段利用客の空間を確保するために、ファンデリアは屋根から上に出る形で格納されています。

★寝台側の窓は向かい合わせの下段それぞれに上に開けることができます。通路側の窓はバランサー付の下降窓で、走行中上から涼風を車内に入れることができます。




★便所と洗面所は車端にそれぞれ2箇所設けられています。便所の引き戸も軽合金製の軽いものです。洗面所の窓は従来の客車より大型になり、朝日が射し込むようになっています。床下には大型の水タンクが備えられ、欠水が起きないように配慮されています。


▲塗色は従来と同じぶどう色1号ですが、屋根は目が覚めるような銀色で塗装され、遠くからでも目立つ客車となりました。
昭和31年3月 大阪駅にて 奥野利夫氏撮影

▲ナハネ10の屋根上です。屋根から飛び出したおわん形のところに、ファンデリアが取り付けられています。銀色の塗色と共に屋根の部分にも特色があらわれています。

▲出入口扉にも軽合金が使われています。
開き戸ではなく折戸式になっています。
▲洗面所の窓も従来の車両に比べ大型になりました。
旅の朝日を浴びて明るい気持ちで洗面ができます。
昭和31年3月 大阪駅にて 奥野利夫氏撮影

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